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112.ミカエルからお魚をもらったよ

 お魚を入れるのは何日も後になると聞いた。まずはお水を入れて、外に漏れないか確認する。漏れてたら直さないといけないよ。全部終わったら、今度は魚用の草と土を入れるんだ。餌になる物がないと死んじゃうと言われて、僕も頷いた。


 僕は今ご飯を食べてるけど、昔も餌がなかったら死んでた。美味しくないし痛かった餌は、それでも僕がパパに会うまで必要だったんだね。プルソンとお勉強した中に「世の中に無駄なものはない」という考え方があったの。僕は好きだよ。


 お前なんか嫌いと言ってたけど、奥様がいなければ僕は死んでた。それは分かる。どうして育てたのか知らないけど、僕は奥様に感謝してる。パパやアガレス達と出会うまで生きてられたんだもん。


「本当に天使そのものの考え方だよな」


 突然聞こえた声に振り返ると、パパが嫌そうに眉を寄せた。顔に皺が出来ちゃったよ? 撫でる僕の前に、白い翼を見せる天使が立ってる。ミカエルだ。でももう一人いて、ガブリエルじゃなかった。誰、この人。


「ウリエルだ。心を読む能力があるから、聞かれたくない時は「ダメ」と強く願ってくれ」


 ウリエル。新しい天使で、ミカエルのお友達みたい。どうしても僕に会いたいと言って、無理やり付いてきたんだって。もしかしてお友達になりたいのかな?


「お友達……そうだな、友達になりたい」


「図々しい奴め」


 ミカエルが文句言ってるけど、仲悪くないみたい。


「好き勝手騒ぐな。ここは俺の領地だぞ。さっさと去れ」


 むっとした顔でパパが注意するけど、二人は気にしない。顔を見合わせてから首を傾げた。


「しょうがないだろ、天使はどこでも入れるし」


「そうそう。僕は君達が魚を飼うというから、これを届けに来たんだ。もっと歓迎してくれ」


 ミカエルが取り出したのは、お水の塊だった。丸い大きなお水の中に、知らないお魚が泳いでる。きらきらして色が虹色なの。


「僕とパパにくれるの?」


「ああ、君にあげるよ」


 やっぱり天使は僕の名前を呼ばない。悪い人に僕が意地悪されないように、だっけ? 僕はミカエル達を呼んでも平気なのかな。


「この子……心を全く閉ざさないんだけど、逆に心配だな」


「俺と契約で繋がっているから、それが日常なのだ」


 パパが説明する。そう、僕とパパは仲良しで一緒にいる約束をしたから、僕の気持ちがパパに伝わるんだよ。凄いでしょ。


「僕はパパが大好きだから、いいの」


 全部聞こえてもいいの。悪いことはパパがダメだと教えてくれる。何も怖いことなんてないよ。胸を張る僕に、ミカエルがふふっと笑った。天使の人は顔が黒く見えるけど、ミカエルとガブリエルとウリエルは、ちゃんと人の顔だった。綺麗な顔だよ。


「そっか、ありがとうな」


 ウリエルが僕の髪をくしゃっと撫でる。パパが文句を言ってる横で、僕は虹色の魚に夢中だった。初めて見たよ、綺麗だね。


「こんにちは、僕と仲良くしてね」


 お水のボールに触れると、ぽよんと揺れた。お魚が寄ってきて、僕の手を突くみたいに顔を向ける。


「ひとまず……風呂場だな」


 お魚の池がまだ完成してないから、もらった虹色の魚はお風呂に入れてもらった。泳いでる姿を上から覗いて、ミカエルにお礼を言う。


「ありがとう、ミカエル。嬉しい!」


「喜んでくれてよかった。あ、そうだった! 近々、ガブリエルも来るからよろしく」


「来るな!!」


 パパが怒鳴ると、天使二人は首をすくめて消えちゃった。パパはあの二人が嫌いなの? 僕はお魚くれたから好きだけど。

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