エピローグ
「おかしゃま。クロたんないの」
「クロたん……ああ、クロちゃんね。ヴェントの上でお昼寝してるわよ」
「え?あ、いたー」
そう言うとトコトコ歩いてヴェントの元へ行く。ヴェントの上にはたくさんの精霊さんたちが寝ている。その中にたった一人だけ黒い洋服の精霊さんがいる。その精霊さんこそがクロちゃんだ。他の精霊さんたちと丸くなって寝てる姿が可愛い。
銀の髪に金色の瞳をした私たちの娘、アウローラは精霊が見える、というか愛し子になっていた。私に負けず劣らずの魔力を持っているのだ。
モーネ様は
『絶対そうなると思ってたの。もう最高の気分だわ』
とはしゃいでいた。
そして、私の腕の中でスヤスヤ眠っている赤ん坊。こちらは金の髪に金の瞳と紫の瞳のオッドアイの男の子、ジョバンニ。この子もまた、負けず劣らずの魔力の持ち主である。勿論、太陽の精霊王様の愛し子だ。
『こんなに簡単に愛し子が続くなんて……初めてだぞ』
ソーレ様はちょっと呆れ気味に言っていた。
「流石、私のルーナの子供達ってところね。将来が楽しみだわ」
そう言ってお茶を飲むお姉様。
「うちの兄弟は既にアウローラちゃんに夢中ですわよ」
ニコニコしながら言うアニエラ。
今日は三人で、お茶会をしている。
お姉様もアニエラも私より早く結婚した。お姉様はカテリーナという五才の女の子とライモンドという四才の男の子がいる。アニエラには四才の双子の兄弟、マッシモとマッセオがいる。皆、揃いも揃って美男美女だ。
「ふふ、見て。何気にもうアウローラを取り合っているようね」
お姉様の言葉にそちらへ目を向ける。
「走ったら危ないよ、ローラ」「僕が手を繋いであげるよ」「何言ってるの、僕が手を繋ぐんだ」三人であーだこーだと言い合っている。
でも、当の本人は全く聞いてないようで「ヴェントー」と呼びながらテトテトと走る。案の定、つまずいて前へ倒れ込むが、それを予想していたヴェントに支えられる。
そこへ
「ヴェント、ナイスですわ」
そう言いながらやって来たのはカテリーナだ。それに気づいたアウローラはそれはそれは嬉しそうに
「リーナ」とまたもやテトテト走り出す。カテリーナは急いで走り寄ってしっかりとアウローラを抱きしめた。
「ローラ、あんまり走ると転びますわよ」
「あい。リーナしゅきー」
返事だけはいい。そしてカテリーナにギュウっとしがみつく。
「当分はカテリーナの一人勝ちですわね」
お姉様がそう言うと
「確かに」
アニエラと私は笑った。
「随分楽しそうだな」
声をした方を見ればレオ様とリナルド様、サンドロも歩いてきた。
「お仕事は終わり?」
そう私が聞けば、レオ様は
「せっかく皆揃ったからな。こんな時くらい早めに終わらせても罰は当たらないさ」
そう言ってジョバンニにキスを落とし、私にもキスをする。
やいのやいのと騒いでいた子供たちは、三人の父親たちを見つけると、各々自分の父親の元へ走り寄る。アウローラも
「おとしゃまー」
そう呼び掛けながら走り寄る。レオ様は愛しそうな顔をすると、娘を高々と抱き上げてキスをした。
レオ様は王太子として毎日執務に追われながらも私たちをとても大事にしてくれる。リナルド様は宰相補佐として、サンドロはレオ様直属の護衛騎士として、毎日忙しい日々を送っているけれど全員、家族至上主義だ。因みにお兄様は先日、魔術師団副団長に就任した。相変わらず独身でお姉様に馬鹿にされている。
あれから特に何事もなく、平和な日々が続いている。
「この幸せな日々を守って行かなきゃ」
ポツリと呟くと
『そうね、一緒に守って行きましょうね』
いつの間にかいらっしゃっていた精霊王様方が笑って言ってくれた。
精霊王様方を見上げた先には青い空がどこまでも広がっていた。




