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オルテンシアの瞳  作者: 香葉
第1章 目覚めたら、魔王でした・・・
32/74

(32) 誓い

 


 魔力測定はとりあえず終わり、私の暴走するであろう魔力をどうするかと皆さんが話し合っています。


 あのぅ・・・明らかに私を放置してますけど、どうせまだ未熟者なので仕方のないことですね。・・・ええ、いいのです、ええ!


「・・ふう、仕方ないわね。オルテンシア、こっちでお茶しましょう?」お母様と私の部屋の食堂兼応接室に使っている月の間の隅でお茶してます。


「オルテンシア様、男共がすいません。」

 リシェーナさんも護衛なので話し合いに加わるべき人なのですが、どちらかというと侍女に近い、話し相手ということに近いのだそうです。


「いいのよ、リシェーナ。オルテンシア特製のおいしいお菓子は私たちだけで頂きましょう!まあ、今日のお菓子は新作ね?」

お母様お菓子を独占しようとしてますね?

「ええ、マドレーヌとココナッツ入りのチョコレートケーキなんですが、初めて作ったので上手くできているか自信がないのですが、どうぞ。」そうそう、仲間はずれにするならあげないよーだ!

 そうですわね、とリシェーナさんもお菓子を見て笑顔になります。

「まあ!これが噂のナバレ侯爵家特製の新作お菓子ですか?」魔界は皆甘いものが大好きなのである。リシェーナさんももれなく甘いもの好きのようです。やはり女子は甘いものに目がないのです。


「ふふ、実はナバレ侯爵家特製のお菓子は全てオルテンシア考案のお菓子なのよ。」


「えっ?本当なのですか?これ、しっとりして甘過ぎずとても美味しいですわ。」リシェーナさんの色気の方が、甘いです。


「このしっとり感が上手くでなくてちょっと試行錯誤した力作です!」

 前世で、お土産で頂いたお菓子を再現しようと、試行錯誤した思い入れのあるお菓子です。お菓子の名前を忘れてしまったのですが、お酒(ラム酒)を少し加えたら、近い味を出せたのですが、前世と同じようなお酒をこの魔界で探す方が難しくって、ブランデー擬きで代用したのです。


 またココナッツも探すのに偉く苦労したのですが、これは天界にしかない実だったので、何とお父様が知っており、天界からアルトとセリムさんが来た時にお砂糖小麦粉等と共にお取り寄せしたのです。


 アルトによると大抵の食材は天界にあると言う。精霊達がせっせと食材となる植物を作るそうだ。驚いたことにチョコレートなるものもあった。


 アルト達にはココナッツクッキーを作ってあげたので、このココナッツケーキはまた今度会えたときにアルト達に作ってあげよう。


「うん、何とか上手く出来たみたい。」初めてにしてはあの懐かしい味を再現できているようですが、まだまだ改善の余地はありそうです。


 お母様がお菓子の名前を考えてくれるそうなので可愛い名前で、とリクエストしておきました。


 魔界では、前世と同じように再現するのはまず食材を集めることが難しく、オーブンなどの電気製品もなく、魔力で焼き加減を調整しなくてはなりません。今まではお父様に魔力を調整してもらって焼いてました。今回魔王を受け継いでから始めて自分で焼いてみました。やはり魔力の制御は難しく、試しに焼いてみたクッキーは黒焦げになってしまいました。カミーユさんに私の魔力を制御してもらい、お父様には焼き加減のコツを聞きながら、魔法を使って作ったのです。



 普段の食事が生肉や生血のこの魔界、魔王になっても私の胃はやはり受け付けませんでした。


 日本人なので、生魚は食べてましたけど、流石にあの臭い魔獣の生肉は食べられませんでした。・・・魔界は焼いて食べる習慣さえなかったくらいです。元天使のお父様は、吸血鬼(バンパイア)族に堕天したため難なく受け入れられたそうですが。


 私がこの世界に生まれ変わって、一番苦労したのは言葉でしたけれど、食事というか魔界の食習慣を受け入れる事がなかなか出来なかったのです。よくきく「チート」ってとても都合の良いことは、私には起きなかったのでした。


