(46) 絶望と希望と・1 ─── by カミーユ・クリストフ・アイヴァン
カミーユとオーブリーとの出会った頃の話です。そして、前の戦いと言われる、前魔王とそしてウィストリア、リシェーナとの絡み合った物語を描いていく予定です。
──── いつになったらこの地獄から抜け出せるのだろうか。
「おい、何を考えてる。ちゃんと集中して奉仕しろ。大人しく言うことをするんだ。」と言い、しなる鞭が私の体を何度も打つ。
「・・・っっ!!」鞭打つ音がこの光も射さない陰気な部屋に響く。
「ふふふ、・・・まだ堕ちてきてないわね。でも、もう時期にここまで堕ちてしまうでしょうよ。」
穢れた手や舌が俺の体を這いずり回る。
堕ちる・・・か
もう何年、ここに囚われてるのか。悪夢のような時間は無情にも過ぎてゆく。
抵抗すると鞭で打たれ、意識を失えば電撃や水を掛けられる。ひたすら拷問と快楽を繰り返し与えられる。
無情にも身体の傷は、一日も経てばもとに改善し、腐った快楽者どもにまたいたぶられる。奴等は私が苦しむ様を見て興奮し、嘲り、快楽を得る。
身体の傷はもとに戻っても、心は死んでいくようだった。
落ちる、とはこう言うことなのか。
1度はこの魔眼を潰した。しかし、直ぐに再生し、更にやつらを喜ばせるだけだった。
"狂喜の瞳"と呼ばれた呪われた瞳。
生まれたときから両親は俺を顧みることはなく、それぞれが快楽に溺れていた。
夢魔族のなかでも、筆頭伯爵で、五大爵のひとつに数えられる、夢魔族アイヴァン家に生まれた異色な吸血鬼 ─── それが私だった。アイヴァンは余程なことがないかぎり夢魔族に生まれ、そしてこれまでひとりとて吸血鬼はいなかった。上位魔族のなかでも夢魔族は性格的な点から吸血鬼族に見下されていると感じ、高等な魔力を持つ吸血鬼に対し、尽く自尊心を潰されてきた相手で、魔族内種族間での争いが絶えなかった。
その宿敵というべき吸血鬼が本家跡取りとして生まれては、遺棄したくもなるか。
興味も持たれず、保護もされず、猫の獣人夫妻の従者と乳母に、広大な屋敷の片隅で育てられた。
幼い頃にはこの二人しか信じられる者が居なかった。
しかし、あの腐った両親でも一応世間体を気にしたらしく、乳母夫妻以外の者と関わることになったのは、見栄で入れられた王立学院に入ってからだった。
でも、周りとどう話せばいいのか。距離の取り方も知らず、無防備だったと思う。度々上級生に絡まれ、閉じ込められたり、いたぶられたりした。
この頃はまだ強い魔力もなく、抵抗する術も持っていなかった。
魔眼は、執着とそしてその者の持つ強欲までの性を浮き上がらせる。魔族は本来自分の性に逆らうことなく、理性など持ち合わせていない種族ではある。
しかし私の魔眼はその本来の性をまるで沸騰させるがごとく、急激にその者が持つ本能を極限まで沸き上がらせ狂わせるらしい。
"狂喜の瞳"を意図して使っているわけではない。
王立学園でも変わらず私は無防備に魔眼を曝してしまう。この魔眼を自力で抑えることが出来ないからだった。
そして、私は皆から忌み嫌われ、友もいなかった。
いや、私を心配してくれている幼馴染はいたが、今はこの学園にはいない。
裸にされ、蹂躙され、ボロボロになって放置されたり、す巻きにされ池に落とされたこともある。
「・・・お前、悔しくないのか?」
地面に這いずる私を、はるか上から見下ろす吸血鬼 ─── 銀髪・青紫色の瞳は、私と似ていた。
同学年の、名門貴族の息子オーブリー・ナバレ ─── 五大爵のうちのひとつ、同じ五大爵でも別格といわれる、ナバレ家の一人息子との初めての出会いだった。




