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銀の天使と金の獅子  作者: BlueBlue
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お兄様は強し

 威圧感たっぷりの声が、エジディオの言葉を遮った。


皆が一斉にそちらを見ると、殿下を筆頭にお兄様、リナルド様、お姉様と続いている。

「あれ?君は確かバルバリーニ家の双子の一人だね。私の宝にもらってやるとかなんとか言っていたような……気のせいかな」

あ、これお母様と一緒みたい、冷気が出てきているわ。


「いいえ、お兄様。私にも聞こえましたわ。確かにおっしゃっていましたわよね、ええと……どなたでしたかしら」

お姉様のニッコリ笑っている顔がとっても怖い。


「私も聞いてしまったなあ」

楽しそうに言うリナルド様。


「どうやら君は何かとんでもない勘違いをしているようだから教えてあげるよ。君の家は確かに公爵家だ。だけどね、王族ならまだしも一介の貴族が、しかも、精霊の加護も受けていない貴族が、我がアルコンツェ家をどうこう出来るはずがないよね。代々、いずれかの精霊王の加護を受け続けているうちに勝てるとでも?

なんなら他の貴族を味方につけてやってみるかい?

まあ、うちを敵に回す程の度量のある家なんて、ここにいるオルランディ家位だと思うよ。かと言って、じゃあオルランディ家がバルバリーニ家に協力するかと言ったら否だけど。」

饒舌ですね、お兄様。


「あぁ、あと君の家は確かに、週に一度は手紙を寄越しているねえ。でも、その度にこちらは断りの手紙を送っている。どうして同じ行為を繰り返すのか理解に苦しむのだけど……数打ちゃ当たるわけじゃないからね。でね、私たちもいい加減面倒になってね。つい先日、父上が陛下に直接何とかしてくれって言いにいったらしいよ。だ・か・ら、もう手紙を出すのはやめてね。これ以上父上を怒らせると、王都に嵐が来ちゃうから。父上の雷はどんな地下に隠れてもピンポイントで落ちるよ。あ、あと権力を笠に着て人を脅すのもね」


極上の笑顔で捲し立てましたね、お兄様。もうエジディオ様でしたっけ?再びあんぐりですよ。


「は?おまえ、父上に何をやらせてんだ?」

こちらでは殿下がものすごく驚いている。

「え?別に何も。ただ陛下から直接、バルバリーニ家に通達を出してもらっただけ」

ウィンクしながら言ってのけるお兄様。


「はあ、国のトップを個人的な理由で使うとか……将来の俺とおまえの関係が見えた気がする」

落ち込む殿下。

「俺もいるから、そんなに気を落とすなよ」

「おまえだってダンテを止められないじゃないか」

「そうでした」

テヘペロ的な顔をするリナルド様。


「楽しそうなのはよろしいのですけど、あの方行ってしまいましたわよ」

お姉様が呆れた顔で言う。

「あれ?逃げちゃった?でもまあ、これでまた何かしてくる程のバカではないと思うからいいよ。当分はね」

お兄様が笑いながら言う。


「何もされていないか?」殿下が聞いてきた。

「はい、大丈夫です」

「でもあの方、ルーナを舐めまわすような目つきで……気持ち悪かったですわ」

アニエラが我が事のように身震いする。


「私のルーナをそんな目で?許せませんわね」

「やっぱりこの場で潰しちゃえばよかったかな」

「ダンテが言うと、冗談に聞こえないからやめてくれ」

「やだなあ、冗談じゃないし」


「はあぁ、とにかくだ。何かあったらすぐ私たちの誰かに言うんだぞ」

盛大な溜息をつきながら殿下が言う。

「?……何かって?」

「な、何かは何かだ。なんでもいい。あいつには気をつけろ」

「はあ。でも何かされそうになっても、私負けませんけれど」

「いやいや。あの蛇みたいな目付き見た?ああいう奴は、どんな手で来るかわからないから気を付けるのは大事だよ」

リナルド様まで言ってきた。


「まあ、ヴェントがもうアイツを見逃さないだろうから大丈夫だと思うよ」

と余裕の表情で言うお兄様。

「そうなのか?」

「そりゃあ。ここだから言うけどあの子は月の精霊王様の使い魔でルーナを守るために存在しているんだ。もう、ヴェントの中では敵認定されたと思うし、アイツの気を覚えただろうから少しでもその気を感じれば守るよ」


「本人が直接手を下さなくても?」

「それでもさ。どんな微弱な気の流れでもヴェントは感じ取る。例えば襲わせる相手と手紙でやり取りをするだろ。もうそれでアウトだ。間に代理を立てたとしてもね」

三人とも驚いている。


「悪いことを企む時って黒い気を発するんだ。それとアイツそのものの気が交ざるから風を操るヴェントにはすぐわかる。私も風の精霊王の加護を受けているからね。ヴェント程ではないけどわかるよ」


「なるほど」

「風の魔法ってそんな風にも使えるんだ」

リナルド様が素直に感動していた。


「魔法っていうのは、魔力と使う人のセンスで色々と使えるようになる。リナルドは水属性だったよね。それなら水脈を感じられるようになればそれを伝って遠くの情報を得ることなんか出来ると思うよ」

「私は土の加護を受けていますが何か出来ますか?」


サンドロが期待に満ちた目でお兄様を見る。

「さすがオルランディ家。兄弟共に加護つきか。土も地脈を辿る訓練をすればいいんだ。それこそサンドロは騎士になるつもりなのだろう。ならば、地脈を辿れれば戦いの前に、どの方向から敵が来るかわかるよ」

「なるほど。頑張ります!!」サンドロの目がキラキラしている。


「さあ、みんな、これ以上遅くなるのは良くないよ。今日はもうお開きにしてまた明日にしよう」

お兄様の一言で解散することになったのだった。


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