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銀の天使と金の獅子  作者: BlueBlue
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金の獅子と黒い豹

「珍しいな。今日は信奉者に囲われていないのか」

二人の男性のうちの一人がお姉様に向かってそう言った。

これぞ黄金と言えるほどの見事な金色の髪の人だ。


陽の光を浴びてキラキラ煌めいている。襟足が少し長いせいで若いライオンのように見える。整った顔に瞳も金色でなんだか威圧感がある。身長も高い。

お兄様と同じくらいだろうか。圧倒されそうなイケメンだ。


「ごきげんよう。そちらこそ、今日はたくさんの小鳥さんたちがいらっしゃらないようですわね」

お姉様が返す。


「群がられそうになったんだけどね、君を見つけたのをいいことに体よく逃げてきたんだよ」

もう一人が言う。こちらは艶めく漆黒の髪に深海のような深い碧の瞳。線は細く物腰柔らかなようだがスキがない。黒豹のようだ。

ぱっと見はちょっと軽薄そうな爽やかイケメン。


金獅子と黒豹……この人たち、多分強いわ。


そう思って見ていると、金獅子がこちらに目を向け、目が合った。


するとどうしたことか、目線を外すことができない。

金色の瞳に囚われたように逸らせない。私の中の奥底にある何かが、この金色を欲しているような…どうしようもなく泣けてしまうような、そんな気持ちになる。

初めて会う人のはずなのに。

苦しくて切なくてどうしたらいいのかわからない。苦しい……誰か。


そう思った時、何かを感じたのか、足元にヴェントが現れた。

ヴェントは私の手を労わるようにペロッと舐める。不思議なことに苦しさが消えた。ほっと息をつくと、次の瞬間、気配を感じ咄嗟に手で払う。金獅子の手だった。


「ちょっと!何をなさいますの?」

お姉様とヴェントが、かばうように前に出る。

「いや、なんの反応も示さないから具合でも悪いのかと思ったのだが」

金獅子が答える。


「そんな大男二人がいきなり近づいてきたら、誰だってびっくりして固まってしまいますわ」

お姉様に威嚇されているにも関わらず、金獅子は涼しい顔をして

「私を見ても何の反応もしないのは珍しいな。もしかして私の事を知らないのか?それにこの犬……狼か?突然現れたようだが……」

金獅子は興味津々に聞いてくる。


「ふっ、あなた方にこの子の事を話す筋合いはありませんわ」

お姉様が小馬鹿にした言い方で返す。


「相変わらずつれないなあ、ロザナ嬢は」

黒豹の方が言う。


「わあ、あの時の狼さんの子供ですか?」

アニエラ様が目をキラキラさせて見ている。

「あの時の狼よ、ヴェントっていうの。ある程度なら大きさを変えることができるの」

今のヴェントは中型犬くらいのサイズだ。


「大きいお姿も素敵でしたけれど、こちらの大きさも可愛らしいです。触ってみたいですわ」

アニエラ様が更に目をキラキラさせて言う。

「ええ、もちろん。アニエラ様ならヴェントも喜ぶと思うわ」

二人でヴェントを撫でまわす。


その間、お姉様は猛獣たちと何やらやり合っていたようだけれど

「さ、二人とも行きましょうか」

最終的に二人を放って、本来の目的であった会場へ行く事にしたようだ。


「おいおい、結局紹介はなしか?っていうか、同じ所へ行くんだから、一緒に行けばいいじゃないか」

金獅子が言うと、それに同調して黒豹も

「そうだよ。ロザナ嬢、私にエスコートさせて」

爽やかスマイルで言ったが、露骨に嫌な顔をするお姉様。


「あなた方と一緒だと悪目立ちするから嫌ですわ」

「いやいや、君たちには負けるよ。ロザナ嬢だけで十分目立つのに、更に美しい令嬢が二人も増えてさっきからずうっと注目されているよ」

「そこにあなた方が加わったら余計目立つのでは?」

「あはは、それなら皆で注目されちゃえばいいんじゃない?」

黒豹はお姉様とのやり取りを楽しんでいるようだ。


ふと気づくと、金獅子がいつの間にか隣にいた。

「銀のご令嬢、名前を聞いても?」

私は先程の不可解な感情にまだ戸惑っているので、この人には関わりたくない。

無視を決め込む。


「先ほどはぼーっとしていたようだが、本当に具合が悪いとかではないのか?」

「さっきの狼はどうした?あれは君の使役獣か何かなのか?」

無視していることは分かっているようなのに、次々と話をふってくる。

「聞いているのか?」と肩に触れてこようとした手をするりと躱す。


「先ほどから、敢えて無視をしているのを分かっていらっしゃるのにしつこいですわ。大体、ご自分から名乗りもしないで質問ばかり、失礼ではありませんか」


「えっ?」金獅子がキョトンとしてしまった。アニエラ様があわあわしている。

「銀のご令嬢、君は本当に私の事を知らないのか?」

なんなの?知らない人は居ないみたいな言い方。


するとアニエラ様が困ったように言う。

「ルーナ様、あの、こちらの方はこの国の第一王子ですわ」

「王子?」

「オルイレアランス国、第一王子、レオナルド・オルイレアランスだ」

あぁなるほど、だからその態度なのね。それは、尚更お近づきにはなりたくない。


「ルーナ・アルコンツェです。それでは失礼いたします」

ちょうど会場に到着したので、とっとと離れることにする。

「えっ?!あ、おいっ」

「お姉様、また後でね」

殿下の声をスルーする。

「ふふ、じゃあまた後でね、ルーナ」

お姉様も笑顔で返事をしながら、殿下と黒豹を置いて離れていった。


「あーあ、逃げられちゃったね」

「ああ」

「ルーナって子はロザナ嬢の妹なのかな」

「そうらしいな」

「アルコンツェ家の人間は恐ろしいほどの美形ぞろいだねえ」

「だな。世の令嬢たちが目の色を変えて寄って来る俺たちに、見事なまでの冷遇っぷり。ロザナ嬢といい大した姉妹だ」

「だねえ。まあ俺は、そういうの好きだよ、楽しいし」


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