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オルテンシアの瞳  作者: 香葉
第1章 目覚めたら、魔王でした・・・
44/74

(44) 魔王としての戦い ─── 魔王国舞踏会 (2)

 


「あの、アルト?後で正式にお願いすると思うのだけど、私に治癒魔法を教えてほしいの。」


「治癒魔法?」


「ええ、魔族では珍しく私には治癒能力があるみたいなのだけど、この国では治癒魔法の使い手がいないので、教えを請うことができないの。この世には魔法があるからと薬の研究はまだまだじゃない?診断や治療法もない。例えばどこに問題があって治療しているのか、是非医聖である貴方に教えてもらいたいの。」


「・・魔王(オルテンシア)は治癒能力があるのか?」私を抱くカミーユさんにアルトが尋ねる。


「・・・あるはずだけど、力が暴走して上手く治療できないの。」恥ずかしいことに制御が上手く出来ず、治療しようとすると、表皮が熱傷のようになってしまう。例えば腹痛があればその原因の炎症部位がわかって、治療しようとすると内部は治療できても、魔法をかざした表皮に熱傷を負わせてしまう。


 結局、治癒魔法をかけ治すことが出来るのだが、患者に余計な負荷をかけるのは元看護師としては納得いかない。それは治療師としては納得いかないのです。


「・・・確かに治癒能力はとても高いのですが、力加減が上手く出来ないようで。」とカミーユさんも言う。


 そう、魔族は自分で怪我などは治癒することがてきるが、獣人さん達は治癒魔法を使うことが出来ないし、内蔵的なレベルになると、診断して治療できない。


 その分アルトは前世はお医者様だし、看護師だった私より知識は深い。魔族の医学書などないようなものだし、人族の医学書から知識を得ても魔法(・・)での治癒方法は載っていない。


「是非、教えてほしいの!」

「それは魔王であるお前がすることなのか?」

「・・・えっ?」


「魔界に来て考えたのだが、そもそも魔族の持つ魔力と我らが使う力 ── 聖光は本質が違う。魔族はそもそも治癒魔法を必要としない、自己治癒能力に長けていて、欠けた部位の再生も早い。この魔界では、治癒魔法は"不要"ではないのか?」


「それでは、獣人を助けられない。」

「・・・・獣人?」


「この国にいるのは、魔族だけではないわ。身体能力が高くても、獣人は自己治癒は出来ない。お恥ずかしい話だけど、この国には隷属支配がまだあって、人身売買も闇で行われていて、なかなか取り締まることが出来ていないの。」


「隷属・・・?」アルトは戸惑いがちな表情を見せている。

「私たちは魔獣を使役するけど、獣人も隷属して縛り、虐げられている者が後をたたない現状で・・・まだ私の力が弱くて隷属支配が排除出来ない。」私は唇を噛み締める。まだまだ未熟なのは承知している。「・・・せめて助けられる命を、苦痛を取り除いてあげたいの。」


「・・・傷を癒しても、生きのびても置かれている環境は変わらないとしても?」

 アルトの指摘はもっともで、既にカミーユさんやお父様にも言われていた。


 魔王がすることではないことも。


 うん、わかっている。それで現状はなにも変わらず、救われない。例えそこから救い出しても、また新たに同じように獣人が捕らえられるだけであることも。


「オルテンシア様・・・」カミーユさんも心配そうに私を見る。

「うん、わかっている。私の考えが甘いことも。でも、虐げられている者がいたら救いだして、癒してあげたい。」治癒能力が私にはあるのだから。


「・・・私からもお願いします。我が国には、まず治癒魔法を使えるものがいない。また獣人が虐げられた上での死はこの樟気で魔物化します。魔物は既に獣人ではない。他国との軋轢の原因のひとつにもなりますね。」


 魔物は魔族ではないのだが、この魔界の樟気で魔物化するので、陸続きの国々に移動し、各地で被害をもたらし、魔界と各国との軋轢の原因となっている。


 魔物は元は獣人だったり、魔獣だったり、魔族や人族、竜族だって魔物化する可能性はある。怨み、絶望のうちに死ぬと樟気に触れ魔物化するのだ。


「・・・わかった。しかし、魔王は魔界を離れるわけにもいかないし、俺は天界を長い間離れるわけにはいかない。」アルトもいろいろ思案してくれたみたいです。「条件もある。」


「直ぐでなくてよいのです。定期的に魔界に来て頂くか、こちらから天界へ伺います。まだ魔力制御が上手く出来ないので、暫くはこちらで制御の訓練が必要です。」


「落ち着いてからでもよい。留学という手もある。短期集中で学んでもらう。」

「・・・留学?」

「魔王が天界へ来るには、まだ天界(こちら)の環境が整っていないので暫くは俺が魔界(こちら)に来ることになるが、・・まあ、紫陽花(はるか)に逢いに来る正当な理由が出来て嬉しい。」


「・・えっ?」アルトの前世でも見たことのない笑み。


「・・・そうなると思ったのです。熾天使(セラヒィム)が、来るとなると厄介でしかない。」


「・・・えっ?」カミーユさんが、・・黒い。メラッと音が聞こえそうなほどの殺気。よく見ると、瞳の色が赤くなってるよ!魔眼が~っ!


