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オルテンシアの瞳  作者: 香葉
第2章 魔界の黎明
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(62) 絶望と希望と ──── 羽ばたく夢はみれたか・2

 


 あの日から、父からも母からも、身も心もズタズタに傷つけられた。吸血鬼族(バンパイア)だけでなく、魔眼という呪われた瞳を持つ忌み子。


 魔眼は全てのものを魅了し、思うままに動かし、支配する。


 魅了は魔薬のように甘美であると感じる反面、意思を奪い奴隷のように、ただの魔物と同じように本能のままに動く"物"に成り下がる。


 そろって矜持が高く、自尊心が高い高位魔族にとっては、自らが支配するのであって、支配されるのは極端に嫌う。


 魅了は魔族間で使うのは、表向きは禁忌の術であった。魔眼を封じたり、抑えることのできる者はいなかった。


 辛うじて、魔王が抑えることができたのだが、隠されていたため魔王の御前には目通りしたことはない。


 それを意図せず晒す者は忌み嫌われる。例え制御できたとしても、避けられ嫌われる。


 時の魔王が脅威と見なし、危険な魔族(やつ)だと、一生涯幽閉の身となる可能性が高いのだが、アイヴァン家は、五大爵のひとつであり、私の親は「恥じ」だとして幽閉との形で、私を閉じ込めて表には出していなかった。


 例え淋しく屋敷の片隅だとはいえ、衣食住に不自由なく生きてきた。


 しかし、今はもうその日は永遠に来ないだろうと思うほど、私の生活は激変してしまった。


 もうなにも感じない。感じたくない。精神はもうバラバラだ。


 強制的に媚薬や魔薬を与えられた、抵抗しないようにされた。


 やつらは私を従順な人形に作り替えようとした。


 魔眼持ちであっても魔力が弱く、吸血鬼族(バンパイア)であっても弱い私は格好の攻撃対象だった。


 父達は私を嘲り、抵抗し反応すればするほど、やつらは狂喜した。いっそ私は魔薬で意識が鈍る方が楽だった。


 そう、何も考えなくていい。


 しかし快楽だけは感じたくない。だから頑なに感情を露にすることは拒否して喜んで意識を手離した。



 それが父達にとって、小賢しいと面白くないのか、雷撃を操るアルティオスを連れてきてからは、正気に戻されイヤというほど罵り、凌辱し自尊心を崩壊させようとする。


「・・・・ッ!!さっ、触るなぁっ!!」身体の上を這う手の感触と嫌らしい視線に吐き気が込み上げる。


「やぁ?・・君の肌はいい光沢を放って、・・また、その淫靡な紫色の瞳・・いい、いいねぇ。その悶え方。苦痛に歪むとさらに美しさが増すね・・私のカミーユ。」



 アルティオスは小児性愛者で略奪者だった。特に男児を好むらしく執着は絶えることなく、他の者に触れさせないように監禁された。


 魔眼が表向きは禁じられていた奴隷調教に魔薬と共に使えると知れてからは、さらにアルティオスや夢魔族(インキュバス)による執着が深まった。


 雷撃使いのアルティオスは、筋肉の塊のような男だ。切り裂く前の、命だけは助けてくれという奴隷達の必死な懇願と一縷の望みを弄び、絶望に満ちた顔を見ることを好み、愉悦感に浸る。魔王軍の将軍になりながらも、権威や立場を嵩にして弱い者の悪夢を貪る最低な(やつ)だった。


 ただ、雷撃は他に使い手がいないため、魔王軍の重要な戦力で、今の魔王が王位に就く前の魔王候補であったといわれていた。


 "世界"が望む魔王は"均衡を保つ"役割を望む他に"唯一無二"を望むという。


 世界は何故こんなやつに唯一無二の雷撃の力を与え、私には魔眼という力を与えられたのか。



 どうして私だったのだろう。



 私はあの日から悪夢から覚めることなく、ただ永い絶望の日々を送っていた。


 見栄だけで入れられた王立学園でオーブリー・ナバレとの出会いがなければ、また、ウィストリア・カーネリアン様の助けがなければ、私の精神(こころ)と矜持は保てていなかった。


 その二人との出会いは私にとってはとても大事で、生きていく上で揺るぎのない支えになっていた。


 どんなことにも耐えてみせる。


 例え魔薬に蝕まれようと、悪夢にうなされようと矜持だけは捨てない。


 私は弱い。それでも、『守る』といってくれたウィストリア様の役に立ちたい。オーブリーの横で共に生きたい。


 この頃暁色の夢を見る。


 夜明け前の、暗い闇夜から明ける、ほんの僅かな時の暁色の空のような美しい色に包まれる。


 リーン・・・・・と鐘の音のような美しい音色も聞こえる。


 暁時はほんの一瞬


 夢から覚める暁時


 これは、よい予兆なのだろうか









 暁の夢から覚めた頃、見慣れない部屋の天井 ─── いや天蓋付きのベッドの天井に目がなかなか慣れず瞬きを繰り返した。目はあの特殊な布で覆われてはいない。魔眼封じも解けている。


 傍らに誰かがいる気配がする。


 一瞬警戒するが、気配からオーブリーだとわかる。


 私が息継ぎと僅かな身動ぎをすると傍らの椅子で仮眠していたらしいオーブリーが動く様子がわかった。


 オーブリーはウィストリア様に同行していたはずだ。問題は解決したのか。


 私はどうしてか、また生きながらえてしまったらしい。



 ほっとしたらいいのか、悲しむべきなのか。これからを思うと自分はどうしたらいいのかわからない。



「・・・・カミーユ、起きたのか?気分はどうだ?」


「・・・あの後、どうなった?」


 オーブリーが珍しく押し黙る。



「・・・・カミーユ、落ち着いて聞いてくれ。」オーブリーはそういうとまた黙ってしまう。


 オーブリーからまず悲しみ、そして抑えきれない怒りを感じる。



 良くないことが起こったらしい。


 そこで、魔王の死とそしてアルティオスの魔王就任を聞かされた。



「・・・・・。」アルティオスが次の魔王。


 あの暁の夢は悪夢の続きだったらしい。



 そして、サヴィン将軍の死と共に、ウィストリア様の死も告げられる。






 ──── やはり、悪夢はまだ終わらなかった。



 

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