表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

俺の彼女はNTRクラッシャー

スカッとするお話にしてみました。

 私の名前は野口 言葉(のぐち ことは)、中小企業に勤めている只のOL、というわけではなく私には異能力という厄介な事この上ない能力を持っている。


 異能力と言っても別に対した能力ではない。人の心が聞こえてしまうとか、自分が感じたものを他者と共有できるとか、それぐらいのものだ。いや、もしかしたら割とすごいのかも。


 小さい頃から私にはそれがあって耳障りだった。今でこそどうにかなってはいるが、仕事をしている今でも耳には周りの人たちの心の声が鬱陶しいほど聞こえてくる。


「野口君、ちょっといいかな、実は先月頼んだ仕事なんだけど少し納期が早まってしまうんだ(明日は娘の誕生日だが何を買えばいいんだろうか?最近はお父さん嫌いとか言って相手にしてくれないからな)」


「分かりました部長、ちなみにどれくらい早くなるんですか?」


 極めて業務的な口調で話す。目の前に居るのは恰幅が良く、多少品格のある中年男性。我が社の部長である。


 しかし、真面目な話をしつつ思春期の娘さんの事を考えるとは何て微笑ましいのだろう。まあ、勿論口には出さないけれど。


 努めて冷静に、ぼろが出ないように。万が一、これが周りに知られると色々と面倒な事になってしまうから慎重に。


(………今日……宴会……かす)


 ん?いま何か不穏な言葉が聞こえたような?


 何となくさっきの心の声に違和感を感じた私は意識を集中させ、何を言っているのか聞き取ろうとする。


(だから、今日飲み会を開いて、そこで言葉の野郎を酔い潰させて教育してやるんだよ)


(ああ、それいいですね。最近あの子調子乗ってますし)


(そうだな、こっちが色々誘ったり、アドバイスしたりしてやってんのに生意気に口答えしてくるからな)


(そうそう、これはいわゆる先輩達からの愛のムチって奴だ)


(そうだな、しかもあいつ彼氏がいるんだって。いや――教育後が楽しみだな)


(あ、私他にあの子嫌ってる子連れてきますよ)


(そうか、今日の夜が待ち遠しいな)


 ……何なんだろう?さっきの内容は。教育っていうのは文字通りの意味ではなく、破廉恥な意味の事だよね。


 口答えとか、生意気とか、調子乗っているとか只のひがみだし、口答えは間違っていたのを教えてあげただけ、誘いもプライベートに踏み込んできそうだったから断っただけだし、私全く悪くないよね?っていうよりむしろ逆恨みだと思ううんだけど。


 彼、彼女らの計画はこうだった。まず最初に今日飲み会に私を誘う(参加者は全員私を快く思わない人達)。次に私に酒を浴びる程飲ませる。飲み過ぎて眠ってしまった私を介抱という名目で、ホテルへと連れていかれる。そして、教育(性的な)が行われる。


