悪役令嬢と青騎士の願い事は┄
初投稿です! どんな感じになるか、分かりませんが、エクミリアを生暖かく見守って頂きますようにしていきたい、と思います。
長くなりそうなので、最後まで読んでくれることを願っております。
夢を見ている。ゴポッゴポッと水がたくさん泡立ちながら、私は此処から墜ちていく。
私の意識だけを残して、何処までも墜ちていくように…
そして自分の意識は暗闇に墜ちて消えて無くなる。
意識が戻ると、私は今何処に居るのだろう? と一瞬だけ戸惑う。
嗚呼……と自分の部屋か。
私がそう認識した瞬間だった。扉の前で控え目なノックの音が聞こえる。
「お嬢様……起きていらっしゃいますか?」
「ええ、起きてるわ」
私がそう答えると、扉を開けて入ってくる。
「お嬢様おはようございます。」
「ええ。おはよう」
「………」
「………? 何……?」
「いえ、なんでもございません」
「…そう」
それきり、なんでもないように私の身の回りの世話をしていた。
⚪⚫⚪⚫⚪
私の身支度が終わり、満足したように美しいまでに笑顔を浮かべている。
………いつもの無表情は、どうした? と疑問符を浮かべるが、表情には出さずに声をかけることにした。
「……何か、いいことでもあったの?」
「……………。 いえ、何もありませんけど…」
「…そう」
「はい」
そして、また無表情に戻る。けれども、その瞳には暖かい眼差しが宿っていた。
私はそれに、戸惑いを覚える。何故? そんな眼差しを私に向ける?
分からない? 私のことを嫌っていたのではないか? 違うとでも云うのか?
戸惑いと混乱の中、思考の渦に呑み込まれそうになっていたが
「お嬢様? どうかしましたか?」
「……え?」
「…ですから、どうかしましたか? とお訊きしております。」
「ううん。なんでもないわ」
「心配してくれたの?」
「……しては、いけませんか?」
そう返事が返って来たので、驚いた表情をしてしまう私に、どう思ったのか
「お嬢様が、私のことを嫌っていることは知っています。」
「ですが、私はお嬢様のことは嫌いではありませんので」
「では失礼致します。」そう言い残し、優雅に一礼して部屋から出ていった。
私はその姿を呆然と見送って
「……え?」
言葉の意味を理解するけど、私はどうすればいいのか、戸惑いと困惑ばかりで、そう言えば私はまだ10才だったと、思い出す。
これは、私に起こった摩訶不思議な記憶とこれから起ころうと、している可能性を回避して、かつ破滅を現実にしないためにも、抗うことにした私の物語りである。
⚫⚪⚫⚪⚫⚪
さてさて、私のことを話す前に何故? こんな事になっているか、話そうと思う。
朝から雨模様で、数日前まで晴れやかな日が続いていた。にも拘らず、私は部屋にずっと籠り続きで、憂鬱すぎて鬱憤が溜まり、いつものように脱走して、遊び回りに出掛ける。
そもそもの間違いが、私を部屋に閉じ込めるのが悪い! まだ子供なのに……
それで、幼馴染みであり、友達の家に向かうことにした。
私は家に着くなり、挨拶をしたあと、居間に通される。いつものことなので気にしない。
「また遊びに来て下さって、ありがとうございます。少々お待ちください。」
「ご子息様を呼んで参りますので、それまでは」
「ええ、分かっていますわ。それまではいつも通りに過ごしております」
だから気にしないで。そう言うような表情と態度を出して、答えるみたいにしていると
「ふふ。分かっております」
そう言って、部屋から出ていく。
何分もかからずに、居間に戻って来たが、肝腎の人物がいない?
