13話目
自由都市ローレルの城壁は5メートル以上あるがクロには意味がないと言わんばかりに軽々と飛び越え街道を西へと急ぐ。
「クロ!もっとだ!もっとスピードをかげろ!」
「ガウウウ!!」
「風が邪魔か!なら風魔法[ウィンドプロテクション]」
風の魔法でクロの前に壁を作り出し、風の影響を外に逃すようにすると、クロのスピードが更に上がる。
「ガゥ!」
「見えた!」
西の街道約10キロの場所に大型の馬車を発見した。通常だとこの時間に移動する馬車など考えられない為、メリル達を攫った犯人と考えていいだろう。
「うまくいったな、ここまでくればもう追ってはこれまい。このまま海岸に停泊している船までいくぞ、警戒を怠るな」
「「「はっ!」」」
「隊長!目の前にガキとウルフがいます!」
「なんだと?!構わん!轢き殺せ!」
御者をしていた男が馬にムチを打ち
馬車を加速させる。
「クロ、威嚇で馬を止めろ」
「ガゥ、ガァルゥルルルル!!」
威嚇を受け馬が急停止すると同時に馬車も止まってしまう。
「な、なんだ?!おい!動け!」
動かなくなってしまった馬にムチを入れるが馬はクロの威嚇で一歩も動けない。
「貴様、何者だ」
馬車から1人の黒ずくめの男が降りてきて
ウォードに問うてきた。
「ひとつ聞いといてやる、素直に返せば殺さないでやる、抵抗するなら覚悟を決めろ」
ウォードが冷たく言い放つが黒ずくめの男は鼻で笑うかのごとくナイフを構えた。
「よく追いかけて来れたと褒めてやろう。だがこちらには人質がいるという事を忘れているぞ」
男がスッと手をあげると馬車からさらに男が2人出てきた。その手の中にはメリルとシスターが抱えられ首筋にナイフを当てられている状態だ。
「お前達は勘違いしているぞ?人質は生きているからこそ役に立つんだ。それを目の前で殺すと脅している、それは自分の首にナイフを当てているのと同じだ」
「戯言を・・・おい!動くと本当に殺すぞ!」
男から3メートル、人質からは5メートルも離れている位置でウォードは腰のショートソードの柄に手を当て抜かずに構えた。
「そんな場所から何ができるというのだ、動くと殺してしまうぞ?」
「死ぬのはお前達だ」
ウォードの体が一瞬ブレるのと同時に人質を抱えていた2人の首が飛ぶ。
男は何が起きたかわからず後ろからドサッと音がしたために振り返ると仲間の首が転がっているのに気がつき驚愕した。
「なっ!何をした?!」
「ここから剣撃で殺しただけだ、次はお前の番だ」
「な、なんだと?!」
クソッ!クソッ!クソッ!!
なんだこのバケモノは!
なんでこんな奴がこんな所にいやがる?!
あと少しで組織の幹部になれたものを
こんなバケモノと最後に出会うなんて!
なんとか切り抜けて逃げなくては!
