俺がずっと片想いしている律子は、先生のことが好きらしい
「須藤先生、さよならー!」
「はい、さようなら」
「先生、じゃーねー!」
「はい、さよなら」
絵に描いたようなイケメンである須藤は、女子達からの黄色い声をサラッと受け流している。
クソッ、相変わらずいけ好かないやつだ。
「あ、あの……須藤先生」
「ん? 何だい」
っ!
そんな須藤のところに、俺がずっと片想いしている律子が、緊張した面持ちで近付いていった。
「あの、これ……、読んでください!」
「え?」
なっ!?
律子が須藤に差し出したのは、ハートのシールが貼られた可愛らしい封筒だった。
あ、あれはまさか……、ラブレター!?
「……」
須藤はラブレターを見つめながら、少しだけ困惑した表情を浮かべている。
――が、
「ありがとう。後でちゃんと読ませてもらうね」
すぐにいつもの余裕ぶった顔に戻ると、そのラブレターを受け取った。
はあああああああ!?!?
お前の立場で、そんなもの受け取っていいと思ってんのかッ!?
「っ! は、はい……。返事はいつでもいいので……」
律子は目を潤ませながら、口元を両手で覆った。
――その律子の顔を見た瞬間、俺の中で何かが弾けた。
「律子ッ!!」
「え?」
気付けば俺は律子の腕を掴んでいた。
「帰るぞッ!!」
俺は強引に律子の手を引いた。
「ちょ、ちょっと待ってよ慶介! 私、須藤先生と大事な話があるのよ!」
「うるせぇ!! 帰るったら帰るんだよ!!」
「何でよ!? 理由を言いなさいよ!」
「くっ……!」
こうなったらもう自棄だ。
「それは…………、お前が好きだからだよッ!」
「なっ!?」
途端、律子は頬を赤らめた。
「な、ななななな、そんな……、悪い冗談はやめてよ……」
「冗談なんかじゃねえよ! 俺は……、ずっと前からお前が好きだったんだ」
「……慶介」
律子はポーッとした顔で俺を見つめてきた。
須藤はそんな俺達の遣り取りを、口元に笑みを浮かべながら見ている。
チッ! とことんムカつく野郎だ。
「……行くぞ」
「う、うん……」
俺は再度律子の手を引いた。
今度は抵抗されなかった。
見てろよ須藤。
律子は絶対にお前には渡さねえからな。
「あらあら、どうかしたんですか須藤先生?」
「あ、園長先生。……いえ、どうやら僕は、慶介君に嫌われちゃってるみたいでして」
「え?……ああ、ふふふ、なるほど。慶介君は律子ちゃんが好きですもんね。三角関係ってやつですね」
「ハハハ、どうしたもんか困ってます」
「ふふ、それも保育士としての仕事の内ですよ。上手く対処してごらんなさい」
「はい。まあ、何とか頑張ります」
おわり
最近の若い子は、早熟なんやなぁ(すっとぼけ)。