どうしたのか? と首を傾げる。すると
「申し訳ありませんが、今日の所はお引き取りくださいませ‼」
「……え?」
困惑と戸惑いに、目を白黒させて声を出した。
しかし、私に考えを与える暇がないかのように屋敷から追い出される。
訳が分からずに、とりあえず自分の屋敷に戻ることにした。
このときに、私は気づくべきだった。これが、私にとって前世を思い出す、切っ掛けになるとは思いも知らずに………
⚪⚫⚪⚫⚪⚫
屋敷に戻ることで、私の不在がバレず、部屋で大人しくしていたことになっていた。
だから、私は何故? あの屋敷から追い出されることになったのかを考えることにした。
けれども、考えても考えても、答えが出ることはなかった。
疑問は尽きず、私はその日から、用事以外は部屋から出てくることはなかった。
考え過ぎて、知恵熱が出る程に私は、追い詰められていたために……………
そして、最初の冒頭に戻ることなる。
そう、私は所謂転生者みたいだ‼ よくは分からないが、前世では私は、何処かの企業に勤めていたようだ。
私には欠落している部分があり、前世のことはあまりよくは分からない。というよりは、前世のことがあまりにも、非現実的だから………
だが、認めない訳にはいかない。だって、私には両方の記憶があるから………
私は、何処にでもいるOLだった。まあ趣味というか、薦められて始めた乙女ゲームをするようになって、私は始め何が楽しいのか分からなかったけれども、段々と進むうちに、非現実的なところが、いいと思うようになった。
それが、切っ掛けと言えばそうなのだが、自分自身もまさか、こんなにはまるとは思いもよらず、苦笑する。
そして何より、自分が一番はまった乙女ゲームの世界に転生するとは、思いもよらなかった。
だからこそ困っていたりする……
その乙女ゲームのタイトルが『星屑の欠片』と云われる。
今の私は、所謂悪役令嬢と云われている、ヒロインをイジメる? ものらしい。
何故疑問系かというと、この乙女ゲームはそういうものだった訳じゃないから…………だと思う
自信がある訳ではない。記憶が曖昧なところが多々あり、前世と今世がゴチャゴチャしていて整理が出来ているとは、思えずにいて、だから困惑している部分がある。
……自分で言ってて、なんだが私は頭のおなしな人格をしているように、思えるんだが?
気のせいか? …気のせいにしておこう。
何が言いたいかというと、その乙女ゲームは、悪役令嬢というものはなかったように思う。
まあ、私の記憶が曖昧で覚えていない可能性もあるが……? しかし、私が悪役令嬢に変わりはなく、三日後に目覚めてから先程の会話が出来上がる。
なんというか…………………嫌われてなかったのか? うむ。けっこう我が儘を出していたように思うのだが?
私の家は、公爵家で爵位も高く、甘やかされている自覚はなくはなかったように思う。
なんだろう? 自分がなんだかアホな子のように思えてならない。
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そんな訳で、今現在の私の進行は? というと先程出ていった侍女のメリクが、私の専属侍女です。そして、私の両親はそれぞれが、王宮に
仕えています。
父親のカインシャドウ·シグセルドは、騎士団長をして
母親のアイヴィア·シグセルドは、政務官の事務長をしている
私エクミリア·シグセルドは、公爵家令嬢·まだ一人っ子である
まだ生まれては、いないけど母親のお腹の中には、私に弟か妹が出来るようだ。
お腹はあまり出ていないが……
話しを戻すが、最初の冒頭で混乱し、戸惑っていた私だが、冷静になったところで…ふと思う
『私のことを嫌っている』
『お嬢様のことは嫌いではありません』
どういう意味?? これでは、まるで私がメリクをあまりよく思って、いないように聞こえるんだけど………
もしかして、記憶が戻る前は傲慢なところがあったのだろうか? それとも、私自身が高飛車なお嬢様だったのだろうか?
うむ。よく解らん! し、かといってこのままでは、いけないってのはわかる。
今一度私自身の記憶の整理をする必要があるようだ‼
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まずは、私の幼馴染みが何故突然私の訪問を拒絶したのか? と考えてみれば、私に嫌気がした………? でもなんで突然? 本人ではなく父親の都合上だろうか?
そうだとすると、私の幼馴染みは攻略対象者なのだろうか? それだとすると、やはり私は悪役令嬢になって、しまうのだろうか?
………嫌だ。……嫌われてもいいが……いやよくはないが…………
記憶が曖昧だと、色々考えることと調べることがあって、大変であるなと他人事のように感じてしまう。
事実上そうなのだろうが? それはそれで、やはり私自身だと自分で思っていない可能性もある。…記憶の不確定要素は早々に破棄したい。
色々と不安だらけなんだけど……? 頑張るしかないんだよね?