 小さい頃から病弱だったのは、魔力がなかったせいもあって、魔界の瘴気に当たっていたためではないかとアルトの見解を聞き、流石お医者様だなと妙に納得したのです。


 樟気に慣れるには、魔獣の生肉や魔界で自生する植物を少しずつ摂取した方がよかったらしいのですが、如何せん身体が受け付けず、虚弱体質になっていた模様。今は魔王の(オーブ)を受け継ぎ魔力を得たので、瘴気に少しずつ慣れるように少しずつ摂取しています。


 今まで魔力がなかったので、魔法の制御おろか、詠唱も殆んどしたこともないのです。


 ・・・ううっ、でも魔界の食事ってとても不味いのです。魔族は味は気にしないみたいです。


 少しでも改善するべく、元食べ歩き大好きとしては、魔界の美食運動を進めて行きたいと思っています。アルトによると、前世のようなカレーライスとか天界にはないのですって!人族の事はわからないけど、多分この世界にカレーライスはないらしい。料理の出来ないアルトはカレーライスが食べたくて仕方がないそうです。早速研究しなければ!ふむふむ、他の種族の方達との新たな交流に、美食国家ペルラ王国を広めるのだ!


 うん、早速計画練ろう!



「おっ!!狡いな母上。私にもオルテンシアのお菓子を取っておいてくださいよ!」オーブリーお兄様が、私たちが先に食べていると目敏く見つけて寄ってきます。


「いいえ、私たちを仲間はずれにした罰です。オルテンシア特製新作お菓子はあげません。」

「私からオルテンシア特製のお菓子を食べる楽しみを奪うのですか?」「何言っているの?お手伝いもしてないじゃない。」「そういう母上も何もしてないではないですか。」


 そうです、お母様は極度なお料理音痴、家事一般させると色々なものを破壊しかねないので、お茶の用意もしていただいていません。

「まあ、ひどい息子ね!」

 まあまあ、ちゃんと取っておいてますから、大丈夫ですよ。



 無意識に発動してしまっている魔法をどうにかしないといけないと話し合っているようです。だいぶ他の魔族に影響を与えているらしく、駄々もれ垂れ流し状態で、流石に狂わせてしまうことはないらしいけど、とりあえず制御のための魔具で安定させる、ということになったようです。



 まだまだやるべきことが盛りだくさんでした。


 私の周りに集まってくる(オーブ)達も、其々火の(オーブ)、水の(オーブ)、風の(オーブ)、土の(オーブ)、光の(オーブ)、妖精国や天界における精霊みたいなものと考えていいそうです。





 制御に長けたカミーユさんの元、魔法のお勉強を開始します。


 とある午後、いきなり実践というわけもなく、座学、カミーユさんから講義を受けています。午後の麗らかな日差し(魔界に日差しはない・・気分です気分!)のなか、お昼ご飯をきっちり頂いて、私は眠気と必死に戦っておりました。


「・・・ひとつは詠唱することで自分の思い描く魔法を発動することが、一番安定したものとなると思います。」

 うう~、眠いよう。何とかうんうんと頷いているのが精一杯。

「あ・・カミーユさんはどう魔法を発動させているの?詠唱は・・えっとお、していないですよね。」昔から、午後の授業は眠気との戦いに勝てたことがない。必死に目を開けようとしています。誰か私の瞼にテープ張って?あっ、一対一の講義じゃ誤魔化せないって?


上から、フゥーとため息が聞こえます。


ま、まずい。でも、もう、瞼が閉じる・・・


「さて、オルテンシア様はお腹が一杯になると眠くなってしまうたちのようですね。まだ講義が始まったばかりなのに困りましたねぇ。目が閉じそうですよ。半目が怖いことになってますよ?」


カミーユさんはやれやれと言って苦笑していた。


「す、すいません。やはりコーヒーを、カフェインをとらないと眠くなるたちは前世と変わらないみたいですぅ。」

「かふぇいん?」

「・・そうです。眠気覚ましで飲むのです。コーヒー飲まないと目覚められないぃ。」


 お子様にカフェインがよくないことは重々わかっている。でも!睡魔には勝てない、のである。


魔界には「気付け薬」というものは、ある。強烈な魔薬の一種だ。薄荷の更に強力にしたもので、長時間の吸入は意識を昏倒させるほど強力な魔薬であり、お子さまの私にはとても使えないという。


