エジディオだったもの
「来るぞ!!」
レオ様が叫ぶ。
「よっしゃー!行くよ!」
「はい!兄上」
リナルド様とサンドロが飛び出す……前にヴェントが飛び出した。
「もうヴェントったら俺らの見せ場取らないでよ」
「流石ヴェント!」
兄弟が全く異なる反応を見せながら後に続く。
お姉様も大きなゴーレムを作って応戦する。アニエラは皆に補助魔法をかけているようだ。私もエジディオを見据えながらも、お姉様とアニエラの周りに結界を張る。
「さあルーナ、私と共に行こう」
エジディオはいけしゃあしゃあと私に手を差し出してくる。
「おまえ、人間の頃からちょっと残念だったが……人間やめても残念なんだな」
レオ様が溜息交じりに言う。
「王になる私に失礼だな」
エジディオが言うが
「ほら、そういう所が残念なんだよ。どうあがいたってお前が王になんてなれるわけないだろう。なんでなれると思う?」
「そんなの簡単じゃないか。貴様を殺せばいいだけだ!」
言い終わらないうちに刃物のような爪で切りかかる。予想していたレオ様は余裕で躱す。
「ほら、そういう所。スキをついたつもりんなんだろうけど、バレバレなんだよなあ。剣の稽古の時から変わらない」
「なんだと?」
「どんなに強い力を手に入れようとも、使いこなせないのなら意味はない。所詮おまえは小者なんだよ」
黒いオーラが膨らんだ。
「うるさい!うるさいうるさい!私は強いんだ。もうお前なんか一捻りで片づけられるほどの力を手に入れたんだ!!」
そう言いながらレオ様に猛攻撃を仕掛ける。だけれど、レオ様はずっと余裕の表情のまま躱し続け、反撃も忘れない。明らかにエジディオが劣勢に立っている、というか、全く歯牙にもかけられていない。
面倒そうな表情で入れたレオ様の、鋭い蹴りでエジディオが吹き飛んだ。
その時だ。
「くそっ!」と言いながらエジディオは近くにいた魔物を喰らいだした。バキバキと砕けるような音をさせながら凄いスピードで食べている。あっという間に二体の魔物を平らげる。
「フフフ、これで勝てる」
三体目を食べながらそう言ったエジディオの身体がみるみると大きくなる。
あっけに取られて見ていればもう倍以上の大きさになった。
「これ……でルーナ……は……わた……しの」
言葉が片言になっていっている。もしかして、エジディオの部分がなくなってきているのではないだろうか。
三体目を食べつくした時
「ルー……ナ……ル……ナ…………つき」
大きな咆哮と共にエジディオであったものが完全に消失した。黒いオーラが修練場の半分以上を覆いつくす。そのオーラに触れた魔物が明らかに凶暴化し出した。
「ちょっとレオ。何してくれちゃってんの。こっち側の魔物がおっかないオーラ出し始めたんだけど」
リナルド様が次々と魔物を切りつけながら言う。
「すまんな。ちょっと怒らせたみたいだ」
エジディオだったものと対峙しながらレオ様が言う。
「ああもう、よりによって俺の方ばっかり」
と愚痴ると
「じゃあ、大人しく尻尾でも巻いてみたら?」
と後ろから声がした。




