(24)天界の天使様・2
「天界の熾天使とどういったわけで、知り合いなのですか?」カミーユさんは抱っこを止めてくれない。
何の羞恥プレーですかー?
グイグイと押してみたが、がっしりとホールドされてます。
「そうだ、俺も聞きたいぞ。」とお兄様にも言われる。
「おい、そこの吸血鬼、紫陽花を放せよ。」
熾天使様が言う。・・もう面倒だから、アルトと呼ぼう。ちらりと、前世は有斗だったアルトシオン様を見ると頷いてくれた。
ひとまず独りで座って話したかったが、カミーユさんが離してくれない。
今は膝抱っこ中。・・・ダメだわ。ふぅ、とため息を吐きつつ私は話し出した。
「・・・えっと、あの~、私は実は・・・前世は人間だったと思い出したのはついこの間でして、お父様に魔王であると言われた直前に思い出したのです。
思い出してみれば、なかなかこちらの言葉が理解できず、日本語で考えてばかりでした。こちらで生まれた筈なのに。
・・・で、考えたのですが、もしかして魔王として生まれたオルテンシアに日本人の私の魂が乗り移ったのかとも考えました。熱でうなされているばかりであまりよくそのころの記憶が朧気なのです。」
そう、私はなぜ魔王として生まれ変わったのか。なぜ、前世の記憶を思い出したのかを考えていた。
「 ─── その事については私が答えよう。」いつの間にか、お父様が部屋にいました。
「お父様・・・」
「ナバレ侯爵。」と呟くカミーユさんに向かってお父様は困ったねぇ、と言う。
「その前に、カミーユ。オルテンシアを放しなさい。まだあげないと言っただろう?」
お父様の目も笑っていませんが?コワイ。
カミーユさんは渋々といった具合でやっと解放してくれる。
でも結局のところまたお父様に抱っこされた。グイグイをしてもしっかりホールドされている。・・またもや私は、ため息しかでない。
「オルテンシアは確かにカリアと私の娘だ。しかし、魔王の証しである暁の瞳を持っていても魂が弱く、儚くて消えてしまいそうだった。そこで、私は世界に願った。オルテンシアを助けたいと、ぜひとも魔王として育て、この世界の望む均衡をとるためには、また魔王を失うわけにはいかないと、なんとか生かしてくれるよう願った。」お父様は私の頭を撫でながら話す。
「・・世界はある提案をしてきた。異世界に同じように儚い生きかたをした魂がある。その魂と掛け合わせるなら生きられる、魔王としての役割も果たせる、と。」
「・・そう簡単にあの"世界"が動くわけではないはず。だが、その魂が紫陽花だったというのか?」アルトが言う。
「それもそうだ、親父。何を約束したんだ?」」何かを代償にしたのであれば・・・
「 ─── 私の命。」
「「えっ!」」「嘘でしょう、お父様!!」
「 ─── という提案もあった。」
「何だよ、脅かすなよ!」
「驚かせないでください。」と私も言う。
「やぁ、すまんすまん。しかし、その代わりの条件が、異種間の婚姻だ。」と笑いながら言う。
「「はあぁぁ?!?」」私も一緒に思わず叫ぶ。
私、まだ6歳なのにもう婚姻!?