男は後ろに駆け出すとメリルをもう一度人質にするために手を伸ばすと腕が急に無くなった。
「え?はっ?!がぁぁあああ腕ガァあああああぐぁああああ」
「やらせると思うか?」
そう、男の動きを見てウォードが男の右腕を切り飛ばしたのだ。
「後悔しながら死ね」
動けないように倒れている男の腹を足で踏み首を落とそうと振りかぶると男が泣き叫ぶ
「た、たのむ!!助けてくれ!なんでもする、なんでもするから殺さないでくれ!」
「お前達は俺の友達を攫った。それだけで殺す価値がある。今更謝っても遅いんだよ」
腕に力を込めて振り下ろす
その時
「ウォードさん!!ダメです!!」
その声を聞いて首の皮1枚の所で剣が止まった。
「シスター!!」
その声はシスターのものだった。
犯人達に眠らされていたがシスターだけは耐性があった為に眼が覚めるのが早かったようだ。だがまだ立ち上がる事ができないでおり、這いつくばりながらウォードを止める。
「どうしてだシスター!こいつはシスター達を攫った張本人だぞ!それを殺して何がダメなんだよ?!」
「ダ、ダメです!殺しては何も解決しません!憎しみは何も生まないのです!」
シスターは涙を流しながら殺すなと言う
もしこのままウォードが助けに来なかったら自分がどうなっていたかもわからないのにだ。
ウォードは迷っていた。このまま生かしておいてもしょうがない男をどうするか。シスターの言葉通りにしたとしてもまた犯罪に手を染めないとは言い難い、本来ならば殺しておくべきだろう。
「はぁ、シスターに感謝するんだな」
そう言うと剣を納め男の顔を1発殴り気絶させた。
「1発ぐらいはいいでしょ?シスター」
やっと本来の顔に戻ったウォードを見てホッとしたようにまた倒れたてしまったシスターだった。
、、、、、、、、、、、、、、、、、
「うんん・・・こ、ここは?」
「目が覚めた?」
「ウォードさん!あれからどうしたのですか?!」
「落ち着いてよ、メリルも子供達もみんな無事だよ。今は犯人の馬車で街に向かっている所、もう少しで城壁が見えてくる頃だね」
「そうですか・・・はっ犯人は?!」
「先に殺しちゃった2人は首だけ持ってきた。最後の1人は腕だけ止血して動けないように縛って連れてきたよ。まったく、殺しちゃった方が楽なのに・・・」
「ウォードさん!!まだそんな事を言ってるんですか?!いいですか?誰彼構わず殺して解決などもってのほかです!何事も暴力だけで解決するなどあってはならないのです!そもそもウォードさんは強いのはわかっているのですk・・・」
「あーあーあーもうわかったってば!そんなに怒らなくてもいいじゃん」
「いいえ!!わかっていません!いいですか?ウォードさn・・・」
「ガウ!!」
シスターが何か言いかけたがクロがその言葉を遮り声を出すと前から馬に乗った黒騎士団の面々が見えてきた。
「おぉーーい!!ウォードくーーん!」
「グリムさん!グランツさんも!来てくれたんだ!」
「よかったぁ〜!みんな無事みたいだね、シスターも無事なようで安心しました」
「犯人は?」
グランツがウォードに聞いて来たので大筋だけを説明し詳しくは帰ったらということになった。
ローレルの城門前まで来ると門兵がすぐに駆けつけて来てカイゼルにも知らせてくれた。
中に入ると街の住民でごった返しておりそこかしこからシスターや子供達が助かった事を喜んでくれた。そこに1台の馬車が乗り付けると中からカイゼルとミレーヌ、エリアルが出て来た。
「カイゼル公爵様!みんな無事で帰って来ましたよ!
ウォードが笑いながらカイゼルに報告するとカイゼルはグランツを見ると頷きグランツは握り拳を上げてウォードに振り下ろすとゴチンといい音がなった。
「いってぇぇぇええ!!!グランツさんいきなり何するんだよ!!」
「ウォード!無茶をしおって!!どんなに心配したかわかっているのか!!」
カイゼルがウォードに向かって怒るとミレーヌが優しく抱きしめてくれた。
「あぁ無事で本当によかったわ。もう心配させないで」
「ウォード様!ご無事でなによりですわ!」
エリアルもウォードの手を取り優しく無事を喜んでくれた。
「これ!ミレーヌもエリアルも今は私がウォードを叱っているのだ!邪魔をするんじゃない!」
「こうして無事に帰って来てくれたのです。もういいではありませんか」
「ならん!こういう時こそしっかり言っておかねばまた無茶をするに決まっておるだろい!」
「お父様、シスターや子供達も無事なようですしここは屋敷に戻ってからでも遅くはありませんわ」
ミレーヌもエリアルも庇ってくれたがカイゼルも本当に心配していたからこそ叱ってくれているのだ。
「心配かけてごめんなさい。それとありがとう」
その言葉を聞いてカイゼルはもう叱ることはなかった。