それから、私は恥ずかしくない令嬢になるべくマナーや礼儀作法などを再度学び直すつもりでお母様に、お願い申し上げたら、驚いた顔をしていたけれど、快く引き受けてくれた。
⚫⚪⚫⚪⚫
あの日から、幼馴染みとは会えずじまいで、何度か休みの時に尋ねるけど、何かと理由を述べて私を帰らそうとします。
諦めずに尋ね続けましたとも! そうして、ようやっと屋敷の中に入れてもらいました。
そしてそのまま、客間を通って屋敷の主の執務室の扉の前に到着した。
コンコンコン
「誰だ?」
「旦那様、エクミリア様をお連れ致しました」
「……そうか。分かった。」
「入れ」
「…はい」
ガチャと、ドアノブを開けて先に家令が入り次に私が入ると、そこには壮年な男性が執務机に座って、此方を見つめている。
「お久しぶりです。叔父様」
「……ああ。久しぶりだな? それで? 何用かな?」
「まどろっこしいことは嫌いですので、単刀直入にお訊き致しますけど、いいでしょうか?」
「ああ。私で、答えられることなら…」
言質をとって、一度深呼吸してから、私は聞いた。
「アンバーには会えないのでしょうか?」
私が、そう答えて聞くと、苦悶の表情を浮かべたものの、すぐに元の表情に戻り
「今すぐに、会うことは出来ない!!」
「それは、何故か? を聞いてもよろしいでしょうか? 納得出来る理由がなければ、私は帰りませんので」
そう憮然と、私が答えると呆気にとられたような表情を浮かべたと、思ったら次は、急に笑い出した。
私は、ムッとした表情を浮かべて、相手を睨むようにしていたら
「フッ……クククッ…アハハハハハ」
「フフッ。すっ、済まない。クク」
「………そうか。ククッ理由を聞かないと帰らんか?」
「はい。理由を聞かせてくれますか?」
私がそういうと、今まで笑っていたのが嘘のように、真剣な表情を浮かべて、私を見つめた。
その沈黙の中が長い時間のように、私には感じられて、でも時間にしたら、1~2分くらいだったと思う。
重い溜め息を吐き出すと、私を見詰めた。
「はあ~、わかった」
「…………本当? ですか?」
「ああ。どちらにしても、今すぐに会うことは出来ないが? それでもいいかな?」
「はい‼ 会えない理由を教えてくだされば、今の所は私は満足することにします。」
「フフ……そうか」
静かに、でもほんの少しだけ、悲しげな表情を浮かべて笑う、ヒュージット様の顔に私は疑問に思う。
⚪⚫⚪⚫⚪
そんな疑惑の私の何故? とアンバーに会うことが出来ない理由? それは私が思っている異常に、深刻で、国家機密なのでは? と思う内容と衝撃に私は驚き、アンバーは大丈夫なのか? そう、問いかけると、静かに首を横に振られました。
「今の所アンバーは、落ち着いてはいるが、いつ発作がおきるか…」
「……………………………そんなに? ですか?」
「ああ。お前の父親からは、関わらせるな⁉」
「………そう言われていたがな? 俺はどっちみち君は、関わると思っていたかな?」
「そ、それは、何故でしょうか?」
「フム。なんでだと思う?」
そう私に言われ、微笑みながらそんなことを問いかける。頬杖をつき、私を見つめ、ヒュージット様はどこか子供みたいな表情を浮かべ、私の答えを待っている。
「……わかりません。わかりませんが、私は、お父様に従うことは出来ません‼」
「………」
「フフッ。……ふーん、良いんじゃない?」
穏やかな笑顔で、ヒュージット様は私に、言いました。
そして、とても素敵な黒い笑顔を浮かべ、無理に従うことはないよ? だって、私の息子を救いたいだけ、なんだからね♪
とウインクを私に向けられました
あまりの軽さに私は気が抜けてしまい。から笑いを浮かべてしまいました。
それから、私はヒュージット様にどうすれば、いいかを相談して、自分の屋敷に帰りました。
⚫⚪⚫⚪⚫
暗い苦しい寒い冷たい
苦しい暗い冷たい寒い助けて憎い
ここから、タスケテホシイ……
でもダレモ、タスケテ、クレナイ
ダレモ……
ボクノコトナンカ……
ちがう! ちがう! 違う!!
ぼくを気にかけてくれる人は、いる!
あの子が…
いや、僕を心配する両親が、いるんだ‼
あの子も心配するかな? してくれるかな?
してくれたら、僕は嬉しい。
そしたら、そしたら、僕はあの子の為に
何でもして、あげる。あの子の幸せな顔をまっすぐに見て僕も、あの子の幸せを見たいから!
