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オルテンシアの瞳  作者: 香葉
第1章 目覚めたら、魔王でした・・・
29/74

(29) 告白・3 ─── by カミーユ・クリストフ・アイヴァン

明けましておめでとうございます‼


暫く、間が空いてしまいました。よろしければお付き合いください。

 


「異議あり!!」と熾天使(セラフィム)が叫んだまま、硬化していた。


 熾天使(セラフィム)だけ硬化するような、個別に魔法がかけることなど今までは出来なかったはずだ。

 なぜ硬化したのかわからないが、皆私を見ていた。しかし突然、硬化は解除され、熾天使(セラフィム)殿は私に突っ掛かって来た。


「ちょっ、ちょっとアルト、落ち着いて!何をしているのよ!」オルテンシア様は慌てて止めに入ろうとするが、オーブリーにしっかりかかえこまれているので、小さな手を振り回しているだけだったが、その必死に庇おうとしてくれる気持ちが嬉しいと思ってしまう。



「もう、我慢ならない。何度も魔眼でメデューサみたく、硬化させるなよ!」と熾天使(セラフィム)が騒いでいた。


 ・・・はて、メデューサってなんだ・・?


 しかし私は努めて、無表情をつくる。また、魔眼を頻繁に発動するような事は出来ない。

 しかし、硬化させたり、ましてひとりだけを硬化させる魔法を発動したことはない。


 この魔眼で魔法を発動させたのか、そしてそれを解除したのは、恐らくオルテンシア様だろう。


「・・・そうでしたか?それにメデューサとは何ですか?・・・私に他意は無いのですが、すいません、制御出来なくて。」とできるだけ落ち着いた口調を心掛けた。


 後でオルテンシア様に聞いたところ、メデューサとはオルテンシア様の前世で語られていた神話に出てきた魔物だということだった。


 私は吸血鬼族だが、硬化させる魔力はないはずなのだが、これもオルテンシア様の魔力の影響を受けているのだと思う。制御力が上がっているのだ。



『案外、熾天使(セラフィム)殿は怒りっぽいのですね。」と私が呟くと、熾天使(セラフィム)がいちいちピクリと反応していた。


 ふっ、案外、大人げない。


 まあ、天使にしてはここが魔界だと理解し、まだ自分の感情を抑えることが出来る天使(やつ)みたいだが、これ以上無駄に刺激を与えるのは良くないだろう。



「魔眼の"魅了"が、相手別に"硬化スキル"も使えるようになるとはなぁ。・・お前使いこなせるようになったのか?」・・・オーブリーの笑顔が多少ひきつっていたのが申し訳ない気持ちにはなるが、私は熾天使(セラフィム)の万が一起こすかもしれぬ、ある行動を阻止しなければならない。


「・・・さぁ?」私はいつもの無表情となって感情を隠した。そしてオーブリーの顔が呆れたように苦笑している。


 私は本当によい友に恵まれている。オーブリーでなければ、恐れられ、忌み嫌われるところだ。


「・・・カミーユ、まじ怖ぇーよその顔。もしかして、オルテンシアが影響しているのか。」オルテンシア様を抱き抱えていたオーブリーが唸るように言う。


 ・・・仕方のない事だ。もともとこういう顔なのに。そして、魔眼を発動するわけにはいかないのだから。


「・・・恐らく。」まだ確証は持てないが、なにかしらオルテンシア様の魔力が私に、そして周りにも影響を及ぼしていた。


「??・・・何のことですか?お兄様。」オルテンシア様はバチバチッと痺れにも似た魔力を発している。 ─── しかも無意識にだ。


「いや、こっちの話だ。しかし熾天使(セラフィム)殿が、オルテンシアの前世?では知り合いだったと言うが、そもそもオルテンシアの魂を強化するために、前世の魂と結びつけた??」


 オーブリーがその事について知らないようなので、オルテンシア様自身にはまだ話しはされていない事なのだろうが、それをご自身で感じ取っていたのか?いや、魔王の(オーブ)伝達式で、"世界"から語られたのか?


