(61) 絶望と希望と ──── 羽ばたく夢はみれたか・1
お久しぶりの投稿です。
カミーユが救出されて、悪夢にうなされています。不快な表現も含みますので、ご注意ください。
それほどカミーユの歩んできた人生は過酷です。
噎せ返るような淫靡な臭い。呻きや快楽、懇願する声とは逆の、拒絶と恐怖、絶望を叫ぶの声。絶え間なく身体がぶつかり合い、淫靡な水音を発てる。
それほど広くはない部屋で繰り広げられる狂宴が、時間の感覚さえ奪われて堕ちて行く。
絶え間ない苦痛、精神がバラバラになる。もう、身体も精神もひび割れ、バラバラになりそうだ。
わずかな希望だけがバラバラになるのを細い蜘蛛の糸のように繋ぎ止めていた。
いやだ、いやだ、もうやめてくれ!!
しかし、足を囚われていてもがけばもがくほど深海に堕ちていった。そして意識も深く深く堕ちていく。
あぁ・・・、この魔眼さえなければ・・・吸血鬼族でなければ、父も母も私を愛してくれたのだろうか?
何度も繰り返す問に。誰も答えはくれない。
黒く、黒く、染まる。
黒い小さな露が、染みを広げるように、少しずつ少しずつ染み込む。
小さなひとつの染みでしかなかったものが繋がって、やがてひとつの大きな染みとなるように、私を染め上げていく。
もう絶望しかない。なぜ生きているのか。そもそもなぜこの世に生まれてきたのか。魔獣となり、自我などなくなってしまえばいい。
もうあり得ない希望を期待するは止めよう。・・・もう、無理だ。
初めて囚われたのは、五歳位だったか。
親に無視され続けて、屋敷の片隅の部屋で暮らしていた。私の回りには乳母夫婦しかいなかった。淋しかった。乳母達は優しく愛情は感じられたが、どこかよそよそしいところもあった。ひとり淋しく部屋や庭で遊んでいた。
自分では気付いていなかったが、私は生まれつき魔眼持ちだったので恐れていたのだろう。赤子のときから目を特殊な布で被われていた。基本被われていても生活には困らない。乳母達にも目の被いは決して外さないように言われていた。
しかし、他の子供達はそうはいかない。与えられた一画の庭にたまに侵入者が現れた。
親たちが噂する五大爵アイヴァン本家の嗣子アイヴァンの忌み子、異端の吸血鬼族を好奇心と興味半分に見に来るのだ。
初めは同世代の子供など見たことがなかったので友達ができるかもと純粋に喜んだ。乳母達も初めは警戒していたが、無邪気な子供と警戒していなかった。
ある時、ひとりで遊んでいた私の元に夢魔族の子供達3人が来た。父の元に挨拶に来た夢魔族の子供達だ。そいつらはいつも私の玩具を奪って壊し、威張り散らして去っていく。いい加減私も、わかっていてまたなのかと僅かに警戒した。
同い年なのにすでに身体は大きく大きく、私とはだいぶ体格差がある。私は魔力が弱く魔力の循環が弱いので、青白い顔と痩せて背が低く骨格は小さかった。今思えば、吸血鬼族の寿命が他の魔族より長く、成長はとてもゆっくりで遅いと言われる。逆に夢魔族は早熟だ。それがわからないほど私の回りには大人の吸血鬼族がいなかった。
「お前、アイヴァンの忌み子なんだってな!だから、その忌まわしい目を被っているのだろう。見せろよ。どんなものか見てやる!」
(これは人前では絶対外さないように言われている。・・忌み子とはなんだ?僕が嫌われている・・から?)
そいつは私を押し倒し、無理やり目を被っていた布を外そうとする。
「・・や、やめてっ!!」
「やめてっ!だってよ。ギャハハ女みて~なよっちいなぁ、吸血鬼さんよぉ。いい子だから、大人しくしてろよ。ああ、大人達にはいうなよ?」
3人係りで身体を押さえつけられ、身動きが取れない。着ていたものを剥かれ、目の被いも剥ぎ取られる。
ひとりになった時以外で初めて晒される私の瞳に、初めて人の顔を、瞳を真正面を見た瞬間だった。
「───うっっ?!、──── ウワァッー!!」私に馬乗りになってまともに私の魔眼を間近で覗き込んでしまった。制御もできなかった。まともに私の魔眼に当てられて、そいつは泡を吹いて昏倒した。他のふたりは「ダグラスっ!?」と叫んで何が起こったかわからないまま、私の魔眼とまた視線が交わった。
「───うっ!」とふたりとも呻いてダグラスと同じように昏倒した。
異変を感じた大人達がバタバタと駆け寄ってきた。
「─── 何が起こった!?」
「えっ?カミーユ様?!」
「うわっ!?」「ま、魔眼!?」
次々と大人達まで昏倒する。
目を瞠ってその光景に驚愕した。
呆然としていると、首の後ろにチクリと痛みを感じ私の意識は闇に堕ちた。
目を覚ました時、私の目は被われていた。しかし、今までのような布の被いではなく、全く見えない。手足を拘束され、魔力制御の首輪を付けられて、そして裸だった。
「起きたか?カミーユ。」
久しぶりに聴いた父の声だ。なぜ、裸で拘束されているのか。
なにも見えない。底知れね不安で震えた。
「これしきのことで、震えているとはな。五大爵アイヴァンの息子とは到底思えぬ。だか、確かにお前はお前の母の胎から生まれでた。確かに私と妻の血を分けた息子だが、アイヴァン家禁忌の忌み子、吸血鬼族なんかに生まれおって。忌まわしい。血を分けた我が子が吸血鬼族などと、しかも魔眼持ちと来た。・・・しかし、まあいい。お前はこれから我ら夢魔族の役にたって貰う。吸血鬼族を抱くなど吐き気がするが、でも絶望に咽び泣いて許しを請う姿はさぞ愉快だろうからな。」
私は、父が何を言っているのか、わからなかった。
その日から私の自尊心は失われ、闇に堕ちた。泣き叫んでも悪夢は終わらない。
その日、父は実の息子である私を犯した。
もう少しカミーユの回が続く予定です。
読んで頂き有難うございます。