『それは、叶わぬ夢と言うものだ⁉』
『何故ならば、私と一緒に此処に、ズットイルンダカラネ?』
『………い、イヤ、ダ』
『イヤだ! 僕は、僕は、あの子の所に、両親の所に帰るんだ!』
そう叫び僕は、暗闇の中を闇雲に走った。
走り続けて、ふと後ろを振り返ると
黒い靄が渦巻いていて、僕のほうへと、向かってくる。
それを見たあとでゾワッとしてしまって
躓きながらも、走って、走って、何処までも走り続けて、見えない出口に絶望しそうで、泣きそうになる。
その度に、あの子の声が聞こえてくるようなそんな気がする。
だから僕は決して諦めない。
最後まで足掻き続けよう。
あの子が、僕を呼び続けてくれる人だから…
だから
早く僕をここから
連れ出して! 僕が、あの黒い靄に纏い憑かれる前に……
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪
屋敷に帰ると、家族総出に屋敷中の侍女や執事達がお出迎えという、ある種の圧を感じる。
そう、私は盛大に屋敷から出たことがバレて
笑顔でおもてなしを受けている。
これは恐い。恐怖を感じる。嵐の前の静けさのような静寂の安らぎのような恐怖を感じる。
ビクビクと、父様達のほうを向くと
優しい眼差しを向けられました。
アカン!! と私は思いました。これは、このあとに待ち受けている、と言うか、説教が予想出来るから、私は甘んじて受けないといけない………
そう顔が引きつるのも、仕方ないと思って頂きたい。心から反省し、心配をかけたことは申し訳なく思うが……?
よ、よし‼
「ご、ごめんな「お帰り、エミィ」」
「ほえ?」
気合いを入れてから、勢いよく頭を下げて、謝ろうと口を開くが、それによりも早くに、私の言葉を被せるように、言われてしまい
変な声が出ました。
すると、両親より後ろの方々が、何やら身悶えておりました。
私は?マークを浮かべてから、そして両親を見上げて首を傾げると
「…………これは中々にすごい破壊力だな。」
「フフ、そうですね?」
「だが、やはり止められんようだな⁉」
「仕方ありませんわ。昔の貴方がそうだったように……ね?」
「うぐっ。そ、それを言われるとは、思わなかったが…」
「あらあら、ウフフ」
なんだろう? 今ここに夫婦仲を見せつけられているような気がする。
私の気のせい?
そうこのときの私は、話の内容より夫婦仲のことのほうが、気になっていました。
夫婦仲が良かったことに………………あれ?
前から仲良かった? アレレ?
ま、まさか!!! 私はとてつもない誤解をしていることに、なるのではないか?
ハッ!!
混同しすぎてて、大事なこと大切なことを忘れてたんだ。
「奥様に旦那様。そろそろ、その辺にして頂きたいのですが?」
「そうですよー! お嬢様が呆れていらっしゃてますよ?」
と家令に侍女達がお父様とお母様に言い募ってました。
その台詞に、二人はハッ‼ とするように私を見ました。
そして困ったような照れてしまったような、そんな顔をしていました。
「ゴホン。えー、まーその。なんだ…」
「あなた」
「うっ。は~~~」
「エミィ。黙って屋敷を出たことは、今は不問にするが、行って来たのだろう?」
そして知ったのだろう? そう私に尋ねているような気がしました。
その通りで、誤魔化すことを許さないような顔でじっと、私を見つめていました。
だから、私はコクンと、首を縦に振りました。
それを見て、私の頭を人撫でして、深く深く溜め息を吐き出しました。
あれから、数日の月日が流れて、今私は幼馴染みのために、薬の調合をしています。
何度か試作品を幼馴染みに試してみたけど、効果的な成果は、あまり期待出来なかった……
そして今も、私は薬の調合をしている。
「えっと、前はアレを入れてたから…」
「今回は『リオルジャ』を入れてみようと、思うんだけど? どう思う?」
「そうですね。私としましては、『リオルジャ』は確かに良いとは思いますが……」
「前の『空葉の果実』と別のものとを加えてみるのも良いのではないか? 思われるが?」
「嫌々『樟葉の実』でも、良いデータがあると思いますよ?」
とそれぞれに、意見を述べて私にどれを入れるのかを聞いてくる。
私は少し考えて、だったら『樟葉の実』と『空葉の果実』の2つを入れてみようと思い
私に意見をくれた、夲月とゲンジャに聞いてみる!
「この2つを入れてみようと思うんだけど、二人はどう思う?」
「………………」
「………………」
「確かに、これだったら、良い結果が得られるかも知れないが…?」
「……あと1つ、入れたほうが良いと思いますよ? そのほうが、副作用が軽くなります!」
「だな? 『樟葉の実』と『リオルジャ』だと、副作用のほうを気にしないといけなくなるからね?」
「………そうね。確に⁉」
そのあと、色々と意見を入れて、あと1つのもののことを話し合い、副作用の軽減・軽量を目標に落ち着いた。
⚫⚫⚫⚪⚪⚫
あれから、どのくらい、経ったのだろう?
