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オルテンシアの瞳  作者: 香葉
第1章 目覚めたら、魔王でした・・・
42/74

(42) 魔王としての戦い ─── 悪しき深淵 と希望

週末にあげるつもりだったのですが、できなかったので本日投稿します。


ある魔族視点とカミーユ視点です。


 


 新魔王がこの度、魔族の国ペルラ王国に誕生した。



 小さく幼い新魔王が、赤い絨毯の上を進む。その後に続くのはカミーユ・アイヴァンとシセロ・サヴィンが魔王を守るように、周りを警戒しながら進む。


 魔族最高の貴色の黒髪、瞳は紛れもなく暁色ではある。


 しかし余りにも幼すぎて、膨大な魔力を制御もできずにいる。特に始めて魔王オルテンシアを見た魔族は失望の色を浮かべていた。


 あのカミーユが魔王の戴冠に付き添うなど、どうなるかと思ったが、成る程・・あの仮面(マスク)が魔眼の魔力を抑えているようだ。さらに軍神シセロ・サヴィンまでが、あの幼い魔王の側に置くよう、あの奇才キアラン・サヴィンが自ら差し出したのだという。


 話には聞いていたが、奴等がここまでこの幼い弱い魔王に肩入れするのか解せぬ。


 いったい不老不死者(ノスフェラトウ)はどうやってあの気難しいサヴィンを口説いた?


五大爵の中でもナバレとサヴィンは特に、もともと独立性が高い家だが、前々の魔王弑逆の際どちらの家も一族のものが殺され、力を削がれたから、魔族からの造反者もたいした動きは見せなかった。


 しかも仇敵でもある天使族(アンジュ)竜族(ドラゴン)まで戴冠に呼び、今後は交流を深めるなぞ、いったい何を考えている?



 その魔王と言えば・・・魔力は膨大のようだが、何せまだ身体が小さく制御できていない。だから、アレキサンダー・ナバレが制御に長けたカミーユを側につけたというわけか。


 あの魔眼が何故かあの魔王には、まったく効かないと聞く。あの何にも感心を持たない心を殺していた、カミーユ自ら魔王に付き従い、尽くしているという。



 本当に、気にくわない・・・全くもって



 カミーユのあの美貌、あの魔力、そして弱さ・・・あれは()のものであるのだ。前の魔王が滅び、やっと私のものに出来ると思い、いや元々私のものであったのだ。


あの時はアルティオスに先を越されただけ・・・なのにいまだに私のものではない。



 ・・・ふん



 その、魔王だがとにかく幼すぎた。


 魔族でありながら、なんというか魔王の平凡な容姿は失望させられた。成長した姿は、まあ少しは見られたかもしれないけど、それでも弱々しくて、魔力(つよさ)など全く感じられない。



 あれが我らの魔王なのか



 魔力(オーラ)が弱い分際で、私の美しいカミーユを、魔王だからと側に侍らせるなんて、許せない。

 


 ふふ、あんな力もないチビが魔王になれるくらいなら、私だって魔力は強い。魔王になる資格も十分のはず。


あの暗愚王アルティオスでさえ、魔王の(オーブ)を得ることが出来たのだ。



 魔力(ちから)、美貌、どれをとっても私が魔王に負けるわけがない。




 ─── 魔族(わたし)は、弱い魔王など認めぬ。




 ***************



 オルテンシア様が、魔王に即位された。



 たぐいまれな魔力(オーラ)を幼いながらも持ち合わせている、今までにない魔王といえる。


 あの方の資質は誰にもあるわけではない。特に魔族にはないものなので、理解出来る者はいないのかもしれない。


 いや、ほとんどの者が理解はできないだろう。


 魔族の多くは見た目の幼さは弱さに映り、魔族最高の貴色の黒髪、魔王のみが持つ暁色の瞳であるのに係わらず、勝手に見た目で軽んじるような態度を見せていた。


 幸い、オルテンシア様は幼いのと緊張されていて、気付かれてはいなかった。


 魔族達(やつら)はオルテンシア様の魔力(ちから)の本質を見抜けていないようだ。こちらとしては余りにも膨大な魔力を秘めるオルテンシア様を守るには好都合ではあるが、奴等に軽んじられるのは正直怒りに堪えない。


「私は、たまたま魔王に生まれついただけだもの。あまり期待されても、今はまだ皆の期待に答えられないのだから仕方がないわね。」



 いつからこのような愚かなもの達ばかりに成り果ててしまったのだろうか。


 天使族(アンジュ)竜族(ドラゴン)さえもオルテンシア様の持つ魔力(オーラ)に気付き始めているというのにだ。


「でも、私はこのままでいるつもりはないわ。・・・それにはカミーユの力が必要なの。・・・これからもよろしくお願いしますね、カミーユ。」


このような言葉を、まだ幼いオルテンシア様が言う。



はなたして、私でいいのか。



 悪しき深淵にまで堕ちてしまった私



 ─── かつての私は、自分に、この世に失望していた。いや、絶望していた。


 いっそ狂えたらどんなに楽であったか。


 虚空にさまよい、絶望し、いくら嘆いても、祈っても、救われない孤独。


 世界も、誰も何も答えてはくれなかった。


 この身体が、この呪われた瞳が、厭わしかった。




 そんな時に出会った新たな魔王として生まれてきた幼い、透き通った暁の瞳を持つ魔王。


 淀み、悪意をもった者ばかりのこの魔界で、無防備に私に向けられた純粋な、柔らかな瞳。呪われた私の魔眼を見つめ返す真っ直ぐな瞳。



 今、思えば私の嘆きなどとてもちっぽけなもので、この美しい魔力(オーラ)に出会い、救われたことで、やっと生きる場所を、楽に息を吐ける場所を見つけることが出来た。



 もう俯かなくてもいい。



 私は顔をあげ、顔を隠さず、他人の顔色を伺うこともない。


 優しい笑顔、暖かい暁色の瞳が私の心を潤してくれる。



 しかし、このような奇跡の時間がいつしか失われてしまうのではないかと、私はいつも怯えている。





 私はオルテンシア様を守りたい。




 いまだに私はこの悪しき深淵に囚われている。


 でも、もう私は希望を見つけた。




 私から、そしてこの魔界に巣くう悪しき者達から守らなくては




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