(35) 魔王としての戦い ─── 卵を拾いました?・2
竜の卵を拾ったはずが、話は違う方向へ・・・
「俺はエリュシオン・カレル・ドラクスラー、竜族の王太子だ。」
このひとが竜族の王太子
「新しい魔王の顔を見に来てやったのさ。話には聞いていたが、こんなチビ助とはな。」
むぅ~、いきなりチビ助とは酷いではないか。
・・・でも、チビは事実だから否定は出来ないところが、辛いところであります。
「そっちの魔族に比べて、チビ助の顔面偏差値、平凡レベルだし。」
・・・カミーユさんやシセロさんと比べられたら、どのみち私なんて平均以下ですよ、はい。
私はショボーンとなってしまった。顔面偏差値、平凡レベルって、乙女としては地味~に心が傷つく・・・ってか折れた。
カミーユさんが私の手をギュッて握って、穏やかに気にするなと微笑んでくれた。そして、抱き上げた。
何故だかほんとに居たたまれないです。
竜族に向き直ったカミーユさんの顔面偏差値は凍っていて、マイナス40℃?永久凍土並。いや最大級ブリザードが吹き荒れた冷たい光の魔眼を炸裂させようとしていたので、カミーユさん目がヤバいと私がカミーユさんの瞳を慌てて手で覆った。
「魔眼で魅了してどうするのですか!」
「いっそのこと発狂させて、まともな思考能力を削いでしまおうと思ったのですがね。」無表情に戻ったカミーユさんは、抑揚のない感情のない声で怖いことを 言う。
「・・おいっ!恐ろしいことをサラッと言うなよ、カミーユ!こっちまで被害が及ぶじゃないか。」あらら、シセロさんはマジに焦っている。でも、笑い事では済まないカミーユさんの魔眼は一種のテロ行為ですよ。「ああ、でも硬化スキル使ってもいいぞ?あのうるさい口を塞いでしまうか。」シセロさんも言う言う。
「・・・いきなり失礼ではないか?エリュシオン殿下。後で正式に抗議させて頂くがよろしいか、」カミーユさんの声がこ、怖い。
「・・ふん、先の戦いでこちらは苦水を飲まされた。勝利は目の前だったのに、新たな魔王誕生の知らせと同時に、アレクサンダー・ナバレそして魔王軍の軍神そこにいるシセロ・サヴィンにヤられた。均衡を破った我らは罰を受け、子孫誕生を封じられ、存続の危機だなんてただの冗談だと思ったが・・・。」そこでエリュシオン王子は言葉を切って溜め息を吐く。
「しかし竜族にとっては馬鹿馬鹿しいと笑うに笑えない事態だ。ただでさえ我らは繁殖力が弱い種族なんだ。まだあの戦いから数年しか経っていないが新たな竜族の誕生の兆しは全くなく、ポコポコやたら産まれる天使どもも、この数年全く産まれていないという。しかし世界からあることを条件に罰を軽減してもらったと聞いた。」またもやニヤッて笑う。・・・この顔、何故か無性にムカつく。
「その卵は飛竜の卵だ。」地面の卵を顎でしゃくって示す。
カミーユさんとシセロさんは、警戒心も露に私のことをエリュシオン王子から隠した。
「俺も夫候補に加えてもらおうと思ってな。その飛竜は挨拶代わりの土産?いや賄賂?」
・・・・・はい?・・夫ですと?しかも候補って何のことや?
魔王は歴代死してから、またはほぼ死人同然となると魔王の珠が次代の魔王の選定を行い、その王位を次いで来た。私も例外なく、死ななくては、次代の魔王に譲ることはない。先代魔王は無理やりその時の魔王を弑逆し、珠を奪った。
なので私は死ぬまで魔王でいなければならないので、魔王を辞めて、竜族の王太子の妻にはなれませんのですが?
「ああ、チビ助は魔界で魔王を続ければいい。俺は竜族の国ドラグーンで王となる。それぞれが自分の国で暮らせばいいではないか?形だけだから気を使わないし、まして自由だぞ。俺は寛大な男だ。夫婦だからといって魔族の国に口出しはしない。そして、俺は幼児性愛者ではないからな、安心しろ。まあとりあえずは成長するまでは、待ってやるさ。」
ドラゴン王子はカミーユさんと私、シセロさんと私を交互に見て馬鹿にしたような瞳でニヤッと笑った。
俺はなぁ、もうちっとグラマーで色っぽい女が良いんだ、などとも付け加えた。
このドラゴン王子の「小児性愛者」発言に、怒りを抑えねばならない私の怒りは氷点下まで一気に下降した。
シーンと静まり返ったこの場、やたらこのドラゴン王子の声とこの竜族の卵が発するリーーンという音がやたら響いていた。
「・・・ぺ、幼児・・性愛者・・。」私の発する声もキーンと冷たく張りつめた空間に響いていた。
ふーん?会ったこともないドラゴン王子に何を言われるかと思ったけど・・私のことを馬鹿にするならまだ許せる。しかし、私の部下であるカミーユさんやシセロさんを侮辱することは到底許せる事ではない。
少しずつ私たちのいるこの場の空気が張りつめ、あらゆる水分が凍結し始めていた。
「オルテンシア様!」カミーユさんの焦った声が聞こえる。そして私の魔力に干渉しているのがわかった。
でも止めたって許せないものは許せない。
「オルテンシア様、お怒りはごもっともですが・・・。」カミーユさん達はドラゴン王子が言った言葉の意味がわかっていない。
あの卵の周囲も凍り初めていた。
カミーユさんが私に手を伸ばそうとしていた。
しかしカミーユさんが私に伸ばそうとしていた手をシセロさんが止めていた。
「いいじゃないか、カミーユ。暁の王の怒りはごもっともだ。魔族はこの馬鹿の侮辱を許してやるほど、寛大な生き者ではないと知らしめてやる良い機会だ。」
「しかし・・・。」
「まあ、イザというときは、全力で止めなければならないが、─── 俺は魔王の力、"暁のオルテンシア"の魔力を俺も見てみたい。」




