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銀の天使と金の獅子  作者: BlueBlue
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太陽の精霊王

 目覚めた当初は身体が思うように動かなかったものの、三日もすれば普通の生活は全く問題なく出来るようになり、一週間後には体力もすっかり戻った。

アニエラとサンドロがお見舞いに来てくれて、アニエラと二人で抱き合って泣いた。サンドロも私の頭をわしゃわしゃと撫でながら「本当に良かった」とちょっと泣きそうな顔で言ってくれた。


リナルド様もサンドロと一緒にお見舞いに来てくれて、チョコレートや珍しいお菓子をたくさんくれた。


殿下はほぼ毎日来てくれている。

どうしても来られないときは、大きな花束を贈ってくれる。

「至れり尽くせりとはこの事ね」

とお母様が笑ってた。


 今日も単身馬を駆って来ている。

「殿下。来てくれるのは嬉しいのですが、供もつけずに来るのは良くないのでは?」

「毎日、供を付けてとなると中々面倒だからな。それに馬で来た方が早い」

「でも……」

「大丈夫だ。俺はその辺の奴らに負ける程やわじゃない」


そんな会話をしていると、いつものようにわらわらと、精霊さんたちが集まってきた。

精霊さんたちは皆お菓子が大好きで、お菓子を出すと自然に集まってくるのだ。

勿論、ヴェントは最初からいる。


それにしても今日は何かが違う気がする。周りの空気がいつも以上に優しい。


「ねえ、ヴェント。今日はなんだか空気が違う気がするのだけど」

『我もそんな気がする』

それを聞いた精霊さんたちが、楽しそうに殿下の周りで踊りだす。

なんだろうと精霊さんたちを見ていると、殿下の後ろに何者かが現れた。


それは全身金色に輝く綺麗な男性だった。月の精霊王様が言っていた人だ。そう思って見ていると目が合った。とても優しく笑ってくれた。

何故だか心の中が温かくなる。


殿下が何事かと後ろを振り返って、驚いた表情で「太陽の精霊王」と呟いた。


「あの、私、ルーナと申します。月の精霊王様からあなた様にご伝言をお預かりしているんです。『私は元気だから』って。あの、あなた宛てで合ってますよね?」


すると、驚いた表情になったものの、再び優しい表情に戻ったその方は

「そうか……そなたが月の愛し子か。月の精霊王は元気なのだな。そうか……伝言、確かに。ありがとう、月の愛し子よ。私は太陽の精霊王だ。ルーナと言ったか、これからよろしく頼む」

そう言って、とても優しく笑った。


彼の声を聴いた私の心の中が熱くなった。これってきっと月の精霊王様の気持ちなのだわ、なんとなくそう感じながら太陽の精霊王様に告げる。

「よろしくお願いいたします。あの、月の精霊王様はあと一年待ってとおっしゃっていました。どういう事かおわかりになります?」


「あと一年だな。分かっているよ、ルーナ。その時になったら全て話すことになるだろう。だから今しばらくは心穏やかに過ごすと良い」

そう言って、私の頭を優しく撫でたあと、すうっと消えて行った。


「驚いたな。太陽の精霊王がこんな普通に出てくるなんて」


「そうですね。精霊の子たちが殿下の周りで踊り出したら、不意にお姿が……月の精霊王様から太陽の精霊王様に伝言を預かっていたので、無事に伝えることが出来て良かったです」


「そうか。それで、一年がどうとかというのは?」

そこで、月の精霊王様からの話を殿下と家族に話した。


「月の精霊王様は何かからずっと隠れていてそれがあと一年、ルーナの愛し子の力が覚醒したら現れる事が出来るという事かな?」

お兄様がまとめる。

「そしてそれは、太陽の精霊王様も知っていて、隠れている月の精霊王様の事を心配していたと」

お姉様も補足してくれる。


「そうです。一年後、何かが起きる。覚醒したその時に全て説明してくれると。太陽の精霊王様も今は心穏やかに過ごせと」

「その時はルーナの力と多分、私の力も必要になる何かが起きる」

殿下が自分の手の平を見ながら言う。


「まあまあ、まだ根を詰めて考える時ではないよ。何が起きるのかは、精霊王達に聞かなければわからないのだし、今は少しでも早くルーナが元の生活を送れるようになるのが一番大事だよ」

お父様がまとめるように言うと、皆が納得したように頷いたのだった。


 倒れてから一か月後、漸く学院に戻ってくることが出来た。

少しドキドキしながら教室へ入るや否や、クラス中の皆から言葉をかけてもらい、やっぱりこのクラスはいいクラスと改めで心の中が温かくなった。


そしてあっという間に月日は流れ、お兄様の卒業式。

泣き崩れるご令嬢が続出する中、お兄様も泣いていた。


「ルーナとの学院生活が一年しかないなんて、なんて不幸なんだ」

「ああもう、ほんっとうに鬱陶しいですわ。そんな事は初めから分かっていた事でしょう。とっとと卒業パーティーにお行きなさいませ。ご令嬢方が待っていますわよ」

そう言って、お姉様はお兄様を私から引きはがした。


こうして、学院生活一年目が終わりを迎えたのだった。


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