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【完結】虐待された幼子は魔皇帝の契約者となり溺愛される  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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135.鎖は冷たくて痛いから嫌い

 犬の飼い方の分厚い本を広げる。半分以上は文字で、難しいことが書いてあった。真剣に読んだけど、ほとんど意味が分からない。知らない言葉を繰り返していると、パパが横から覗き込んだ。


「パパはだめ」


「もう仕事は終わったから、アガレスも叱らないぞ」


 それならいいの。閉じた本をもう一度広げる。さっき僕が首を傾げたら、パパが僕のお手伝いをしようとして叱られたんだ。急ぎのお仕事があるなら、僕は後でいいのに。パパが僕のせいで叱られるのは嫌だもん。


「さて、どこまで読んだ?」


 いっぱい読んだと褒めながら、パパは太い文字の部分を指差した。ここは分かるよ。


「毎日外をお散歩する」


 お散歩って、僕が歩くときのお散歩? 頷くパパが細かい文字を説明してくれる。犬はお外が大好きだから、毎日決まった道を同じように歩くといい。それなら朝がいいのかな。


「そうだな、朝なら時間が取れるから一緒に行こう」


「うん」


「明日からいつもより早く起きるぞ」


「僕できる!」


 ちょっとだけ早く起きて、パパと手を繋いでベロと……あれ? この絵が変だよ。犬に鎖つけてる! こんな酷いことするの? 鎖は冷たくて痛くて、じゃらじゃらしてる。僕は鎖とかつけるの嫌い。悲しい気分になった。


「ふむ……紐をつける場合もあるが、ベロはまだ仔犬だからそのままで構わん」


「いいの?」


「その代わり約束だ。ベロが誰かを噛んだり吠えて騒いだら、首輪をすること。いいな?」


 首輪は犬に付ける道具だった。これは僕も付けたことある。引っ張られると首が苦しくなるけど、他の人を噛まなければいいんだよね? 見上げるとパパが頷いた。だから僕は嫌だけど……ベロを信じる。


 ちゃんと説明して、いけないよと教えたら、ベロは悪いことしないと思う。誰かを噛んだら、相手の人は痛いし。それが僕に優しくしてくれる人だったら悲しい。


 きゃん! 足元でくるくる回るベロを抱っこするために、椅子から降りた。手を伸ばすと舐めて頬擦りする。大丈夫だよね? ベロは人を噛んだりしないよ。


「いいよ、僕がベロに教える」


「いい子だ。これは犬を飼うときのルールだ」


 他にも教えてもらった。犬との間に主従関係を築くことや、躾をすること。躾は痛くて怖いと言ったら、優しく教える躾もあるみたい。僕は優しく教えたいな。主従関係も、ママと子どもだよってベロがわかって、僕の言うことを聞けばいいの。


「ベロは僕の子どもだよ。だから僕の話をちゃんと聞いてね。人を噛んだらいけないよ」


 きゃん、わんっ! 勢いよく返事をするベロは賢そう。僕の言ってる言葉が分かるみたい。すると隣で見ていたパパが、僕を抱っこして椅子に座らせた。膝の上でお座りしてるベロを見ながら笑う。


「確かに言葉が通じてるような反応だな」


 うー、わん! 返事がさっきと違う。書類を整理していたアガレスやマルバスも、不思議そうな顔でこちらを見ていた。


「この犬、まさか……」


「いや、そんなはずないですよ」


「分からんぞ」


 不安そうな二人に、パパはにやりと笑った。ベロのこと、何か知ってるなら僕も知りたいな。

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