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オルテンシアの瞳  作者: 香葉
第1章 目覚めたら、魔王でした・・・
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(8)魔族 ── それぞれの思惑 by キアラン・サヴィン

今日は三度目投稿してます。これを筆がのるっていうのでしょうか?

五大爵キアラン・サヴィンは気鋭の軍師です。シセロもこれから活躍してくれる筈です。(きっと)

── 楽しんで頂ければ幸いです。

 


 暁の瞳 ─── それは魔王の証。


 この目の前にいる、幼い姫は魔王と呼ぶにはまだ儚い弱き赤子の様なもの。


 しかし幼いながらも、少し達観しすぎている瞳は揺らぐことなく、我らを見定めようとしている。我らが魔王の器か見定めようとしているように。


 前魔王ほど愚かなものは、いなかった。私は前魔王とその前の魔王しか知らないが、なるべくしてなった魔王ではなかったことはたしかだ。


 簒奪者、前魔王アルティオスはそのとき魔王であった我がサヴィン家出身だった叔父マグナスを弑してその座に就いた。大義名分は馬鹿馬鹿しい理由で、魔王が地方視察中に討伐隊を編成した。


 理由は『魔王の(オーブ)がアルティオスを選んだから』


 アルティオスは無理矢理マグナスから魔王の(オーブ)を抜き取り、自分のものとし、マグナスを殺害した。


 国の暗部ナバレ家の暗殺部隊をも欺く巧妙さで、魔王を守るはずの近衛隊、警護の護衛も全滅した。そこに我が父と母も含まれていたことが何より悔しい。



 魔王の(オーブ)が選んだ者が魔王となる ── それは、世界が定めた掟。



 その時世界球(ユニベール)の動きに変化や異常はなかった。

 その時、世界球(ユニベール)の間は天界にあり、外交を担う私自身が、この目で実物を見ている。我が国の世界球(ユニベール)の間はその投射された映像に過ぎない。



 (オーブ)が選んだのなら、我々五大爵は魔王に従わねばならない。



 いつしか我ら兄弟、残されたサヴィン家は魔王アルティオスに復讐する機会を待つようになった。


 防衛を受け持つ我ら兄弟は、他の種族からの小競り合いのような戦を毎年のように受けていた。特にシセロは軍神と呼ばれるほど戦闘能力が高い。我ら兄弟は魔王のためにせいぜい負けない戦いをし、相手を叩き潰すことはしないで退くを繰り返した。要するに時間稼ぎだ。


 いずれ魔王(アルティオス)は自ら病み、朽ち果てるだろう、と予言者マハが告げたこともあってその時が訪れるのを今か今かと待っていた。長命の我ら魔族には長いようであり、相当な時は流れたといえる。


 病んで、混乱し始めた我がペルラに、天使や竜が攻め込んで来た。


 世界の定めた均衡を破る行為だ。力ある魔族、天使、竜の3種族は世界の均衡を保つために、お互いの国へ争いなどの不可侵を定められている。それ以外の種族への進攻は均衡を破らなければ多少許される。


 天使と竜はもともと我ら魔族を敵対視していることは確かであった。奴らがその機会を逃すことはない。全軍を動かす総攻撃で、戦いを仕掛けてきた。

 戦況は我ら魔王軍が押されていた。それは魔王軍の士気が上がっていなかったこともある。


 そして真の魔王、生まれながらの魔王がナバレ家で誕生したとの報せが、天使と竜の連合軍と戦う我らに届く。


 そこには父である不老不死者(ノスフェラトゥ)アレキサンダー・ナバレ侯爵もいた。


「でかした、でも、ふふふ、魔王とはね。」そして侯爵は私を視線で射ぬくようにチラッと見てフッと笑ったのだ。


 確かに私はこの時を待っていた。魔王の(オーブ)が次の魔王を選ぶ時を待っていた。しかし魔王が文字どおり生まれるとは思っていなかった。あの視線で、まるで魔王が誕生するとわかっていたかのような全て見透かすナバレ侯爵の微笑に、寒気を覚えたのは確かだ。


『これで勝利は我ら魔族のものだ。世界が、魔王の(オーブ)が認めた真の魔王が誕生した!』


 戦場に響き渡る魔王軍総司令官アレキサンダー・ナバレ侯爵、生きる伝説不老不死者(ノスフェラトゥ)の声が魔術を使って大音量で放たれたのだ。


 押されぎみだった戦況は逆転し、魔王軍が盛り返し始めた。


 そして戦況は我が国ペルラに傾き、勝利を収めた。



 勝利をもたらしたきっかけとなった魔王誕生の報せ ── あれから6年だ。


 身体が弱いと言って今まで我らの前に姿をお出ましになることはなかった。


 暁の瞳は感情が昂ると赤色に染まる。叔父もそうだったが、目の前の魔王ははじめは驚きはしたものの、幼いながらもあの瞳は我らの真意を探っている瞳だ。

「そうか……。」思ったより(さと)い子供のようだと感じていると「何でしょうか?」と、私の小さい僅かな呟きも拾う。


 そう返されて、僅かに目を瞠るが、魔王には驚きは隠しておく。「いえ、ただ将来が楽しみですね、魔王様。我が家からはこのシセロがあなた様の手となり足となり目となりましょう。」と告げた。


 そして不満を隠さないシセロをせかし、「…オルテンシア様、どうぞ…よろしくお願いします。」と挨拶させた。


 シセロは我が国でも指折りの騎士だ。軍神とも言われるし、剣聖とも言われるその腕を我が家から差し出す。


 先程まで他の者を出そうと思っていた。私でもいいと思ったが、当主の私がずっと魔王の警備に当たるわけにもいかない。突如言い出した私にシセロは不満顔だったが、渋々頷き魔王に頭を下げた。


 ナバレ侯爵を見ると、満足げに頷きながらも、目を細め我らの真意を推し量っている。


 こちらも魔王誕生で恨みは少しは晴らすことが出来ましたからね、ほんのお礼の気持ちですよ。


 でもまだ我がサヴィン一族の復讐は終わっていない。



 ─── あの裏切り者を叩き潰す迄はね。



お休みだったので連続投稿できましたが、暫く仕事なので、間は空くかもしれません。


早く、魔王の(オーブ)伝達式を描きたいです。

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