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銀の天使と金の獅子  作者: BlueBlue
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社交界デビュー

 社交界シーズンがやって来た。いよいよ社交界デビューである。

舞踏会は夕方からなのだが、準備は昼間からだ。


昼食もそこそこに磨かれていく。メイクをされて、髪もセットされる。右側の一房分だけ髪をおろし、あとは綺麗にアップにされた。アップになっている所々に花を差し込まれる。


コルセットでギュウギュウに締め上げられた後、ドレスを着ていよいよ完成だ。

侍女達の健闘により、とても素晴らしい出来になった。


「支度は終わった?」

とノックをしながらお兄様が入ってきた。私を見て

「はあぁ……これは天使というよりも女神だね」

と言ってくれた。


すると、フィデリオがやって来て

「殿下がいらっしゃっております」


フィデリオに扉を開けてもらって居間へ入る。

するとレオ様が立ち上がったまま固まった。

「ルーナ……綺麗だ……」

それだけ言ったまま動かない。


「レオ様?」

私が呼び掛けると、我に返ったようで私の腰を片手で抱き寄せ、もう一方の手で私の左手を掴み指先にキスを落とす。それだけでもう私の心臓はドクドクして痛い。

「こんな美しい姿、誰にも見せたくないな」

そう言いながら、指先を頬から首へ滑らせる。くすぐったさに、思わず肩が跳ねる。


その様子に気を良くしたレオ様が

「ルーナに贈る物があって来たんだ。それと誰よりも早くその姿を見たくてな」

そう言って懐から青いケースを出した。


「ルーナ、少しじっとして」

言われた通りじっとしていると、レオ様が私の正面から抱きしめるようなポーズをする。そして離れたあと、私の首元に光る物が。


金と銀の蔦が絡まるように編まれたネックレスだ。中心に大きな黄色い宝石が付いている。イエローダイヤだ。耳元にも同じデザインのイヤリング。

「ドレスは間に合わなかったからな。せめてこのくらいは俺が贈ったものを身に着けて欲しい」


「レオ様、こんな素敵な贈り物をありがとうございます。大切にします」

「今度は絶対にドレスを贈らせてくれ。今日は楽しんで来い。だが、あんまり他の男と踊り過ぎるなよ」

そう言って、瞼にキスを落とし、レオ様は帰って行った。


 舞踏会の会場に到着する。

デビュタントのいる家族は、名を呼ばれたら会場へ入る事になっている。

順番を待っている間、お父様が

「私が一番に踊りたかったのに……ダンテずるい」

と、ブツブツ言っている。


「もういい加減に諦めなさいませ。それとも私とロザナの両手に花状態に不服でもおありなのかしら?」

お母様が極上の黒い笑顔で言うと

「そんなんじゃないよ。そんなわけないだろう。ただ、ロザナの時もダンテが最初のダンスの相手をしたのに、ルーナまで……って思っただけだよ」


最初のダンスはエスコートの相手と決まっているから仕方ない。

「お父様、それでしたら二番目と最後のダンスのお相手もお願いするというのはどう?」

すると、たちまち満面の笑みになって

「ああ、勿論だよ、私の天使。やっぱり私の天使は可愛いなあ」


会話が落ち着いたところで名前を呼ばれる。そうして会場へと続く、大きな扉が開かれる。

「さあ、行こうか。私の天使たち」

そう言ったお父様の両サイドにお母様とお姉様。その前には、私とお兄様。胸を張り、前を向いて颯爽と歩き出す。


最後は陛下と王妃様が登場して、デビュタントへ祝福の言葉を頂く。続けて陛下が社交界開始の宣誓をして舞踏会が始まった。


「じゃあ、早速踊ろうか、ルーナ」

お兄様に促される。「はい」とお兄様の手を取り中央へ。ダンスは小さい頃から得意だ。しかもお兄様とはずっと練習してきたのでとても踊りやすい。

お兄様も楽しんでくれているようで、始終笑顔で踊った。


何人か倒れていたような気がするけれど、気にしないようにした。


次はお父様と。お父様は、見た目は細いけれど実は力持ちで私を何度も高く持ち上げた。笑顔全開で「可愛い」と呟きながら私のこめかみにキスを落とす。その姿に今度はご婦人方が倒れていた……気がする。


お父様とのダンスが終わった途端、私の周りに物凄い数の殿方が集まってしまった。

ちょっと怖くなってしまう。すると後ろから優しい低温で

「皆、すまないがルーナ嬢とのダンスの権利を私に譲ってもらえないだろうか」

と聞こえた。声の方へ目を向けると、陛下が穏やかな微笑みをたたえて割れる人並みの間を真っ直ぐ歩いてきた。


「来年はきっと息子に取られっぱなしになりそうだからな。居ないうちに……だ」

そう言って悪戯っ子のような笑みを浮かべる。

私は「喜んで」と手を取った。


流石に少し水分を摂ろうと、陛下と踊った後は踊りの輪から抜け端に向かう。するとアニエラがいた。

声をかけ、二人で飲み物を飲みながらお喋りする。


「アルコンツェ家の登場の時は、神々がこの地に降臨したのかというくらい神々しかったわ。もう家族全員が芸術品のよう」

「それは化け物じみているという事?」

笑いながら聞く。


「ある意味そうなのかも。人としての美しさからちょっと外れている感じよ」

アニエラも笑いながら答える。

そんな話をしていると、数人の同じクラスのご令嬢たちが傍に来た。

そして皆で楽しく過ごす。皆のお陰で殿方は遠巻きで見ているのでありがたかった。


 そうしているうちに、あっという間にラストダンスになった。お父様に手を引かれて中央へ。

音楽が始まる。

「ルーナ。初めての舞踏会はどうだった?」

踊りながらお父様に聞かれる。

「お父様とお兄様と、陛下にもお誘い頂いて楽しかったわ。それにお友達もたくさんいてあっという間に終わってしまった感じよ」


「そうか。それは良かったね。これからも父様とは必ず踊ってね」

「ふふ、はい。勿論」


そして曲の最後の音が鳴り響いた時、ヴェントが現れたのだった。


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