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13.僕の仕事はバエルの隣に座ること

 お仕事をするバエルが、僕を抱っこして連れて行ったのは別のお部屋だった。他の悪魔も来るから、怖かったら机の下に隠れててもいいぞ、って。殴ったり蹴ったりしない人は平気だよ。


 バエルが僕に綺麗な絵本をくれた。たくさんの紙を読むバエルの邪魔にならないよう、お膝じゃなくて隣に座る。横に長い椅子は初めて見たよ。この椅子だと、バエルが隣に座れるの。


 アガレスが用意してくれた。すごく力持ちで、ひょいっと持ち上げる。強い狼は力持ちなんだ。そう呟いたら、頭を撫でてくれた。あんなに力持ちなのに、その手は優しい。アガレスも近くの別の机で書いたり読んだりしてる。あまり大きな音を立てたら邪魔だから、僕は静かに本をめくった。


 文字は読めない。大きな文字がいくつかあって、その下に絵が描いてあった。手でなぞっても色が付かないの。黒い空から光る黄色いのが降りてくる絵で、1枚めくると黄色い髪の綺麗な人が星の棒を振ってる。周りがきらきら輝いていた。


 ぱっと顔を上げる。黒い髪だけど、バエルもきらきらしてた。安心してまた絵本をめくる。いろんな色が使われた絵本は楽しくて、また最初からめくり始めた。綺麗だね、すごいな。こんな絵本に僕が触っていいのかな。大切に見て、綺麗なまま返さなきゃ。


「その本はカリスの物だ」


「僕の?」


「そうだ。カリスのために用意した。文字も教えるから覚えような」


「うん!」


 文字を覚えると褒めてくれるかな。この綺麗な絵本も、僕が持ってていいんだよね。こんな素敵なもの、初めてもらった。アガレスがちらりとバエルを見る。もしかしてお仕事の手が止まったから? 僕は邪魔したのかも。


「邪魔じゃない。アガレス、休憩だ」


「かしこまりました」


 アガレスは嫌な顔をしないで、お茶とお菓子を持って来た。僕の前にも置いてくれる。いいの? 僕、お仕事してないのに。


「俺の隣にいるのがカリスの仕事だから、一緒に休憩だ」


 一緒! 僕、一緒は大好きだよ。だってバエルが一緒にいる。笑ったバエルが僕をお膝に乗せてくれた。休憩中はお膝の上でもいいみたい。


 このお仕事が終わったら、僕の髪の毛を切ってもらうの。下の方がざらざらするから、そこを落とすんだって。髪の毛を切るのは痛くないと聞いたけど、僕が知ってるのは痛い。引っ張られると、ぷちんと音がして痛かった。バエルはそう聞いたら悲しそうな顔をしたから、僕はもう言わない。僕が痛いのは我慢するけど、バエルが痛いのは嫌だから。


「ほら、あーんだ」


 あーんは食べる合図で口を開ける。焼き菓子を半分にして先に食べたバエルが、残りを僕の口に入れた。さくっと音がして甘い。飴より甘くないけど、すごく色んな味がした。これ、うまい!


「うまい」


「良かったな。こっちは味が違うぞ」


 また半分にして僕と一緒に食べる。ずっと一緒の約束だもん。向かいでアガレスが変な顔をしてたけど、お腹痛いのかな? 心配だよね。

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