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105.可愛い悪魔に天使の祝福を

 迷いながら考えを言葉にしていく。


「いきなり嫌いって言って、ごめんなさい」


 二人は首を横に振るけど、あの時の顔は悲しそうだった。僕が傷つけたんだよ。あの時の僕は悪い子で、謝っても気分悪いかもしれないけど。


「君は天使に意地悪されたばかりだろう? 怖い思いをしたんだから、当然のことだよ」


「僕達は君が好きだけど、君が僕達を好きになる義務はないんだ」


 義務はよく分からない。でも僕を好きになってくれる人はいい人だと思う。あと、君って呼ばれるの変な感じ。僕には名前がある。


「僕はカリスって名前があるの。君じゃないよ」


「あ、ああ。名乗ってなかったね。僕はミカエル」


「ガブリエルだ。僕達が名を呼ぶと意地悪な天使にバレちゃうから、君で我慢して」


 意地悪な天使が来ちゃうの? 僕の名前は意地悪な天使が好きな名前なのかな。うーんと首を傾けた僕の髪をくしゃりと撫でて、パパが分かりやすく説明した。


「カリスは可愛いから、皆が一緒にいたいんだ。でも俺と一緒にいる約束をしただろう? だから居場所が分かると、攫いに来る。あの天使もそうだったんだ」


「痛いことしたのに?」


「逃げられるのが嫌なんだろう」


 変なの。仲良くしたいならそう言ってくれたらいいのに。痛いことしないで、僕を撫でたり遊ぶ人は好きだよ。いろいろ教えてくれる人も好き。意地悪しなければいいのに。


「そうだな、カリスみたいに考えられる人ばかりなら、天使も人間も悪魔も優しく生きられるんだが」


 難しいお話なのかな。パパは少し困った顔をしていた。目の前にいる天使のミカエルとガブリエルは、僕に意地悪しないんだよね。


「お友達に、なる?」


「「いいの?」」


 嬉しそうだ。この二人は僕に痛いことや、鎖で繋いだりしない。きっと優しい天使と、意地悪な天使がいるのかも。


「僕達の名前を呼んでみて」


 パパを振り返ると頷くから平気みたい。


「ミカエルとガブリエル。仲良くしてね」


「もちろん!」


「本当に可愛いね」


 しゃがんだ二人は僕と同じ高さで目を合わせて、手を下から差し出した。その手を右と左で握ると、嬉しそうに顔を寄せる。ちゅっと音がした。


「お前ら、何を!」


 パパが慌てて僕の脇に手を入れて抱っこしたけど、両手はきらきらと光ってた。びくりする。すごい、光ってるよ? パパに見えるように持ち上げた僕は、手の甲に浮かぶ模様に気付いた。


「この模様、なぁに?」


「「見えるの!?」」


「心眼の持ち主だ。契約印がある悪魔に、天使が祝福を与えるのはおかしいだろ」


 パパが天使二人に文句を言う。白い翼をばさばさ揺らす金髪のミカエルとガブリエルは、すっごく綺麗な笑顔で笑った。顔が黒く見えたあの天使達と違う。


 ミカエルが青い目で、ガブリエルの目は緑だ。どっちも透き通って綺麗だった。


「絵を描くのが好きだと聞いたから、これはプレゼント。今度、描いた絵を見せてね」


「うん」


 頷いて受け取ったのは絵の具だ。僕が知らない色が入った籠は、いっぱい筆や絵の具がある。その横にお菓子も入ってて、ミカエルが絵本を差し出した。


「人間の絵本の中で、人気のある話を選んできた。気に入るといいけど。どうぞ」


「ありがと」


 絵本は兎と狼が描かれてる。初めて見る絵本だった。パパに抱っこされて、僕は両手にいっぱいプレゼントを貰う。僕もミカエルとガブリエルに、何か返してあげたいな。パパにも絵をいっぱい描くね!

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