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エスニック

作者: 椅稲滴


 ふと、強烈にゲームをしたくなることはあったとしても、ぼくがインターネットにかける時間の大半はタイプ論とVtuberとボーカロイドだった。ごくまれに、ゲームをしたくなることよりもさらに低い頻度で、小説を書いて投稿サイトに上げたくなることもあったけど。そんなことだから、親にスマートフォンを買ってもらったのは、バイトを探せども探せども見つからなくて、というか受けるたびに落ちて、こうまで俺が受からないのは携帯電話を持っていないからだと責任転嫁した高二の時のことで、それまではさして必要なかったのでiPadを使っていた。

 僕には弟と妹がいて、どちらもぼくよりはるかに早くスマホを手にしていたが、なかでも真先に親と交渉したのは弟だった。それこそ、うちの両親は伝統的な()()()で、たぶん同年代の子の家と比べてもかなり年功序列がはっきりしていたはずで、そんなことだから、弟が中一の時にスマホが欲しいと言い出した時も始めは渋っていた。しかし、ぼくが押せども引けどもひっぱたこうとも動こうとしないアナログ電化製品だと知って諦めたのか、最終的には買ってやっていた。そのおかげで、妹はもっとあっさりスマホを手に入れていたが。

 家では、はじめはぼくと妹が優等生だったが、そのうちぼくは路線変更したので、優等生は妹ひとりになってしまった。そんな経緯を辿ったので、ぼくは内面、静かに狂っていたのだが、弟のやつは天性のそれで、一貫して狂っていてゲームをしては奇声を上げていたのでご近所にはいい迷惑だったはずだ。幼い子どももいるのに。あいつは、絶対にその子たちに何らかの悪影響を与えたはずだ。そう思っていながら止めなかったぼくもぼくだが。

 そんなこんなでぼっくはスマホを手に入れたが、これといって生活が変わることもまあ当然なかった。相変わらずバイトは落ち続けていたし。


 ありていに言ってしまえばぼくの生活は、東海道線三駅分ほどを境に分断されている。ぼくの学校にコロナの影は薄く、体育祭のダンスの練習などをしていた。なぜかペアダンスをやるとかで、ぼくはもちろんエアダンスを胸の内で熱く希望していたのだが、それも叶わず、まったく喋ったことのない女子とペアを組むことになったりしていた。

 その日は昼休みに練習もなく、ぼくは図書室で哲学と心理学の棚をうろうろしていた。その春から司書が変わり、いらんのに書架の配置換えをしてくれたおかげで、心理学と宗教の棚の先にあった文学の棚はどこかへ消滅し、代わりに日本の作家があ行から並んでいた。

 前は埋めるほど貼りつくされていたリクエストの紙も今はまばらで、多分他校よりは活気があるんだろうけど、以前よりも少し寂しい感じのする場所になっていた。

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