素早く的確に
窓から見えた四人の男女。
いかにもな人相の大柄の男が二人、私と同年代らしき女の子と侍女らしき女性を路地裏へ向かって引っ張っていくのが見えた。
まだ近くにいるはず。周囲をぐるっと見渡す。
すると、路地裏に消えて行く女性の姿が見えた。
急いで路地裏へと追いかける。
先程は腕を無理矢理引っ張り、引きずるようにしていた男達だが、進むのが遅いからかそれぞれ片手で彼女たちの口を塞ぎ、片手で抱えるようにして移動している。
このままでは間に合わない。
今にも奥の建物の中へ連れ込まれそうだ。
「ヴェント!」私が呼べばどこからともなく突風が吹き、男達の前に銀色の狼が立ちはだかる。
男達は突然自分たちよりも大きい狼が現れたことに驚き、女性たちをつかんでいた手を離した。
だが、気を取り直したのかナイフを取り出して無謀にも銀色の狼に向かおうとした。
追いついた私は、腰に差していた剣で二人のナイフを一瞬のうちに弾き飛ばす。
そのまま回し蹴りを男の首の後ろに落とす。
もう一人の男にはヴェントが鳩尾めがけて体当たりをした。
見事、二人の男は気絶して地面に転がった。
逃げられないように氷で出来た鎖で、二人の身体を拘束する。
背後では、突然の出来事に腰を抜かして座り込んでいる女性二人が青白い顔をして固まっていた。二人に視線を合わせるように跪いて「大丈夫ですか?」と問う。
どこかケガはないかと見回すと、女の子の手首に赤く痣が出来ていた。
きっと相当強く握られたのだろう。
「右手を見せて頂いても?」
私よりも小柄で可愛らしい彼女は、コクンと頷いてまだ少し震えている手を私に伸ばす。出来る限り優しく手を握り治癒魔法を施す。
手首の周りが一瞬だけ小さく光ったと思ったら、痣など初めからなかったかのように綺麗になった手がそこにはあった。
「あ、ありがとうございます」
貴族の令嬢らしき女の子は、驚きつつも少し顔色の戻った顔でお礼を言ってくれた。
侍女らしき女性もどうにか立ち上がって深くお辞儀をする。
「流石ルーナ、仕事が早いな」
そう言いながらお父様が、騎士らしき三人を引き連れてやってきた。
「後のことはこの者たちにまかせればいい。話は通してある」
二人の騎士は男達を連れていき、もう一人の騎士は
「屋敷までお送り致します」
と二人に優しく言った。
騎士に連れられて行こうとしている彼女たちの背中を見送っていると「あ、あの」と女の子が振り返り私に声を掛けてきた。
「この度は本当にありがとうございました。私はアニエラ・サルマンティーと申します。是非ともお礼をさせて頂きたいので、よろしければお名前をお教えくださいませんか?」
「ルーナ・アルコンツェと申します。ご無事で何よりでした。お礼なんて無用ですわ、当然のことをしただけですし」
助けたのは本当に偶然だし、このくらいの事でお礼なんてとんでもない。
そう思い断ると
「それでは私の気がすみません。なんでもいいのです、私にできることであれば是非お礼をさせてくださいませ」
アニエラと名乗った女の子は納得いかないようで詰め寄ってきた。
困った私は少し考えてとってもいい事を思いついた。
「では私と友達になってくださいませんか?」