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113.大人の事情があるんだって

 お風呂はお魚に譲ったから、僕とパパはアガレスの部屋に向かった。お風呂を借りるんだよ。ひよこの玩具とタオルが入った籠を持って、僕はパパと手を繋いで歩いた。


「アガレス、いるか?」


「……どう、なさったんですか?」


「前触れもなく、すまない」


 僕が大切に抱えた籠のひよこを見ながら、アガレスがぎこちなく尋ねる。パパが説明している間に、部屋の中を覗いた。あ、窓から誰か出ていく。テラスから落ちちゃうよ。僕も前に落ちそうになったから分かるけど、怖いし疲れるから早く助けないと。赤い人が危ないよ。


「……私にもプライベートが」


「わかってる、すまん」


 二人のお話はまだ終わらなかった。パパの手を解いて走り出す。籠は部屋の中に置いて、止めようとするアガレスの腕をくぐった。間に合わなくなっちゃう。


「カリス!」


 慌てたパパの声がして、一緒にテラスに出た。あれ? 誰もいない。手すりを確認するけど、誰もぶら下がってないね。下を覗き込んだ僕の襟をパパが掴んで、お腹に手を回して抱っこされた。


「覗き込むと落ちるぞ」


「うん……あのね、誰かいたの。落ちちゃったかも」


「下にいないからケガはしてないだろう。さあ、行こう」


「ええ、お風呂でしたね。どうぞお使いください」


 僕を抱っこしたパパを押すみたいにして、アガレスは扉を閉めちゃった。変なの。首を傾げながら、羊の着ぐるみを脱いだ。これは一番最初にアモンに貰った服だよ。


 お洋服とセットの狼の縫いぐるみは、お部屋でお留守番を頼んだ。ひよこがいるから両方は無理なの。狼の方が大きくてお兄ちゃんだから、置いてきたんだよ。ひよこを持って入ったお風呂は、まだ湯気があった。温かいね。


「あ、ああ。温めておいてくれたのかも知れないぞ」


「アガレスは凄いね」


 なんでも知ってるのかな。僕とパパがお風呂を借りに来ることも知ってたなんて。驚いちゃう。


 お風呂にお湯を溜める間に、僕とパパは体を洗った。お座りして背中を洗ってもらう時、落ちていた髪の毛に気づく。アガレスは黒いのに、どうして緑色の毛が落ちてるんだろ。拾って眺めた僕の手を、パパが洗い流した。一緒に髪の毛も流れていく。


「こっちにおいで」


 抱っこして湯船に浸かり、僕はきょろきょろと周りを見回した。パパの部屋のお風呂より狭いけど、いっぱい石鹸の種類がある! 顔を近づけたら、果物の匂いがした。あと甘い香りも……これ、アモンの匂いだ。


「カリス、その……まあ、なんだ。大人には色々あるんだ」


 大人にだけ起きるの? 何だろう。アガレスの部屋でアモンがお風呂に入る――あ、わかった!


「アモンの部屋のお風呂にもお魚がいるの!? 見たい!!」


「……魚、じゃないと思うが明日聞いておく」


 パパ、なんで僕の顔を見ないで答えるの? 今日はみんな変だね。テラスから落ちた人、何もないといいけど。アモンがお魚飼ってるなら、僕にも見せて欲しいな。何色のお魚だろう。

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