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銀の天使と金の獅子  作者: BlueBlue
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かくれんぼ

 夏休みに入った。

休みの前半は領地に戻ってゆっくり過ごすことに。

合同練習の後にした話が、頭の片隅にいつもあったけれど、どんなに考えてもどうにもならないので気にしないことにした。ヴェントに聞いても守ることしか聞いてないらしいし。


後半は、お姉様が冬から始まる社交シーズンのデビュタントになるので、ドレスを作るため王都に戻る事に。お兄様も社交界デビューなのだが、お父様とお兄様は領地の仕事をしなければならないというので、お母様とお姉様と三人で一足早く帰る事に。


デビュタントは皆、白のドレスを着ることになっている。その中で個性を出さねばならないので、お姉様はもちろん、お母様も真剣だ。


悩みぬいて、シルクの生地で形はボールガウン、スカートの部分にはレースを何重にも重ねて、最後に金糸で刺繍が施された繊細なレースを重ねる。胸元にも金糸の刺繍と小さめのダイヤがいくつか縫い込まれる。きっと照明の光でそれは綺麗に輝くに違いない。


髪飾りも金の地金に白い羽飾りとダイヤが散りばめられた綺麗なデザイン。もう絶対お姉様が一番綺麗に違いない。


 休みも残りわずかなある日の午後、ヴェントがクレープを食べたいというので街まで行くことに。ヴェントが居るからと、付き添いは断って街を散策する。

付き添いがある方が、何かあって逃げるとき足手まといなのだ。


そして1人と1匹で気ままにプラプラしていると

『あの変な男が近くに居るぞ』

ヴェントが言う。


「変な男って?」

誰の事だかさっぱりわからないと考えながら歩いていたら、後ろから声をかけられた。


「ルーナ嬢ではないか。どちらへ行くのかな?」

エジディオ様だ。やだ、すっかり忘れてた。


「ごきげんよう。少し野暮用がございまして…」

当たり障りのない答えをする。

「おや、供は連れていないのかい?危ないよ」

と、自分は三人のガタイのいい供を従えて言うエジディオ様。そんな目立ってどうする?と突っ込みたい。


「私にはこの子がおりますので」

と、ヴェントを撫でる。今日は大型犬位の大きさだ。

「その犬では心許ないだろう、私が付き添ってやろう」


いやいや、そこの三人より強いから。そもそもヴェントは犬じゃないし。そう思いながらも笑顔を作って

「心許ないなんてとんでもないですわ。この子は誰よりも心強い私の相棒ですの」

ニッコリと答える。


そして向こうが何か言う前に

「では、私はこちらですので。失礼いたします。」

と、一方的に挨拶をして走り去った。


「え?おい」と呼び止めようとする声は聞こえていないという事にして、そのまま路地のある所まで走る。曲がってすぐの所に大きな木があるので、ヴェントと風の力でその木の上に登って隠れることに。


 しばらく様子を見ていると、案の定、男達を使って私を探している。

「そんなに遠くへは行ってないはずだ、探せ!こんな場所で供も連れずにいるのはチャンスだ。見つけたら何としてでも我が家に招待してやる」


こわ―い。それは招待という名の誘拐なのでは?

ヴェントが呆れながら『あれは思った以上にヤバい奴だな』なんて言っている。


いつまでここに居たらいいかしら?と思っていると、大通りの方から近衛騎士が数人やって来た。

「何かありましたか?」

訝しんだ目で男達を見ながら、身なりを見てエジディオ様へ問いかける。


こうなってしまったら、もう探すのは無理だろう。エジディオ様は陰で舌打ちしながら

「いや、なんでもない。失礼する」

と言ってそそくさと去って行った。


しばらくヴェントにエジディオ様の気を追ってもらうと、馬車に乗って離れたらしい。ほっとしながら木から飛び降りる。


「もうヴェント、ちゃんと誰か言ってくれないと」

『だから変な男ってちゃんと言ったろ』

なんて軽口をたたいて、やれやれと服の埃をはたいていると目の前に人影が…


今度は誰?と顔を上げると殿下が腕組みしながら鬼の形相でこちらを見下ろしていた。


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