(53) 仄暗い悪しき深淵の底
間が空き、すいません。よろしくお願いします。
この回も過去の話です‼
──── あいつだけは絶対に許さない。
俺はあいつを許さない。
少しずつ長い時を掛けて罠を張ってきた。
後、もう少し・・・・
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あの、魔性の瞳を見てから私の心は囚われている。
魔眼・・・・それは捕らえて離さぬゾクゾクさせる呪縛。
ゆっくり大地に染み込み溶け込む水のように、心を蝕み、深く深淵の底を覗いてしまった者のみ赦される愉悦感。
カミーユの、完璧な美貌と幼男子特有の未熟な肢体も、何もかもがゾクゾクするほど興奮させられる。
それが、あの見るものを魅了する傲慢な魔力を持った魔眼が、私の与える苦痛に屈伏し、絶望し泣き叫び、慈悲を乞う姿は憐れで、そして壮絶な美をもたらす。
それが私をとてつもなく興奮させる。
魔眼だけが私の心を捕らえるのではなく、あの甘美な肢体から仄かな淫靡な匂いさえ発する。
「 ──── アルティオス、お前の頭はくそみたいなものだな。なんだ、この報告書は。これがお前の軍の規律報告書か?これだから天使族や、竜族の侵入を簡単に許すのだ。右翼軍は揃って使えぬな。そもそも原因の分析がまるで出来ていない。大事な軍の半分も失った貴様の責任は重いぞ。」
「し、しかし、悪いのは奴等であり、私は正しく命令を出した。私の責任ではない。そもそも何故私だけが責任を問われるのか?左翼は殆ど動かなかったではないかっ!!」
魔王主翼軍の将軍ディラン・サヴィンからあの氷のような蒼い瞳で見下されたように皆の前で激しく叱責され、大恥をかかされた。その横で藍髪の戦女神と言われるサヴィンの妻サファナも氷矢のような冷たい視線を投げつけるが何も言わない。
このふたりは私の嫌う吸血鬼だ。
我が右翼軍は魔界の西方の森アルバンディアで天使族や、竜族の侵入を許し、右翼軍の半数を失った。
私の指揮が上手く伝達されず、侵入を許し命辛々逃げ帰る途中、部下どもが恐慌状態に陥ったのが原因だ。離反した者の大半が死んだ。
離反は軍の規律が守れなかったから、と指揮が崩れ、そして私が責任を問われている。
先ほどの弾劾裁判の前の諮問会でのことだ。
私は無能の烙印を捺され、右翼軍将軍まで上り詰めた地位を失おうとしていた。
無能の部下達のせいで、何故私が弾劾されるのだ!?
明日、魔王の前で弾劾裁判が開かれると告げられた。
腹立たしいことが起きると、私はいつもここへ来る。
今日も私のために完璧に創られたこの空間で、その美を堪能する。
「・・・・・・・っ、くっ・・・・」
カミーユが私を睨み、苦痛にその完璧で壮絶な美貌を歪ませる。
・・・このなかなか簡単には堕ちないのが、また、良い。
私が操るのは、雷撃と悪夢だ。
簡単に堕ちる愚図は好まぬ。多くは軽く呆気なく堕ち、壊れ、楽しませてくれぬ。
「・・・・っくっ、ふ・・触れる、な・・。」
ビシッと風を斬り裂き、鞭がしなり、私の美しい子の肌を裂く。
「クッ、アッッ──!!」カミーユの絶叫が響く。
「・・おお、カミーユ・・・」私はその美しい身体に触れる。カミーユの身体がビクッと震える。
「ふん ─── お前は本当に愚かだな。」痛みつけられた身体を労るように触れる私の横で勝手にカミーユの父親ナサニエルが、カミーユを服従させるために鞭で打つ。
「まだまだ調教が足りないようだなぁ、カミーユ。」
しかし、鞭打つことでカミーユが屈することはない。
私はこの美しい子が屈する時は、快楽で堕ちる様をみたいのだ。
啼いて啼いて快楽に身を委ねる姿がみたいのだ。
だから、ナサニエルの行為は余計なことであり、私の美学にそぐわない。
・・・アイヴァンの当主でなければ、私は喜んでナサニエルを排除していただろう。
ナサニエルは完全に私にカミーユを売り渡したわけではない。交渉中だが、なかなか下げ渡そうとはしない。足元をみられ、本当に気に食わない。
我が夢魔族は、吸血鬼を嫌悪し敵対している。そして吸血鬼も我らを見下し、嫌う。
その際たる者がカミーユの父親ナサニエル・アイヴァンだろう。
五大爵アイヴァン家の当主様だが、魔族で最も下衆で最低な奴であることも確かだ。
──── 最も、本人もそれを承知しているが。
そもそも魔族は一族第一主義が罷り通り、特に五大爵は極端にその傾向が強い。
しかも、アイヴァンは極度な夢魔族至上主義の単一種族一族だ。アイヴァンにあっては、夢魔族でなければ生きていけない。
魔族は必ずしも親と同じ種族では生まれるとは限らない。
上級魔族は、我ら夢魔族、吸血鬼、鳥族、狼族、蛇族の五大爵の当主はそれぞれの種族の長が上手く担うようにできている。
カミーユは我ら夢魔の中でも、アイヴァン当主の継子でありながら、吸血鬼に生まれてしまった憐れな子羊だ。
アイヴァン特有の紫の貴色を受け継いでいるのだから、アイヴァンであることは確かなのだ。
夢魔族の長であるナサニエルには、憎き吸血鬼として生を受けた息子が耐え難い事なのだ。
初めは存在さえしないように扱い、魔眼発現で益々嫌悪し、魔眼の魔性の力を持つようになると、捕らえて従属させる為に利用する下衆な奴だ。
自分で言うのもなんだが、私のような者に平気で継子である息子を売り付けるのだから鬼畜にも程があると云うものだろう?
まあ、前から欲しかった子を手に入れることが出来たのだから、喜ばしいことだ。
因みに魔王は、全ての魔族の王であり種族に関係なく、"世界"が、魔王の珠が魔族の中から選ぶ。
魔王が死ぬと代替わりするが、魔王の魔力は絶大で他を圧倒する。
全ては"世界"次第というのが気に入らない。
私が魔王になれば、カミーユも私の獲物になる。
ああ、その時が待ち遠しい。
でも後、もう少し・・・・