「っ!ダメだよ、カミーユ!」


「そうだ。魔眼使い、"狂喜の瞳"カミーユ。抑えろよ。」やっ!アルトまで黒いよ。天使の殺気、怖っ!


「・・・まさかこんなところで、殺気を露に睨み合っているとはなぁ。」突如聞き慣れない声がする。


 振りかえって見ると、そこにはあの竜族(ドラゴン)王子、いやエリュシオン王太子。ここにいる人たちは、とても背が高いが、この竜族(ドラゴン)王子が1番高い。カミーユさんに抱かれていなければ、顔が全く見えないだろう。


 カミーユさんの殺気も更に強まった。昨日のことがあったからね。見るとシセロさんやキアランさんまで近くに来ている。


「まあまあ、抑えてくれよ?別に争いたいわけでもない。ただ、今は舞踏会。魔王を独占するのは如何のものか?と言いたいわけ。」周りの殺気に比べて、軽い調子の竜族(ドラゴン)王子。若干つりめの瞳狭められ、ニカッって笑っている。「俺の婚約者を独占とは如何のものか?」


「「・・・婚約者!?」」


「・・・その話はお断りしてますから、オルテンシア様。ええ、永遠に有り得ません!ちょ、ちょっとオルテンシア様、離してください。」カミーユさんが仮面(マスク)を外そうとしている。私は仮面(マスク)を外さぬよう押さえていた。


「ダメ、カミーユ。」


「ははっ、1度は断られたが俺は諦めねぇよ。今はチビッ子だが、育てばあの姿なら悪くはねぇ。候補に入れといてくれ。」もう、カミーユさんの殺気が強くなるから、煽らないでよ~。


「魔眼は個別選択使用できるから、はずしても良いのでは?」アルトまで煽る。


「確かに独占はよくないな、カミーユ。」と言ってひょいと抱えあげられる。見ると、なんとキアランさんではないか!「サヴィン候・・・」カミーユは五大爵のひとり、キアラン・サヴィンに対し、下がり胸に手を当て目礼する。


「皆、オルテンシア様やカミーユと話したいと思っているのだ。ここは納めてくれ。」


「・・・あの~、キアラン?私を降ろして下さっても?」氷の軍師と言われるキアランさんが私を抱っこ?

「たまには私もオルテンシア様を抱っこしたいのですが、ダメですか?」えっ~!クールで大人で、えたいが知れない稀代の天才軍師と言われているキアランさんが、だっ、抱っこ・・・って。


「おい、兄貴。俺にも渡せ。俺も抱っこしたい。」横からシセロさんまで抱っこさせろという。


「お前はいつも側にいるだろう。この間、オルテンシア様を抱っこしているのを見たぞ。職務にかこつけて抱いていただろう。」

「ふ、職務だからな。知っているぞ。羨ましそうに見てたのは。」

「こんな娘がいれば可愛いなぁと思っていたのですよ。本当にナバレ公が羨ましい。」


「それには結婚しなければなぁ、キアラン。」お父様もいつのまにか側にいる。お父様の笑顔でも、目が笑ってないような?

「私には成さなければならない願がありますゆえ、結婚は当分するつもりはありませんが、娘が出来るのであれば、いいかもしれませんねぇ。」とクツクツと笑う。

「そうだろそうだろ?娘は可愛い。・・さぁ、そろそろ返してもらおうか?」

 お父様殺気が出てます。


「・・・いつも親の特権で抱いているではないですか。今日は舞踏会です。無礼講なのでは?親が独占とは良くないと思いますがね。」


「・・・紫陽花(はるか)も苦労しているな。」周りの大人達の様子に、流石に呆気にとられている。

「・・・アルト。」

「でも良かったな。前世は、・・その、淋しい思いをさせてしまっていたからな。」

「・・・うん。皆、とても優しいのよ。」本当、皆、優しい。


「生まれ変わって良かったんだな。」

 アルトのクシャとした笑顔。


 イケメンが笑うととても絵になる。でも、心からそう思ってくれてると思って、第2の人生もまだまだこれからだけど、頑張ろうと思うのでした。



話が長くなりそうなので、一旦ここで切ります。

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