「オルテンシアは世界・・が魔王に相応しいと見つけてきた魂だからね。世界のお墨付きだ。」と父であるナバレ侯爵が言う。


「魔王に相応しいかはさておき、私が前世持ちとお父様は知っていたのですね?」コホンと恥ずかしげに小さく咳払いをして、オルテンシア様が言う。


 オルテンシア様は前世持ちだと言う。確かに6歳にしては、大人びた口調だったが、あのナバレ侯爵の娘で、このオーブリーの妹ならこんなものかと思い込んで、気にも止めていなかった。オルテンシア様の驚きようで、オルテンシア様自身も侯爵には伝えていなかったということだ。



 ・・・後の話になるのだが、オルテンシア様は前世の記憶持ちの話をしておかしいと思われ、嫌われるのではないかと打ち明けるのが怖かったと話してくれた。



「いや、誰かしらの魂とは思っていたが、生まれ変わっていたとしても、オルテンシアはオルテンシアであって、私とカリアの可愛い娘だよ?私たちは前世の君を知らない。ただ、この熾天使(セラフィム)は、(オルテンシア)の前世をよく知っているようだね?」ナバレ侯爵の何か含んだ声色が何故か恐ろしい・・・父の知らない前世を知っていると嫉妬されているようだ。


 それでもナバレ侯爵の様子を、熾天使(セラフィム)は気にも止めず、ゆっくり頷いて話始めた。

「魔王の前世・・・紫陽花(はるか)は歳が俺の二つ下の幼馴染みだった。親が従兄弟同士で親戚、元をたどれば血も繋がっているが、濃い血縁関係でもない。紫陽花(はるか)は看護師になって働き初めて暫くした頃、よく肺炎になって原因不明の関節痛に悩まされていた。・・・俺はそのころまだ医者じゃなく、商社に勤めていた。病気にかかった紫陽花(はるか)は暫くの間、入退院を繰り返していた。」


 オルテンシア様の前世での名が、"はるか"だと解る。だが気安すく、そして皆が知らない名前を呼び、前世での様子を知るこの熾天使(セラフィム)との仲がどうだったのか、と考えると胸の奥に何やら重くて、黒い感情が沸き上がった気がして、私は慌ててそれを飲み込んだ。


「従兄弟?恋人だったのではなくて?」


 ナバレ侯爵は全てを知っている顔をしながらも、オルテンシア様に気持ちを尋ねていた。


 オルテンシア様は勿論気付いていないし、さすがの熾天使(セラフィム)も些か聞きたくなかった台詞だったはずだ。


「やー、いやだ、お父様。アルトはただの従兄弟で幼馴染みでして、頭が良く何でも出来て、雲の上の人ような遠い存在だったのです。・・あら?だから天使に転生したのかしら?で、加えて医大に入り直して、医師になったのよね、アルト?」

 オルテンシア様は無邪気に熾天使(セラフィム)に尋ねていた。


「・・ただの、従兄弟で幼馴染みだって。浮かばれないねぇ、アルトシオン。」クツクツと智天使(ケルビィム)が笑っている。この智天使(ケルビィム)は大分意地が悪い。まあ・・・少しだけ、同情を覚えた。


 熾天使(セラフィム)の顔がショックでやや青ざめていたようだったが、でも直ぐに少し後悔した顔つきになってオルテンシア様を真正面からみつめていた。


「・・俺が死ぬ頃もお前の病気は解明されていなかった。約束したのにな、ごめん。」と頭を下げていた。


「仕方がないわ、私は感染症で死んだんですもの。」別に自分の死に、不満や、未練はなかったとオルテンシア様は言う。「でも、アルトが私の死の床でごめんと言ってくれたから申し訳なかったと思ったの。医師になってひとりでも多くの人を助けてもらいたかったし、医師になって、生まれ変わってまで医聖とは、天職だったのねぇ。」オーブリーの手が緩み、熾天使(セラフィム)の近くにちょこんとオルテンシア様が座る。「貴方には色々慰められたし、最後の時も一緒にいてくれて嬉しかった。ありがとう、アルト。」


