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騒音男と、私の戦い。  作者: 八代
3/7

【03】2020.11/26

ぼくは もう つかれたよ バトンラッシュ

夕方、突然大家が家に尋ねて来た。理由はわかっている。ここに入居する際、内見に来た時に『あれだけは直して下さい』と不動産屋と管理会社に伝えていた、えんとつ穴。現在はFF式のストーブが普及しているので必要ない穴を、丸めた新聞紙で塞いでいたのである。『もちろんです』と言って入居時には蓋がされていたのだが、蓋の外は外だった。そう、向こう側、筒抜け。新聞紙すら入っていない。私の住む場所は北海道。金属の蓋一枚で直通外。これを直したと言えるのは、恐れ入る。


弟が大工だったので、弟に頼んで当時簡単に修理して貰った。本当に簡単だった。丸めたタオルを突っ込んだだけ。お前……『それだったら、私も出来るわ』と言いたかった。こちらとしては、きちんと金を払うつもりでいたので『これで駄目だったら呼んで』と言われて『お前はなぜこれでいいと思えるんだ』と思ったのだが、面倒だったのでそこはそれでOKとした。


1年位前に気づいたのだが、その穴を埋めていたタオルが忽然と姿を消したのだ。原因は大体想像が出来る。カラスの所為だ。カラスは巣を作るために、色んなものを持っていく。昔働いていた職場の看板の外側にあった発砲スチロール部分。カラーリングをしたそれを、カラスは持って行っていたのだ。カラス、枝だけで頑張れよ……手ェ抜くなよ……。まあ、そんな理由で、中に入っていたタオルは消えた。再び直通外である。


タオルが姿を消したのに気づいたのは約1年くらい前だが、気づくのに時間がかなりかかった。と言うのも、そのえんとつ蓋の部分から水が滴っていて、『なんでここから水が垂れているのだろう? 結露かな?』と、のんきに考えていた。雪がそこに積もり、部屋の熱で溶けて流れている事に気づかず。そしてどこからともなく聞こえる水の音に『どこからも水はこぼれてない……。心霊現象!?』と怯えながら。垂れた水の下には、プラスチックの板(キッチンの油はね防止に、プラ板にアルミ壁紙を張っておしゃれにデザインしようと思っていた。その前に、母が勝手に突っ張り棒とスチール網で調理器具をひっかける場所を作ってしまっていた。後、板は放置されたままである)


さて、まだ本格的に雪は積もっていないが、とある朝、ちゅんちゅんとスズメがその穴に入って、暖をとっていた。電線にとまるスズメはかわいい。しかし寝ている人間の近くで鳴くスズメはかわいくない。まだ夜が明けきる前から騒がしい。私は寝ている時に邪魔されるのがものすごく嫌いだ。幽霊だろうと、スズメだろうと、自分の膀胱の尿意だろうと、イラッとする。それが2日連続で行われた。二連休で、ゆっくり寝ようと思った日に。起きてすぐ、管理会社に連絡を入れた。えんとつ穴を外側から封じてくれ、と。


このアパートは以前にもスズメが隙間から侵入し、巣を作った事がある。1階と2階の鉄筋部分にある、狭い隙間の中に。その時は鳴き声にプラスして、かさかさと天井裏を歩き回る音が煩かった。しかし壁の間に落ちたり、部屋に入ってくる事は一切なかったのだが、今回は違う。薄い金属の蓋は緩く、スズメが少し突いたら、恐らく外れる。外れてしまった蓋に驚き、部屋の中に侵入された日には、大パニックで大暴れするであろう、スズメ。まだスズメなら小さいからいい。間違ってカラスにでも入られた日には、どうやって捕まえればいいのか。


という事で、完全に雪が積もって修理が難しくなる前にと急いで電話をし、大家来訪に至った訳だ。私の説明が下手なのか……と言うより現状を見ないと中々説明ができ辛いのだが、大家と共に家の裏手へと周り、穴の場所を説明。内側にはきちんと蓋がされていたが、外側には蓋が最初からついておらず、カラスによって詰められいた物が抜き取られて雨水や雪、冷たい風と共にスズメが入って来ると言う旨を説明した。大家は状態を見て、すぐに修理すると言ってくれた。そして、その話と共にヒロユキの話になった。


