カフェでお茶会
アニエラ様とカフェテリアへ。学院では私たちのように通いの人もいれば、寮に入る人たちもいる。
そのおかげなのだろう。この学院にはカフェや食堂などがたくさんあり、お昼時でも満席で座れないという事はないようだ。
カフェテリアに着くとお姉様がすでに待っていた。
「ルーナ、アニエラ様、こっちよ」
無事に合流して、皆でケーキセットを頼む。熱い紅茶を一口飲むとほっと力が抜けた。多少なりとも緊張していたようだ。
「あの、よろしければ私のことは、アニエラとお呼びくださいませ。家格も上でロザナ様に至っては学年も上でいらっしゃいますので、様付けされるなんて恐れ多いです」
「それなら是非、アニエラと呼ばせていただきますわ。」
「ありがとうございます、嬉しいです。ルーナ様もどうかそのようにしていただけませんか?」
「じゃあアニエラもルーナと呼んでくれる?堅苦しい言葉遣いもなしね」
「もちろん、ルーナ」
自然と三人で微笑み合ってしまう。友達っていい。
「ならば私もルーナと呼ばせてもらっても?」
はっと後ろを振り返ると殿下が立っていた。リナルド様とサンドロ様もいる。
その後ろにはなにやらぞろぞろとご令嬢方が。せっかく混んでなくて良かったのに。
「嫌です」
「私のことはレオナルド、いやレオでいい」
「ご遠慮いたします」
「私もルーナちゃんて呼びたいなあ?」
「嫌ですが」
なんなの?この話を聞かないコンビは。
どう返せば通じるのだろうかと考えていると
「二人ともそこまでだよ。私の大事な宝にちょっかいかけないでね」
極上の笑みでお兄様がやってきた。お兄様の後ろにもなにやらぞろぞろといる。
どこぞの笛吹きなのかしら?
「お兄様」
「チッ、ダンテか」
「あーあ。おっかない人が来ちゃった」
どうしてこうなったのだろう?
気が付けば大きなテーブルへ移動して七人という大所帯になっている。いや、いつの間にか私の膝の上で隣のアニエラにお菓子を貰っているヴェントも入れると七人と一匹だ。
反対側の隣にはお兄様。向かいには殿下がいる。その隣にお姉様、リナルド様。サンドロ様はアニエラの隣だ。
それに周りがひしめき合っている……視線という名の圧が凄いんですけど。
満席になることはないはずなのに、今や満員御礼状態だ。
なんで皆、こんな中で平気でいられるの?
「それにしてもお兄様、壇上に上がっての微笑みはお止めくださいませ。出てきて挨拶もせず、何人ものご令嬢方を気絶させただけで終わりなんて、なんのための生徒会長ですか」
「だってね、ルーナが可愛らしい顔で私を見ているんだよ。私だって最初の挨拶くらい、ちゃんとこなそうとしていたさ。でも、そんなたまらない状況で微笑まずにいるなんてどんな苦行なの?」
「それならば致し方ありませんわね。壇上の上から天使を探し当てるなんて楽しそうですわね」
「ロザナも生徒会に入ったら経験できるかもよ。ロザナなら問題なく入れるだろうし。壇上で見るルーナはまた格別だよ。あんなにたくさんの生徒がいるにも関わらずルーナだけ光り輝いているからね、すぐにわかるんだ」
「ちょっと真剣に生徒会入り考えようかしら」
そんな2人にアニエラが言う。
「私もルーナのお話がありますの。今日ずっと、あちらこちらで視線を感じるのはなぜなのか?と不思議そうにしておりましたから、ルーナが美しいからだと教えたらキョトンとしてしまって……そのお顔がもう、本当に可愛らしかったですわ」
「おっ。アニエラ嬢もわかっているね」
「もちろんですわ。初めて見た時は女神様が舞い降りられたのだと思いましたもの」
馴染んでいる。身内びいきの話に遜色なく入っているアニエラって一体……ちょっとこれはいたたまれない。
恥ずかしくて俯いてしまう。ヴェントに穴でも掘ってもらおうかしら。
「アルコンツェ家の面々が、末娘に甘々だというのは有名だし、ダンテもよく妹の話をしていたから、ある程度の予想はしていたがこれは……シスコンっぷりが半端ないな」
「はは、本当にね。でもそう遠くない未来には、レオもその中に入っている気がするけど」
なんて笑って言っているリナルド様。もういいから止めて欲しい。
『穴、掘るか?』
ヴェントったら、どんな空気の読み方?
でも掘ってほしいかも。




