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揚足裁判  作者: 花南
第一章
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候補者達

「ついにこの日がやってきたか……」

 放課後の生徒会室の窓から旧生徒会長はグラウンドを眺めた。生徒達がまばらに帰っていく姿や運動部が活動の準備をしている。ここから眺める景色も最後かと思うと少しだけ感傷的な気分になるものだ。というのも、今日で今の生徒会は旧生徒会になり、明日からは生徒会選挙が始まるのである。会長は三年生。受験生の彼はもう引退して自分のことに専念せねばならない。だから最後なのだ。

「いい加減私達の時代は終わったということかしら?」

 ふと後ろから声をかけられて会長は振り返った。

 そこにはゴージャスな縦ロールした茶髪の少女が立っている。本格的なメイクをした華やかな印象の美少女だ。

「千早さん、そこにいたのか。脅かさないでくれ」

「あら私のことはシュガーかハニーと呼んでちょうだい。とりあえず食べ物がいいわ。ずいぶんと熱心に眺めていたのね。部屋に入ってくるのにも気づかなかったなんて」

 旧副会長、秋野千早あきのちはや)は隣まで歩いてくると会長の顔を横目でちらりと見た。会長は知っている。この千早が自分がどの角度で見られるのが一番かわいいかをいつも気にしているということを。

「それで……どうするの? これから」

「どうするもこうするも無いよ。次の会長は俺らが決めるんじゃあない」

 自分はせいぜい今まで学校のために使ってきたエネルギーを自分に傾ける、それでいいじゃないか。そう思って微笑みかけると千早はにこりと笑って

「でも誘導することは……できるわよね? 任せて、私にはできるわ。今までにないくらい素晴らしい操り人形を作ってみせる。楽しみにしててね?」

 そう言うと不意をついて会長にキスをし、小走りで生徒会室を後にしていった。あとに残された会長は唇を親指で拭うと一人呟いた。

「これからどうするか……か」

 そんなことは決まっていた。これで仕事は終わりだと思っていたが、しかし彼女の思惑通りに物事を進ませるわけにはいかないのだ。乾いた唇を舌でぺろりと舐めて濡らす。

「……勝手に動く人形を用意するのが俺の役目だ」

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