(25) 転生というものがあるのなら ・1─── by アルトシオン
いつ新しい魔王が即位したとの知らせがあったのかは、定かではない。
私は、転生者だ。前世は人間、現世はなぜか天使だった。とりあえず、人生は全うしたが、最後は癌で死んだ。人としてはよくあるとも言える最後だ。
だから、前世の記憶を持ったまま生まれ変わったのも、何か思い残したことがあるからだと思う。
気付いたときより、天使でも最上位の熾天使の中でも、癒し、医薬を司る医聖として生まれ変わっていた。
前世は医者だったから、今のように魔法を使って治したり、腕なんてもげても生えてくる再生能力の凄さ、更には寿命の長さに初めは全然慣れなかった。
人間は弱すぎた。前世では、治せなくて絶望していた俺の医者人生返せっ!て気持ちになる。
しかし、魔法で簡単に治ってしまう手軽さに逆に疑問も持つ。あれほど手を尽くしたのに、助けられなかった患者は多くいる。
その最たる例が、俺の幼馴染みだった冠城紫陽花だ。彼女は難病だった。原因はわからず、対症療法しかない。病名がはっきりした頃には、すでに手遅れだった。最後は、ステロイドパルス療法による間質性肺炎の悪化、耐性菌による感染症が悪化し、儚く亡くなってしまった。
今の世には薬はない。抗生物質もなければ、鎮痛薬もない。そもそも要らない。
魔法で治せるからだ。そして、魔族には、癒し魔法の使い手がいないらしく、医聖である俺に話が回ってきた。
「今度、即位したばかりの魔王が、幼くて身体が弱いらしく、魔王の珠伝達を終えてから、ずっと昏睡状態らしいので、医聖に治療依頼が来ています。」智天使のセリムディアスが今日の議事進行役だ。
「なんで、我々が助けなければならない?あいつらは敵、魔族の王など勝手に死ねばいい。」
天使であるのに関わらず(慈悲深いはずの?)、好戦的な(狡猾な)権天使が言う。生まれ変わって驚いたのは、天使はかなりの"性格に難あり"な者が多い。前世でのイメージとはかなり違うので、生まれ変わった早々に、こんなやつらにに囲まれて過ごさねばならないことにうんざりした。そもそも治癒能力があるのは俺で、助けるのはお前ではない。
「わかった、行こう。」
「熾天使!余計なことをするな!」
周りはうるさいが、この間の戦いの負の枷が軽くなるなら、魔界にいくくらい何ともない。
そして、俺は初めて魔界に来た。世界球の間が魔界に移されて、この世界のパワーバランスが魔族に傾きつつある。先の戦いで勝ったのはあちらだ。こちらから仕掛けた責を問われ、むこう500年もの子孫誕生を禁じられるなど、いくら長命の我らでも、種の存続に関わる。
天使の主な九座は、前任者の死で入れ替わる。時に堕天すれば、座が空くので入れ替わる。ただし我々天使はそうしなければ、座が空かないので、新たに生まれたものがその座を埋めることになる。確かなヒエラルキーのもとで成り立っている。それは天界の珠が、魂を導く、とされている。
しかし、魔王は違う。前魔王が死ねば、その座につくものが魔王の珠を受け継いで魔王に就くらしい。血脈で受け継ぐことがないのは同じだが、リーダーを受け継ぐ種族によって違う。
種族が入り乱れた世界ではあるが、それぞれの国で暮らしていて、争い事を起こさぬよう、均衡を求められる。世界という意識を持った存在に驚くが、その存在が、俺をこの世界に転生させたのだろうと思う。
俺は初めて、天界より出て魔界へ来た。
魔王はまだ幼い。診ると確かに小さな体に魔王の巨大な魔力との融合中で、身体が慣れなくて拒絶を起こしているようだ。いわゆる異物と戦っている免疫反応だ。すんなり受け入れられる代物でも有るまい。幸い調合された薬が身体にあっているようだから、落ち着き始めているのようだ。魔界に薬があるとは驚きだか、治癒魔法をかけておく。医聖である俺の治癒魔法は一級品だから、すぐに効くだろう。
診察を終え、部屋の外にでると、皆待っていた。特に魔族達は魔王の状態の不安と我々天使に対する不信感を隠さない。
「あれは次期によくなる。いわゆる魔力酔いだ。治癒魔法をかけておいたから、次期に良くなる。」俺の診察も要らなかったと思う。薬の効果がよく出ていたからだ。あの薬をこの吸血鬼が調合したらしい。しかも、人族の本を読んで調合したという。
この無表情な吸血鬼・・もしかしたらあの魔眼の?
見ると日本語だった。しかも、魔王は日本語で読み書きできると言う。自分しかわからないといっているらしい。実際、書いた文字をみせて貰った。
覚えがある、少し右肩上がりの素直な文字。
オルテンシアという魔王の名前。オルテンシアはあじさいのフランス語読みだ。
紫陽花とよばれた俺の幼馴染み。
──── しかし、何だよこのカミーユさんを笑顔にする計画って。
でも、紫陽花らしいといえばそうかもしれない。いつも心配かけまいと笑っていた。それが逆に痛々しすぎて辛かった。
前世の面影はお互いに全くない。まして、先に死んだはずの紫陽花が、なぜか俺より後に生まれている。
告白することも出来なかった、淡い初恋。
死に行く彼女に謝ることしか出来なかった、無力な俺。
でも、今は魔力で救うことが出来る。早く目を覚ましてくれないか、と待ち遠しい。そして今度こそ、伝えたい。
──── 好きだったと。
今までにの分を読み返したら、誤字脱字が多くて。
すいません。これも、老眼のせいでしょうか。目が霞む・・・。拙い文章と共に少しずつ改稿していく予定です。それまで、・・・すいません。




