(67) 血の狂い《サン・ブルグ》 ・2 ─── 血の狂宴
サヴィン伯の名前ケヴィンだと、ケヴィン・サヴィンと同じような響きになり、しっくりこないので名前をレイウォルトにさせていただきました。前に投稿したものも変更しました。すみません。
血の狂い
ニナの姿を見てさすがの魔族達も震え上がった。戦いなどで死ぬことはあっても、あのように呪われた病で死ぬことは滅多にない。
「・・・では、吸血鬼族であるウィストリアの側にニナはいたはずだ。・・・十中八九|ウィストリアも血の狂い《サン・ブルグ》に侵されていると考えられるな。」
魔王マグナスは、絶望と怒りを含ませた声音で呟く。
「何てことに・・・っ!」皆一同愕然とした呻き声をあげた。家宰のアルカンに至っては地面に臥せての嘆きようだ。
血の狂いは、|特に生血を好む吸血鬼族に伝染する不治の病。しかし他の種族にはほとんど伝潘しない。その原因と治療法は全くわからず、侵されればほぼ間違いなく、その者には死が待っている。
「間違いなく、夢魔族達の仕業でしょう。しかも、天使族も結託しているとなると、特に力を持つ3種族のが守るべき世界の均衡、理を犯していることになります。」と、サヴィン伯の妻サファナは疑問を呈した。
「夢魔族は間違いなく魔界の簒奪を狙っている。"世界"はあくまでも"世界の均衡"は望むが、魔界の種族間の争い事に関与することはない。それは過去の例でも明らか。狙いは私が持つ魔王の珠だ。」
「魔王様・・・・。」
魔王の珠を受ける者は"世界"が決める。しかし、過去にも魔王から簒奪された例はある。それでも"世界"が認めれば簒奪者でも魔王にはなれる。
歴代の魔王が必ずしも魔界を正しく治めていたわけでもない。魔王の珠を奪い合う争い事に"世界"が干渉することはない。しかし世界の均衡を犯せば、重い罰が下される。
神族がいい例だ。あの一族は全てを奪われ、滅びた。
「しかしその禁を犯してまで、天使族が夢魔族と組んでこの魔界の吸血鬼族を攻める理由は何だ?」自身も吸血鬼族であるサヴィン伯レイウォルドにも、妻サファナにもまた血の狂いが伝染する可能性があるのだ。
今、魔王の側近は吸血鬼族が多い。元は吸血鬼族だった魔王は、将軍職であったので、戦闘能力に長けた側近が多く、全滅する可能性があるのだ。そうしたらこの国の勢力図が変わる。
「夢魔族めっっ!!」
長いこと吸血鬼族と夢魔族は敵対してきた歴史がある。
夢魔族は特に幻魔術に長けており、夢支配、隷属支配そして黒魔術、呪術などの魔術が巧みな種族だ。もちろん吸血鬼族は魔力が強いので滅多に支配されることはないが、血の狂いで身体が弱まれば、隷属支配される可能性はある。
夢魔族は吸血鬼族に対する対抗心が強く、この魔界を支配しようと躍起になってきた。魔王の選定はこの世の理を決める"世界"であり、しかし魔王代々の多くは吸血鬼族や人狼族出身者が多い。そこが、夢魔族達の不満となっていた。
「・・どうしたら夢魔族と天使族に対抗できる?」
「・・・・・。」血の狂いという不治の病、死の呪いに勝てる者などいるのだろうか?古くから言い伝えられているが、未だに誰も答えは持っていない。
「血の供給、種類を問わず暫く中止だ。汚染されている可能性がある。王都のナバレ候に使いを。夢魔族達が国中にばら巻いている可能性がある。伝染拡大を防がなくては。」
パートナーや奴隷から血液を搾取するが、今や血液も人由来、獸人由来、人工血液など様々な血液がパックされ流通している。もちろん生身の人や獸人からの血液が好まれてはいるが、特に魔王マグナスの時代となって、無闇に狩りと称して人を襲ったりすることは今は少なくなった。
「"世界"は?天使族の魔界への干渉について訴えればもしくは・・・?」
「"世界"に御伺いをたてている時間などない!!魔界には肝心の世界球はない。」世界への御伺いと称した嘆願や"世界"からの予言という名のは指示は、世界球の"世界"から予言者を介されて受け付ける。
「・・・いや、待てよ。過去の文献を見たことがある。中和能力者がいれば・・・可能かもしれない。」魔王マグナスは僅かな記憶を手繰り寄せて言った。
「兄王よ、一体この国にそんなことが出来るやつがいるんだっ!」
「 ─── 天使族ならできる。」
「はっ!?奴等は敵ですよ。」
「 ─── ウィストリアの元婚約者は最高位天使の明光力の使い手だ。アレキサンダーもそうだったが、使っているのを見たことがある。そしてアレキサンダーなら何か手を打つことが出来るかもしれない。」
その明光力の使い手が狂い、起こした今回の復讐劇とは知らず、一縷の望みをかけて、王都への伝令とウィストリアの救出に魔王達はサヴィン達を引き連れて、ライハルトに向かった。
次々と伝令が飛ばされたが、その知らせは王都に届くことはなかった。
夢魔族達の反乱が起ころうとしていた。
次回はウィストリア視点になります。