また油断すると夢魔(インキュバス)達が干渉する可能性があるので、自分で何とかしないといけないのだそうだ。他人である夢魔に心のなかを覗かれたり、意のままに操られると聞いて、それはイヤですからね。なら、お勉強するしかない。


 侍女のニーナがカフェラテを入れてくれます。

 すいませんカミーユさん、と冷ましながら、飲みながらでもいいですか?と聞いて、講義を続けて貰います。


 カミーユさんも忙しい最中教えてくれているので、時間の無駄はいけません。


だけどまだ6歳の身体はまだまだ子供で、・・・そう易々とはいかないみたいです。


「オルテンシア様がまだ6歳であることは重々承知してます。こちらこそまだ小さな身体に負担をかけてしまっているので申し訳ないと思っています。」私にはそのお顔の方が眠気が・・いや、私には魔眼の影響はないとはいえ、カミーユさんを見るとトロンとなるのは眠気?それとも影響を受け始めているのかな?


「でも、・・魔力、だ、駄々もれは何とかしないといけないですから、自分の事とはいえ皆さんにご迷惑をかけているので早く何とかしないといけないですから・・・続けてください。」


 そしてカミーユさんは至って真面目な人だった。カミーユさんは休憩せず、講義が再開された。


「では、続きを。・・・制御は心の波動を抑えます。それには詠唱は不用ですし、私は他人の魔力に干渉することができます。但し、干渉といっても抑えるだけですが、発動を弱くしたり、強く押さえたりの加減は自在に出来ます。・・・但し、魔王である貴方にはいずれ敵わなくなると思います。」


「・・私が魔王だから?」

「そうです。」

「では、私はこの魔力を自分では制御できないと言われたのにどうすればいいの?」

「暴走してしまったら私が全力で止めます。でも・・・貴方のその素質、気質、その心のままならば、思ったように行動されていいと、私は思っています。・・・私は貴方の意思に、心に従うと、もうとっくに決めていますので。貴方が魔王である限り、いや魔王でなくとも、全てはオルテンシア様の身心のままに、私の全てを捧げると誓っています。」と揺らぎのない真剣な面持ちでカミーユさんが言う。


「あの、カミーユさん。私はまだまだ未熟者なのに、お飾りの弱い赤子同然です。・・何も知らないし、魔王らしく出来ないと思います。そもそも魔王らしい事さえもよくわかりません。ただ世界が私が見つけたのだって、たまたま魂が浮游していただけだったのかも知れませんよ?暁色のこの瞳だってたまたまそう生まれついてしまっただけ。前世で私は呆気なく死んでしまったし、組織に埋もれて、目立つことを嫌う日本人、ごくごく普通の平凡な人間でした。」


 カミーユさんはいいえと首を振る。「オーブリーが言っていました。オルテンシア様は謙虚が過ぎると。確かに魔族に謙虚という言葉はありません。魔界ではその謙虚は多くの者は弱みと捉えます。でも貴方は謙虚であるが、決して『魔王を止める』『逃げ出したい』とは言っていない。自分の弱さを知っている。でも投げ出して逃げようとはしていない。誰でも巨大な魔力や権力を得ると、尊大になります。驕り高ぶって破滅していくのです。世界はそれを決して許しません。でも貴方は自分の弱さを解決するための努力をしようと考える。」


「ちょっ、ちょっとカミーユさん。そ、それはかなりの買いかぶりです。私はそんなたいした者ではないのです。皆に助けてもらいながらなら何とかなるかな、位にしか思っていなくてすね?」私は慌てて否定する。そんな大層なこと思っていませんから!


「いいえ、貴方に出会ってほんの数日ですが、貴方は我らの魔王に相応しいと私は確信していますよ。でも魔法の訓練は始まったばかりですし、魔法の制御ができないとあの水晶がいったとしても思いのままに魔力を使っていいわけではありませんので、あくまでも制御はできるようになることが目標ですよ?私の全てを捧げオルテンシア様を支えると誓ったのです。一緒に計画を考えましょう。・・・オルテンシア様は計画を立てるのがお好きなようなので。」


 ・・・流石私の専属侍従様兼魔法の師匠。よく、私の事をご存知で・・・


 とにかく、立派な?魔王になるため、目標達成のための計画をたてねば・・・ならないようです。



まず、眠気に勝たないといけないかな?






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