精霊に愛されし二人
あれから二年半経った。
「ルーナ……もうこの世の物とは思えない程の美しさだわ」
「本当に……我が娘たちはこの国の至上の宝だわ」
真っ白いウェディングドレスに身を包んだ私をお姉様とお母様が私を誉めそやす。
「いい?レオに何かされたら真っ先に兄様に言うんだよ。すぐに助けに行くからね」
「うう……私の天使が……嫁なんて行かせたくない……ぐすっ」
「もう、お兄様ったら。お父様も、私はお嫁に行ってもずうっと変わらず大好きなお父様の娘で、お兄様の妹ですから」
「ルーナ……城に行ったら毎日、父様の執務室に遊びにおいでね」
「ふふ、わかりましたわ」
「私の執務室にもだよ」
「はい」
「さ、もうすぐ始まりますわ。私たちは先に行って待ってるから、お父様はしっかりエスコートしてくださいまし」
お姉様はそう言うと、私の頬にキスを落として控室を出る。次いでお兄様も同じようにキスをして出ていく。最後にお母様は私をギュッと抱きしめてから両頬にキスをしてくれた。
「殿下と幸せになるんですよ」
そう言って控室を出て行った。
「じゃあ、我々も行こうか」
やっと笑顔になったお父様と控室を後にする。そして大きな教会の、長いバージンロードを進む。
歩きながら、皆の姿が見えた。
クラスの友達もたくさん来てくれている。勿論、アニエラとサンドロ、リナルド様はお姉様の横にいる。
そして、祭壇の上ではレオ様が眩しそうな表情でこちらを見ている。祭壇の手前でお父様がレオ様に私を預ける……はずが、お父様の手が私から離れない。
「お父様?」
小さな声で呼びかけると、涙を溜めた目で
「やっぱり私の天使を嫁になんてやりたくない」
と、駄々っ子のように言った。
「お父様……」
堪えていた私の瞳から涙が零れる。今更のように家族と離れる事を実感してしまった。でも、これは別れではないはず。
「私はお父様の娘に生まれて本当に幸せよ。例え嫁いでも、お父様を好きな気持ちは変わらないわ。そもそも私はずうっとお父様の娘であることに変わりはないのだもの。それとももうお父様の娘とは思ってもらえない?」
そう言うと、はっとしたような表情になったお父様。
「まさか、そんなわけないじゃないか。ルーナは、私の天使はずっと私の可愛い娘だよ」そう言って、私をぎゅうっと抱きしめてから手を離した。それはもう忘れられない程の恐ろしい鬼の形相でレオ様を睨みながら。
国内外の貴族、王族が連なる中、私たちは結婚式を挙げる。お父様の渾身の睨みに苦笑しながら私の手を取ったレオ様はこちらの目がくらみそうな眩しい笑顔で
「ルーナ、今日は一段と美しいな。眩しくてクラクラする」
そう言ってくれる。
「レオ様も素敵すぎです。私の自慢の旦那様です」
「旦那……いい響きだな」
少し照れたように、でもとても嬉しそうに言うレオ様。
神への誓いが終わり互いに向かい合い、ゆっくりベールを上げて私を見つめたレオ様。
「やっとここまで来た。これでやっと本当に俺のものだ」
「ふふふ、レオ様も。私だけのものです」
そしてゆっくりと顔を近付け、そっとキスをかわす。数秒のキスの後、顔を離したレオ様は名残惜しそうな顔をすると、両手を私の頬に当て再び少し長めのキスをした。
すると、不意に教会の中に風が吹く。参列者たちが不思議そうにキョロキョロしていると、私たちの横にソーレ様とモーネ様が現れた。
『おめでとう、二人とも。ああ、ルーナ、とっても綺麗よ。さすが私の愛し子ね』
『レオナルド、お前もまあやっと一人前になったって所だな。ルーナを泣かせるなよ』
「ありがとうございます、精霊王様方。お二人に祝っていただけて本当に幸せです」
『私たちだけじゃないわよ。せっかくだから皆で祝福してあげるわ』
そう言うと
『さあ、皆。準備はいい?』
と周りにいる精霊さんたちに呼びかける。実は精霊さんたちはずっと教会内でふよふよしていたのだ。
『じゃあ……せーのっ』
そうモーネ様が言うと皆が花びらを振りまいた。
教会中に花びらが舞う。二人の精霊王が現れただけで周りの参列者たちは驚いていた上に、どこからともなく舞うたくさんの花びらを見て
「祝福だ!この国は精霊に愛されている」
と大いに沸いた。
「ルーナ」
ふとレオ様が私を呼ぶ。レオ様をしっかりと見つめると
「俺の銀の天使。これから毎日幸せにする。覚悟しろよ」
金の瞳を輝かせながら言った。
「私の金の獅子様も。覚悟してくださいね」
そう言うとレオ様は優しい微笑みを見せて、もう一度私にキスをするのだった。