「まさか、オルテンシア様ととこの熾天使の婚姻の話、まじだったのですか?」カミーユさんの言葉使いも段々と砕けた感じになってますな。
「いや、例えで出ただけだよ。
でも、オルテンシア?私は君には自由に生きて欲しい。ただ、魔王であることを放棄しなければ、誰と婚姻を結んでもいい。異種間の婚姻は別に難しいことではない。しかし、例えば魔族と人や獣人では、かなりの寿命の差があるのでお奨めしないがね。君に選ぶ権利があるので、無理には婚約、婚姻はしなくてよろしい。とはいっても私が簡単に許さないからね。」と悪魔の微笑み。というか睨みを効かせて、周りに放っている。
皆さん、顔がひきつっているではありませんか!お父様の言葉だけで、私の将来の婚姻の困難さが見えてきそうです。
「さて、君。熾天使君。君は医聖だったね。わざわざ天界からありがとう。流石、医聖だけある。オルテンシアがここまで早く快復できたことは今までになかったからね。」
「いえ、この度は前の戦いの負の遺産を軽くして貰えるいい機会でした。天界の医聖としても、流石に500年もの子孫誕生が封じられるのは困るのでね。」
「ついでに貴方に借りも返せたので、よかったですよ。いつまでもズルズルと引きずるのはこちらとしては、何とも落ち着きませんからねぇ。」
「・・・セリムディアス、お前に言われたくないが?」
「不老不死者が何を言うのです。」
「お父様とセリム様はお知り合いだったのですか?」
「・・古い、ね。」そしてセリムさんをひと睨みして、「私は元は天界の者だったからね。」
「「えー!?」」また、お父様が軽ーく爆弾を落とした。
「えー、だってね。カリアと出会ってしまったから、仕方ないだろう?私は魔界に来て当時の魔王に仕えて、やっと婚姻はを認めて貰ったのだ。」ふふんとお父様なぜか得意気。
皆さん驚きを通り越して、呆れています。
「天界の最高位天使の位をあっさり棄てて、魔界で堕天したのですよ、この人は。」
「したら、なぜか不老不死者になってしまってねぇ。」でも、いいんだ。カリアとオルテンシアがいるからね、と言う。
その頃の天界と魔界は今よりもっと敵対していて戦いばかりしていたと言う。まともに外を歩けないくらいに、凶悪な魔物も多くいて、瘴気に満ちていた。お父様とお母様が始めて出会った時は戦いの最中だったらしい。そんな中セリムさんが魔界で怪我をして囚われてしまったそうです。そのお世話係りがお母様のお母様、つまりおばあ様だったそうですが、それは美しい狼族だったそう。
「すでに彼女は人妻で、私の恋もあっけなく終わりました。」
「こいつはね。惚れっぽいのだ。」とお父様が、言う。
「お前・・・。」アルトはセリムさんをみて呆れています。
「で、人質解放の話し合いで、この人が駄々こねて、代わりに魔界に残ると言い出した。」いや~懐かしいねぇなどとセリムさんは言っている。
「・・・・。」
段々、微妙な雰囲気になっています。どうして、セリムさんが天界戻っていて、お父様が魔界にいるのか?
「・・私はカリアに出会った。いわゆる一目惚れだな。」
「・・・・・・。」更に微妙な空気になった!
「そして堕天して、今に至っているというわけだな。」お兄様が話を超省略した。「もう、いい親父。・・勘弁してくれ!」
オウッ・・プス・お兄様にとっては、もうお腹一杯な話ですね。天使様達はどうも惚れっぽいらしい。
「正に異種間の婚姻で均衡を図った例です。そして暫くはそれで均衡が図られ、平和になりました。その時の借りと言うのはこの人が魔界に堕天したから・・しかし、時折、その均衡を乱すものが、生まれます。」とセリムさんが言う。
「・・・。」また微妙な雰囲気?
皆、カミーユさんを見てる。
カミーユさんが無表情を通り越して、苦しそう。「・・カミーユさん。」私が声をかけるとビクッと身体が震える。
「大丈夫ですか、カミーユさん?」カミーユさんなんだか、泣き出しそうです。
顔は無表情で泣きそうには見えない顔。
それでも私を見ている。
・・・感情はもう私に伝わっているよ。私はカミーユさんにわかっていると伝えたかった。
「ねぇ、お父様借りは返したのでしょう?異種間の婚姻だって無理にとはいわないのでしょう?気休めまだ私は魔王になったはかりで、頼りないのは解ります。私、頑張りますから暫くはこのままで、カミーユさんにそばにいて欲しいです。」
「・・とオルテンシアは言っているが?カミーユ。」
カミーユさんはもう泣き出しそうだった。「・・・はい、全力でお側でお仕えさせて頂きます。」
「異議あり!!」皆、ほっこりしているところに、その雰囲気を壊す異議の声が響く。
あ、すっかり忘れてました。
有斗、いや、アルトシオン様だった。