なんとヒロユキは、大家が家に来たら警察を呼ぶと言い出したそうだ。大家が無理やり自分を追い出そうとしている。それは法律違反だから、警察に言う!と。目が点になった。多分、私は豆鉄砲をくらった鳩のような顔をしていたと思う。そもそも、入居した段階から足音が酷く煩い事は伝えていた。それが改善されず、仕事を辞めてから真夜中に動き回り(真冬でも玄関と窓が開けっぱなしで、トイレもドアを閉めずに用を足すので、丸聞こえになると言う)23時に廊下でノコギリを使うなどのDIYを始め、大家の許可も取らずに国旗を掲げ、あげくに風呂場の排水パイプに4か所キリで穴を開け、階下のうちの風呂場と換気扇から汚水シャワーを浴びせてくれたのは、どこのどいつだ。修理する為に見積を取ると言った大家に、『大家に任せると、代金をちょろまかされそうで嫌だ』と言って『じゃあ、下の人の修理の分も当然貴方が見積を取るんですよ』と言うと、『いや、人の家に上がるのはちょっと失礼だと思うので……』みたいな事を言っていたようだが、見積を取る時にお前は別に必要ないし、むしろなんで女しか住んでない家に上がろうとしているのか意味がわからん。そもそも排水シャワーの後に、奴はまともな謝罪に来ていない。警察を呼ぶとしたら、騒音で迷惑している自分(2回程呼ばせて頂いた)と、ヒロユキの隣人であるし、借家を壊された大家であろう。お前が呼んでどうすんだ。事情を説明する大家に、私は奴の言ってる矛盾点を伝えた。大家もわかっている。



だが、警察は来た(マジでお疲れ様です、道警さん!!!!)



私は大家との話が終わったので、奴の発する騒音を聞かないようにする為にヘッドホンをし、お気に入りのYouTuberの動画を作業用BGMにしながらゲームをしていた。故に会話は一切聞いていなかったのだが、ヒロユキの声を聞くのも顔を見るのも嫌だと言っていた母が、玄関のすぐ横にあるトイレに座って、話を聞いていたらしい。


「ヒロユキ、警察に説教食らってたんだけど」


借りていて、壊してしまったものはすぐに直さないと駄目でしょう? あなたが間違っていますよ、と、まるで小学生に教えるかの如く諭していたと言う。『法的に~』などと言って自信満々に胸を張って退去要請を拒んでいる男に対して。本当お疲れ様です、しかし奴は、それで確固たる自分の信念を曲げない。なにかと言えば、『法律で~』それはきちんと契約を守っている住人に対しての物であって、他者に迷惑を掛けるような人間が口にしていい言葉ではない。間違っても。そもそも法テラスで自分の置かれている状況を説明して、出なくていいと言われたらしいのだが、ヒロユキは自分の行った事を話したのだろうか?


真夜中のDIY。

祝日に勝手に設置した国旗。

風呂場の排水溝にキリで穴を開ける。

穴を開けた後の修繕を渋る。

窓や扉を前回にして、トイレの扉を開けたままで用を足す。

ペット禁止の部屋で、猫を引き取ってきて飼おうとする。


これを全部話した上で、『退去命令が出てしまったんですが、ボクは出なきゃいけませんか?』と説明したのだろうか? その上で弁護士が『断って当然です! あなたは法律で守られているのですから!』と言うのだったら、ちょっとその弁護士に『では物件を破壊された大家と、不眠症になっているヒロユキの隣人やうちの母、汚水を掛けられた私の生活は誰が守ってくれるのですか?』と聞いてみたい。


──言っておくが、ヒロユキは市から援助を貰って、あとは自分で物件を決めて、ストーブの清掃費だけで引っ越しが出来るそうだ。市の福祉課の人も、彼に退去するように勧めてくれている。私たちが騒音に負けて引っ越すには、何十万の金が必要になるのだが、彼は新居にかかる物の一切合切を、自分の懐を痛める事なく家を出られるのだ。『お前が出ないなら、その権利を私達に寄越せよ!! 費用が掛からないなら、私等が引っ越すからさぁ!! ストーブは自分達で買ってつけた奴だから、持ってくけどな!!』と言ってやりたい。






さて、この話は数日に渡って書いているのだが、26日の深夜には『煩い……煩い……煩い……』と低い声で呟き、27日には再び警察が訪れていて(母が仕事から帰宅する際に職場の近くで利信家の夫妻に出会い、パトカーがまた来ていると教えられて帰宅を遅らせたそうだ。私が仕事から帰った時には、すでにパトカーはいなかった)再び対決をしていたらしい(ちなみに仕事中、大家から電話が来て、『外の穴は塞いだのですが、直してくれた修理業者の方が、部品をはめ込む際に力を入れすぎて、部屋の中の蓋が外れて部屋に落ちてしまったそうなんです……』と言われた時には笑った。修理しに来てるのに、壊してるんじゃねぇよwと内心突っ込んだ)

その数日前には奇声を上げて部屋を徘徊しているのを聞いたので(夜中の2時頃)うすうすヤバイ奴だとは思っていたが、本格的にヤバイ奴なのかもしれない。


一応、友人に向けてメッセージなどで、もし自分が殺されてニュースなどになったら、犯人は奴しかいないと伝えてあるし、行っていた整骨院の先生にもその旨を軽く話しているので、すぐに捕まえてくれるであろう。騒音で殺人事件が起きる昨今だ、コロナ渦のストレスや、地元でのクラスターも相まっていつ衝動的にさっくりいかれてもおかしくない。出来れば速やかに、事の解決を願いたい……。


静かな湖畔の森にあるホテルにでも、ゆっくり泊まりたい……。

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