Side:レオナルド1
銀色の天使を見つけた。
流れるような銀糸が輝いていた。背筋を伸ばして颯爽と歩く姿の背に一瞬、羽が生えているように見えたほど美しい姿だった。
ロザナ嬢が一緒にいたが、もしかするとあれがアルコンツェ家の末娘だろうか。そういえば、カルロ団長も銀髪だったな。間違いないだろう。
リナルドの弟が入学してくるというので二人で探していたら、いつものようにどこからともなく令嬢たちが集まって来ようとしている。
俺はリナルドのように、令嬢たちの前で愛想良くする事ができない。にも関わらず、ギラギラした目付きで近づいてくる。シナを作り猫なで声ですり寄ってくる。面倒なことこの上ない。
立場上、無視することは出来ない。紳士たるもの女性には優しく誠実にと幼い頃から教えられているせいもあるが。
本来なら婚約者が居てもおかしくない年齢なのだが、父と母が大恋愛だったからか、無理に婚約者候補を見つけるようなことはしないでくれている。
そのせいで、あわよくば自分がという思惑たっぷりの令嬢たちが寄って来る結果になっているのだが。
そんな時にロザナ嬢と出会った。俺に傅くどころか見下そうとする。
兄のダンテも初対面からそんな感じだった。最初は鼻持ちならないと思っていたのだが、接していくうちにいい友人だと思うようになった。
毒づきの応酬も悪くない。ダンテに至っては、優秀なのは知っているし、ゆくゆくは俺の側近になるという話が既に出ている。
太陽の精霊王の愛し子であるこの俺が、未だに剣も魔法も勝つことができない唯一の相手だ。
そんな二人が何かにつけ話すのが、末の妹の事だった。それはもう蕩けそうな顔をさせながら盛大に惚気るのだ。うちの妹は可愛い天使だ、尊い女神のようだとか……シスコンの言うことだ。たいぶ大げさに言っているんだろう、と大して気にも止めていなかったのだがとんでもない。これは予想を超えている。
欲しいと思った。本能で求めている気がする。どういう訳か自分の意志以外のところでもそう思っているようだ。
早速ロザナ嬢を通して声を掛ける。やはりアルコンツェ。全くすり寄ってこない。それどころか、拒絶すらされている。
寮の部屋に戻ると早速、父上宛に建国当初の資料が欲しいと手紙を書く。
この国は千年ほど昔に、太陽の精霊王と我が祖先、そしてアルコンツェ家の祖先で立ち上げた国であるらしい。
それよりも前には月の精霊王もいたらしいのだが、どういう訳か今は存在していない。あまりにも昔の事で何の資料もないのだが、もう一度、それ関連の本を読み直そうと思う。
ここにきて月の精霊王の愛し子が現れたということに何か意味があるのか。
一国を手中に出来るなどと言われる月の精霊王の愛し子の力が、本当はどんなものなのか、知りたいことはたくさんある。これからも狙われ続けるであろう彼女をこの手で守る事が出来るように。