何度か、黒い靄? みたいなものが、襲ってきたけど……
僕は、なんとか逃げ延びて、少しだけ疲れた。
これを何度繰り返したら、いいのかな?
モウ、アキラメタホウガ
イイノカナ?
『そうそう、アキラメタホウガいい。』
『フフ、だからね? 早く堕ちてオイデ?』
ゾクッと思うほど、近くから聞こえ振り返ると意外なほどに近くて驚きながら、妖艶な姿をした人物を凝視していたら、その女性だろう人が僕を見下ろして、僕の頬を撫でる。
『ネェ? 早くココから、抜け出したいのよね?』
その言葉にコクンと頷けば、僕にこう囁く
『フフフ。だったら簡単よ? 私にすべてを預ければ、イインダモノ……ネ?』
『簡単でしょ?』
そう言って、僕に耳元で囁くように美しい声で僕を誘惑する。
グラグラと揺れ動く心
誘惑に負けそうになる僕に、さらにその女性はこう言ってきた。
『大丈夫よ⁉ 私にすべて任せれば、いい』
『心配いらないわ。私はあなたの味方だからね?』
フフっと、僕の頬を触りながら妖艶に微笑んだあとで、少し距離を置いて
そして僕に手を差し出してきたのを僕は、黙ってそれを見つめていた。
頭がボーっとしていて、彼女の手を取れば、あの黒い靄から逃げずに済むかもしれない……
『さあ、あとは貴方が私の手を掴めばイイワ? 安心しなさい、私が貴方を守ってあげるから』
さあ手を………………………………そんなときだ‼
❰ダメーーーーーーーーッ❱
ハッとして、その女性から距離をとって、辺りをキョロキョロと見回してみるが
誰もおらず、首を傾げてみたが、あの声で僕はあの子の声だ! と唐突にわかって、嬉しくて口元が笑みを浮かべていた。
「どうやら、僕は貴女の手を取る必要はないようです! だから貴女からの申し出も守ってもらう必要もない!?」
「貴女が誰だろうと。僕は貴女の手を取ることはないでしょう。あの子が、僕を待ってるからね? 僕があの子を護るって今、決めたけど……」
だから貴女の手は、取らない! とそう微笑みを込めて向ける、黒い靄を纏った妖艶の魔女に言った。
『忌々しい⁉ 何処まで私の邪魔をすれば、いい‼ フフ、フフフ』
『だったらだったら、フフフ、あの子と言ったわよね? だったら私自身でもイイ? ってことよね?』
支離滅裂なことを言ってのける女性に僕は首を横に振る。
『そう……なら、私の為に壊れて乱れて魅せて? 私を愉しませて?』
『フフ、それとも……淫らに快楽でもしてみてもイイわよ?』
どう? と微笑みながら妖艶に黒い靄を纏った魔女は言った。
僕は引き攣るような顔をしていたかもしれないけど、魔女は僕に一歩ずつ近づいて、フフフと口元に笑みを浮かべながら嗤い、僕は魔女が一歩近づくにつれて後退りを繰り返し
僕の一歩と魔女の一歩は違っても、仕方ないがそれでも、僕は魔女を睨みながら、どうすればこの状況を打開出来るかを考え、思案する
僕は一つの賭けをすることにした。あの子が、頑張っているように、僕も頑張ろうって思ったから‼
⚪⚪⚪⚪⚫⚪⚫⚪
試作品が完成して、私は幼馴染みのアンバーの元に急ぎたいため馬車に乗り込み向かいました。
ヒュージット様が、治めていらっしゃる屋敷に到着し、馬車から降りて入り口の門には、いつも通りの執事が笑みを浮かべながら、私を待っていた。
私は苦笑を浮かべ、今日きたことを言うと、やっぱり最高の笑みを浮かべて、屋敷の中に招き入れました。
そしてすぐに、アンバーの部屋へと向かっている途中の廊下で、屋敷の主であるヒュージット様が見えました。
だから私は挨拶をしようと、歩みを速めていたら、向こうも私に気付いて少し足早にしながらも微笑んで、近づいて見てみると少しの疲労が窺えた。
「あの、大丈夫ですか? あまり顔色がよろしくないように、見えますけど…?」
「あ、ああ。ハハ。そんなに疲れて見えるかい?」
「はい。あ、あの、今日も完成品が出来ましたので、試してみてもよろしいでしょうか?」
「ああ。よろしく頼む………その前に少しいいだろうか?」
「……? はい、大丈夫です」
「ほっ。よかった。じゃあ、客室に行こう?」
客室に到着すると、ヒュージット様は侍女に飲み物を頼み
