133.甘くて優しくてふわふわで
絵の続きで、光る粉をつけてきらきらさせる。髪の毛や羽のところだよ。それから絵を乾かしてる間に、お部屋を移動した。
パパのお仕事が終わるまで、ベロと遊ぶことにする。見える場所にいなさいと言われて、お部屋の端っこでベロとボールで遊んだ。僕が転がしたらベロが取りに行って、持って帰るの。何度繰り返しても楽しい。ベロも尻尾をいっぱいに振って走り回った。
休憩しながら振り返った。パパとアガレスはまだ仕事してる。マルバスが犬のおやつをくれた。乾燥したお肉で、僕は食べちゃダメなの。ベロが食べてる間、僕は飴を舐めた。
初めてパパに貰った飴を思い出す。痛いガラスみたいなのに、綺麗で色がついてて甘い。口の中が幸せになった。あの時の幸せは今も続いてて、僕はベロにそれを分けてあげたいの。
アモンが書類を届けに来て僕を撫でた。笑顔で僕も手を伸ばす。アモンの手は傷があるから、ポーチに入れたお薬を塗った。ありがとってお礼を言われる。感謝して帰るアモンに手を振って……ん?
「ベロっ! そっちじゃないよ、おいで」
アモンの後ろを着いてっちゃった。慌てて呼んだら、尻尾を振って走ってくる。抱き止めて寝転がった。びっくりだった。誰かに着いてっちゃうこともあるんだね。目を離さないようにしよう。
「ベロのママは僕だからね」
きゃん! わかったと鳴いてるけど、本当かな? 抱っこして寝転がると温かい。ごろんと転がったら、楽しくなってきた。右や左へ転がって、疲れたら止まる。ベロは僕の顔の横で大きな欠伸をした。釣られて僕も欠伸する。
僕が丸くなったら、胸の前でベロも丸くなった。毛皮に手を置くと温かくて、柔らかくて。そのまま、ゆっくり深呼吸した。少ししたらふわっと浮いて、目を開けたらパパに抱っこされてた。
「パパ、ベロは?」
「胸に乗ってるぞ」
ベロが乗った僕を、パパが抱っこしたの? 背中はパパの腕で、胸はベロ。どっちも温かくて嬉しい。
「少し昼寝をするといい」
頷いたのかも。返事をしたか分からないけど、ソファの上に下ろされた。うとうとしながら、ベロを撫でる。
「やはり大人の中で子どもが一人は可哀想だな。遊ぶ相手もいない」
「楽しそうでしたね。母親というより兄弟のようでした」
微笑ましいと笑うのは、アガレス? なんだか僕、夢見てるのかな。声は聞こえてるけど、寝てるみたい。ふわふわする。
「学校は無理だが、遊び相手を探そう」
「プルソンに年の近い孫がいた気がします」
何か相談してるの? ベロが僕の顔を舐めてきた。擽ったくて顔を背けたら、追いかけてくる。ふふっ、鼻を舐めたらダメだよ。押し退けながら笑ったら目が覚めた。
「擽ったい、ベロ」
きゃんきゃん! 大騒ぎするベロは元気で、僕の顔を全部舐めた。耳まで舐めるんだよ? 汚れちゃったけど、ベロが僕を好きなのは伝わった。だから僕も抱っこして舐めたんだけど……口が毛でチクチクしちゃう。パパに貰ったお茶で口を濯いだけど、僕は次から舐める以外の方法で大好きって伝えるね。