 うん、何をするかは理解できたけど、どうしてこんな事をするのか理解できない。思わずドン引きしてしまう程だ。


 多分誘われるんだろうな。正直言うと断りたい。でも、誘いを断ったらもっと面倒な事になりそうだしな。


「あ、野村君これ終わったのでお願いします」


 そんな考えを同時並行で進めつつも私は淡々とやるべき仕事をこなす。


 そして、どうすればいいのか考えながら仕事をしていたら、いつの間にか夜の8時になっていた。

 オフィスの窓から差し込む光は眩しい太陽ではなく、淡い光を放つ街灯と暗闇に。薄オレンジの光が妙に強調されている。


 ふう、と私は一息つく。やるべきことはやったし、そろそろいい時間だ。いつもなら帰っているのだが、今日はいつも通りともいかず


「言葉さん、今日の飲みに行かない?」


 制服を着崩し、髪を金髪に染め、耳にはピアスをしたチャラい感じの私の同期がそう誘ってきた。

 まあ、当然と言えば当然だ。さっき話は聞いていたし。


「そんなに時間は取れませんが、それでも大丈夫というのなら」


「オッケー、んじゃまあ参加ね。他にも来る人がいるから伝えとくね」


 言わずもがなこんな事を言っていた彼女の心の声はまあ、酷いものだった。見た目がチャラいからあまり違和感がないんだけど。


 こうして私は渋々飲み会に行くことになったのだ。




 飲み会の場所は全国チェーンの有名な居酒屋さんだった。


「それでは乾杯‼」


「「「「乾杯」」」」


 大きな声を張り上げて、私の上司の一人が飲み会を始めることを告げる。


 飲み会のメンバーは男5名、女(私も含めて)4名で行われている。


 周りの人達は次々に食べ物や飲み物を頼んでいき、せわしなく店員さん達がやって来ては戻るを繰り返す。


「言葉さんは何飲む?やっぱ生?」


「あ、じゃあウーロン茶をお願いします」


 その時、周りの空気が変わったような気がした。


 さっきまで優しそうな顔―尚、心の中は汚いのであしからず―をした同期の女性社員が、妙に圧を込めた声で私に


「いや、でも流石にここは宴会の席だからお酒飲んどかないとマズイと思いますよ」


「でも私酒癖悪いですし、お酒弱いですし、苦手ですし、あまりお酒に対して良く思えないんですよね」


 確かに私はここに来るとは言った。言ったは言ったが、別に彼、彼女らの計画に付き合うつもりはない。酒を飲まなければ良い話なのだから。


「いや、でも」


「二日酔いとかになったら明日の仕事の差支えになりますし」


 同期のアプローチを必死に阻止する私。飲んだら絶対歯止め聞かなくなるし、それに周りの奴らも煽るんだろうな。全員グルだし。


 尚、心の声では私の事を全員、侮辱したり、罵倒したり、文句を言っているようだった。


「すいません、ちょっとトイレに」


 思わず私はトイレへ逃げ込んだ。確かに相手が何を思っているかは分かるが、傷つくものは傷つく。


 どうしよう結構傷つく言葉がいっぱいあった。立ち直れるかな?いや立ち直らないとやばいし。


 そんなこんなで何とかメンタルケアを済ませて戻ると、飲み会は大いに盛り上がっていた。


 だけど、何か違和感があった。何かを隠しているような、悟らせたくないような、知られたくないような、そんな雰囲気わ私は感じた。


「ほら、言葉さん。ウーロン茶どうぞ」


「あ、ありがとう」


 成程。


 どうやらウーロン茶に睡眠薬を入れたようだ。私が酒を飲まないと知ってとうとう強硬手段に出やがったこの下種野郎達。


 勿論全員知っているんだろうな。どうしよう。飲まないといけないのかな?


 そんな時、向かい側にいる、酒のせいなのか酔いつぶれて寝ているおじさんを発見した。


 これだ‼私はこの状況を打破する方法を閃いた。


「ほら、言葉さん。ぐっと一杯」


「そうだぞ言葉君。さあ、イッキに」


「「「「イッキ、イッキ、イッキ、イッキ、イッキ、イッキ、イッキ、イッキ、イッキ」」」」


 鳴りやまないイッキコール。騒がしいが不思議な高揚感がある。イッキ飲みしなくちゃいけないんじゃないのか?なんて言う謎の使命感が私の中で湧き上がってくる。


 まずい、そろそろ効いてくる頃なんだけどこのままじゃあ私の方が危ないかもしれない。


 どうしよう、周りの目が血走っているし、心の声も何か過激なこと言っているし、怖い。仕方がない、ここは飲んでしまおうか。


 そうグラスに口をつけようとした瞬間。唐突にイッキコールが止んだ。さっきまでの騒がしさが嘘かのような沈黙。見ると周りの皆は眠っていた。


「よかった、私の異能力、ちゃんと発動したんだ」


 私の異能力には心の声を聞く以外に、他者との感覚を共有できるという能力がある。今回はその能力を使ったのだ。


 とはいっても起点が私でない。今回は向かい側で眠っているおじさんの「眠る」という感覚を起点に飲み会に来ていた全員を眠らした。


 勿論私は「眠る」という感覚は共有させない。そんな事をすれば後々どうなるか分からないし、怖い。


「さて、それじゃあ帰るか」


 帰り支度をし、店員さんに声を掛ける。


「すみませ―ん」




「ってな感じで昨日は割と大変だった」


「お前、朝食中に何ていう話のチョイスをするんだよ」


 爽やかな朝の陽ざしが差し込み、空いた窓からは優しく涼しい風が流れる気持ちのいいなか、彼女がネトラレ未遂の話をしてきた。


 どう考えても話のチョイスがおかしい。しかも集団でそんなことをしようだなんてドン引きだ。

「それで、大丈夫だったのか」


 言葉が作った目玉焼きを口にながら、若干の心配をする。昨日帰って来たときは何もなかったし、多分大丈夫だけどやっぱりそんなことがあったんなら心配だ。


 最悪未遂ではなく、もう事後かもしれないし。


「いや、まあネトラレ物も読むけどさ、やっぱあれ基本はバッドエンドだからそこまで好きにはなれないし」


「いや、そんなことされてないから」


 机を叩き、席を立ち、声を張り上げて、顔を赤くして必死に弁明する言葉。えっ、俺の彼女超かわいい。


「ただ全員眠らして、その後高い物を沢山頼んで、お金払わずお店を出ただけだから。別に忍が想像しているような事はされてない」


 あ、やっぱりコイツ俺の想像していたことを覗いたな。ふふふ、可愛い奴め。しかも仕返しが割とエグイんじゃないのか?


「うるさい」


「でもさ、どうすんだ会社。やっぱり昨日の事とかが原因で連中更に何かやらかすんじゃないのか?」


 それが俺にとっては気掛かりだった。確かに今回の騒動は難なく回避し、笑い話になっている。しかし、次はそうはいかないかもしれない。


「ああ、それはもう大丈夫だよ」


 そんな俺の心配を知ってか知らずなのか言葉は、何てことはないと言った口調でさらりとそう言った。


「だって私もう会社辞めたし」


「え?」


 ゑ?


 俺の頭は理解が追い付いていなかった。会社を辞めたのか、コイツ。え、マジ?本気?つまりコイツは今日から専業主婦にジョブチェンジ?


「あ、大丈夫だよ他に誘われている所あるし、就職には困らないよ。だいたい前々から止めたいと思っていたし。上司は人の手柄取って、自分のミスは擦り付ける奴だったし、周りはあんまり私の事快く思ってないみたいだし、昨日の事があったし」


 私怨に満ちた面差しで、次から次へと出てくる会社への愚痴。こいつも相当鬱憤が溜まっているようだった。今度外食にでも連れていくか。メイド喫茶とかでいいのかな?


「まあ、そういうのはいいから早くご飯食べて」


「ああ、分かった」


 なんやかんやあったけど、言葉が作った朝ご飯は美味しかった。今度ネトラレ物でも買いに行こうかな。


気になる点や、気に入った点など感想お願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ちょっと足りひんな 全員裸に剥いて全体写真撮って拡散してもよかったよな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