「……済まないね? 僕も早く息子の回復を願ってはいるんだが…」
「なにか、あるんですね?」
「…………ああ」
口調が弱いながらも、深いタメ息を吐くとヒュージット様は、私を見て弱ったような微笑を浮かべました。
それから、私とヒュージット様は少しだけお話をしてから、ヒュージット様の疲労の原因が判明して既存のポーションを持っていたので、渡してから、私は再度アンバーの部屋へと向かいました。
アンバーの部屋に到着して、部屋の中に入り、そしてヒュージット様から言われたことを思い出す。
『あまりいい情報というわけではないが…』
『それでもいいなら、私の話を聞くかい?』
『聞かせてくださるのなら』
『フフ…わかった。なら、言おうか! つい数刻前の出来事だ』
私が来る少し前、ヒュージット様はいつも通り仕事を終えるとアンバーの部屋で過ごすことが、日課になりつつあるものの、今日の日はなにかが、違ったらしくアンバーが呻き声を上げ苦しんでいた。
ヒュージット様は、それに驚きアンバーに近づくことにしたらしいけど、アンバーの周りがなにか見えない黒いもので阻まれてしまったらしい。
まるでアンバーに近づかせないようにしているようだ! とヒュージット様は仰っていたから結界のような類いのものだろうとのこと。
確かにアンバーの周りには、なにか得体のしれない黒い靄が纏わりついているように見える。
私が部屋に入ったときは、薄っすらと見えていた感じだったものが、段々と色が濃くなり、アンバーをまるで守っているように、見えるけれど私には嫌な予感がしてきて
足早にアンバーに近づきながら、あと少しで寝室に近づけると、思うところで見えない黒い結界で阻まれ弾かれて先に進めず、その間にもアンバーの周りには、刻一刻と黒い靄が拡がりつつ私は焦りだけが募る。
その黒い靄の結界に触れるが、ビリッと電撃が走り手を引いたときだった……
アンバーが呻きながら、私に手を差し出してくれているように見えた瞬間、私は考えることよりも行動を起こして、黒い結界の中を突き進むことに何の躊躇いもなく入りました。
その後ろでは、ヒュージット様と執事の人がなにか言っていたが、私には当然の如く聞こえていなかった!
黒い結界の中に入ると、ビリビリとした電撃に少しの旋風が肌を傷つけるけれど、私は気にせずに突き進む。
そして、アンバーの近くまできて、アンバーの手を握る。その間にも私を傷つけようと、している意志のようなものを感じていたが、ふいに手を握り返され、私は弾かれたようにアンバーの顔色を窺うと小さいながらに、口元が動いてなにかを言っていたので、口元に近づくと楽になる? と言っていたから、私は思わず耳元で
「ダメーーーーーッ」
と叫んでいた。
それから、月日が経ち
私とアンバーは学園に通うことが出来るまでになった
その間は、私はずっとアンバーの所に通い詰めたり、引き込もって薬の研究をしたり、して忙しくて攻略対象者達のことをすっかり忘れて、今日までになります
もうお分かりのことと、思いますが、はいそうです。現実逃避しています
はぁ~。これから通う学園で出会うであろう、攻略対象者達のことを考えると気が滅入る
「はぁ」
「……大丈夫?」
心配そうに声をかけてくれるアンバーに、苦笑いをして応える
「うん。まあいまの所は大丈夫かな?」
「本当に? 無理無茶してたら、僕怒るからね? たとえ僕のための薬の研究でも程ほどに! わかった?」
アンバーにそう言われてしまい、グッと息を止めてアンバーから目を逸らす
「ミク? わかってる?」
ビクッ
「も、モチロン! わかってますよ!」
「フ~ン。まあイイケド」
そうアンバーからの声を聞いて、ほっとして、チラッとアンバーのほうに向くと、極上の笑顔をしながらも目がまったく笑っていなかった
こ、怖い……
うん。私のこれからの願いごとは、アンバーの怒りを出来るだけ避けよう
そして攻略対象者達とも避けよう
だって私は
一応はこれで終わりです。でも、要望する方がいれば連載することにしたいと思います。
長々とここまで読んで頂きまして、ありがとうございました。