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108.心眼が映すもの

 僕の首飾りは、マルバスが作ったやつで透明の丸い球が付いている。鳥の爪みたいなのが掴んでる形で、そこに今日はアガレスやパパのお守りも足すことになった。


 僕が何度も連れて行かれたから。パパは心配で僕を閉じ込めたいんだって。僕はパパと一緒なら平気だけど、プルソン達が止めたの。その辺の事情は大人のお話だから、僕は絵を描いて聞かないフリをした。


 黒い絵を描くとパパが悲しそうになる。出来るだけ明るい色の絵を描こう。今日はまずパパを描いた。抱っこされた僕を塗って、後ろにマルバスやアガレスを足して、手が止まる。知らない人がいた。怖い顔でパパに後ろから何かしようとして……。


 銀の長い棒は剣で、あれは手が切れる痛いやつ。パパに何をするの? やめて!! ぐしゃぐしゃに絵を丸めて放り投げた。涙が溢れて止まらない。伸ばされた手はパパで、しっかり掴んで抱き着いた。怖くてパパの後ろを確かめたら、アガレスがいた。だから言葉にして伝える。


「パパを助けて! 後ろから誰か来るの」


「っ……わかりました。もちろん守りますよ。カリス様も陛下も、私やアモンが守りますから」


「あっ、僕だって守ります!」


 アガレスの言葉にほっとしたら、慌ててマルバスが付け足した。


「あなたは戦えないでしょう」


 むっとした顔で言い返され、マルバスが唇を尖らせる。何か反論してたけど、僕はパパの胸に顔を埋めた。パパの匂いだ。大丈夫、僕とパパは一緒なんだから。


「カリスは何かを察知したと思うか?」


「ええ。心眼は時に予知に近い光景を視ると聞きますから。おそらく陛下が襲われる未来を視てしまったのでしょう」


 うとうとする僕の髪を、アガレスが撫でる。この獣の手はアガレスだった。安心して力を抜くと、パパの温かさを強く感じる。気持ちいい。


「高い能力も考えものなんですね」


「心眼は、心を病む原因になります。不安はすべて陛下に察していただいて、起きる前に対処するのが最善ですよ」


「わかっている」


 パパのキスが僕の銀髪のてっぺんに触れて、嬉しくて顔が緩んだ。パパ、大好き。パパを傷つける人は、僕、許さないから。僕もパパを守れるよ。


「いい子だ、安心して眠っていいぞ。俺は強いからな、負けない」


 約束だよ? パパが負けたら、僕は一人になっちゃう。そんなの嫌だからね。ぎゅっと掴んだ服を引っ張る僕の指に、パパの手が触れた。温かい……パパはいつも僕より温かくて、優しくて、綺麗。


 綺麗なパパを誰も傷つけませんように。代わりに僕が痛いのを引き受けます。泣くのも我慢します。だからパパを傷つけないで……大切なパパなの。

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