「──── 紫陽花(はるか)っ!お、俺は!俺は・・・最後も何も出来なかった。・・だから言えなかった。・・す・・好きだった、って。」


 ビシッとこの場の空気が凍った気がする。否、凍った。やはり、天使(こいつ)は ─── !オルテンシア様は瞠目していた。


「知らなかっただろ?俺だって自覚したのが、お前の病気がわかってからだから。」

「・・・・・」

「だからここには、魔王が紫陽花(はるか)とは知らずに来た。でも、魔界で日本語で書かれたあの計画書を見て、紫陽花はるかだって確信したんだ。」思い余ってなのか、オルテンシア様の両腕はがっしりとホールドしている。


「今だって気持ちは変わらない。いや、この気持ちは本物だと確信した。お互いに姿形も種族も違うが・・いずれ、俺とけ、けっこ「いや、そればかりは許可できないねっ!」」」」


 皆で熾天使(セラフィム)の発言に有無を言わさず会話に割り込んで最後まで言わせなかった。



「・・・・。」どうもまた思わず石化させたみたいだ。


 しかし、オルテンシア様が熾天使(セラフィム)の顔を覗き込もうとしているので「オルテンシア様は今一度大人しくしていましょうね。」


 石化解除魔法をオルテンシア様が無意識に使って、この状態を解除しないように魔力を制御する。


「まだ、魔力のコントロールが効かないようなので、抑えます。・・私の魔眼が、個別にスキルが使えるようになったのは、多分オルテンシア様の魔力が私に流れて来るからです。」

「確かに俺たちにも流れてきている。」オーブリーも言う。ナバレ侯爵がオルテンシア様に魔力が垂れ流し状態になりかねないので、危険だと説明してくれたので、オルテンシア様は渋々納得されたようだ。


 まったく油断も隙もない。オルテンシア様に求婚する可能性も考えていたが、実行しようとしていたし、天使族との婚姻はオルテンシア様が魔王である限り難しい。・・・ナバレ侯爵の前例はあるが、天使は堕天しないと魔界にいることは難しい。(因みに短期間の滞在は可能だ。樟気に当てられる前に帰れば後は回復魔法と浄化されれば大丈夫と言われる。)魔界の樟気は天使には毒であり、逆に魔族で天界に在るには、光気が毒になる。だから、それぞれの種族は、それぞれの場所で暮らしているのだ。


「全く世界も面倒なことをしてくれる。オルテンシアの前世を知る男を送り込むとはな。」

「でも、あの医聖でなくては、オルテンシアが回復できなかったとしたら?」

「あいつは回復魔法しか使っていないと言ったぞ?」

「カミーユの薬が効いたのだろう。普通我々には薬なと不要な物だからな。」

「しかし、回復魔法の使い手が我々魔族にいないのは、今後も困ったことになるかもしれません。」と今後の事と対策をかねて話していたのだが、「あの~?ちょっといいですか!!」とオルテンシア様の声が聞こえた。


「「「なんだい、オルテンシア?」」」


「私の計画書、アルトに見せたんですか?」


 その事については私が答える。


 何故かオルテンシア様の顔が赤い。


「あっ、オルテンシア様が目覚めず、薬や、ハーブなどのことを調べていたのです。薬などについては人族の本からしか知識を得ることが出来なかったので、ニホンゴで書かれた薬物の本をようやく見つけました。熾天使(セラフィム)殿が魔界に来たのはその頃で、ニホンゴがわかるとのことだったので、本の詳しい内容やオルテンシア様が書く文字がもしかしてニホンゴなら、熾天使(セラフィム)様ならわかるのではないかと思ってみせたのですが・・・。」


 話しているうちに何故かオルテンシア様の剣呑さが顕著になり、私は訳が判らなくなっていた。

 確かに、オルテンシア様の書いた文字は読解が難しかった。でも私もニホンゴの理解できつつあるとは思うが、ニュアンスと言葉のリズムをつかんで聞き分けているので深い意味は理解できていない。



「・・・恥ずかしい。ひどいです!!カミーユさん。」


「えっ・・・?」・・・・恥ずかしい・・どう言うことだ?





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