(23)天界の天使様・1
さて、お風呂に入ってさっぱりして、何かつまめるものを、とルチアがサンドウィッチを用意してくれました。
「ふふふ~、美味しいです。」私は無類のポテトサラダサンド派なのです。ルチアのサンドウィッチはポテトサラダに角切りチーズ入りです。また、リンゴも入っているんですよ。
まじ美味しい。
パンにはやはり牛乳が飲みたいのですが、魔界には牛乳がない。魔獣の乳から作った脱脂粉乳みたいなものしかないのです。そのお陰でかなりのお菓子作りが制限されるのですよ。生クリームも手に入れるのが難しいのです。
「牛乳飲みたーい。」ゴクゴクってね。
「牛乳?ココアではダメですか?」ルチアはココアなら美味しいのがありますよ~っていってくれます。ココアなら牛乳で溶いたものがいいです。
「ウーン、やっぱり紅茶にします。」ココアも大変貴重なものです。魔王といえども、わがままいけませんね。
「あの、天使どもはココアばかり飲んでいるぞ。しかも、超甘くしてな。全く遠慮というものも知らないらしい。」っと言って、お兄様も紅茶を飲んでいる。砂糖もまた貴重なのです。
朝食まえのティータイムは終わり、会食が出来るムーンルームに移ります。
席が6つほど用意されています。魔族側は私、お兄様、カミーユさん、と後でお父様も来られるとか。天界側は、熾天使様と智天使様がいらっしゃるとのこと。それぞれ護衛の騎士がついてお話しするらしいです。
席に掛けて待っていると、いらっしゃいました、天界の天使様達が。熾天使様と智天使様です。
私は席を立って、お出迎えです。
「この度は大変ご迷惑をお掛けしてしまいました。私は魔王オルテンシア・ペルラと申します。」と膝を折り、胸に手をあてて淑女の挨拶をする。正式に魔王になったので、私の名は、オルテンシア・ナバレからオルテンシア・ペルラとなりました。
「これはこれは可愛らしい魔王様だ。ご丁寧にどうも私は天界で智天使を賜っておりますセリムディアスと申します。こちらは熾天使のアルトシオンです。以後お見知りおきを。」と言って智天使様に手を取られ、チュッと手に口付けられた。
ギョッとしましたが、ここは騒がずニコ~と微笑んでおきました。
無駄にキラキラしてるな・・流石天使様だけあってお美しい。カミーユさん程でないけど。
聞いていた話だと、天使は魔族に触りたがらないということでした。首を傾げていると智天使様が手を離さない。
「あ、あの~~?」いい加減離して下さいよ~。
「「おいっ!」」とお兄様と熾天使様から同時に地を這うようなお声が・・・カミーユさんは何も言いませんが、ぺりっと引ったくるように私の体を後ろに引っ張ります。
あっ、カミーユさん、目尻もピクピクと動いて智天使様を睨んでいます。
「ああ、すいません、余りにも可愛くてつい。」智天使様は悪びれた様子など無く、にこにこされている。
「セリムディアス、お前なぁいい加減にしろっ!」
「え~だって、アルトシオン。彼女でしょ?君の紫陽花ちゃん。」
─── はい?私には君の紫陽花と聞こえたのですか?
なぜその名を知っているのです?
それは私の前世の名前ですがっ!
すると、熾天使様が更に爆弾を落とす。スッと私の前に膝つきになって目線を合わせて言った。この人は、きれいというより、精悍な男らしい、鼻筋の通ったお顔と切れ長の瞳をしている。
「 ─── 紫陽花、ずっとお前を探していた。」
「 ─── あ、あのう?どちら様で?」見たことも会ったこともわからないのに、いきなり前世の名を呼ばれた!?探していた??
カミーユさんがぎゅーと私の手を握る。見上げるとなぜか悲しそうな苦しんでいるようなお顔をしていた。
「カミーユさん・・」
お兄様も目を丸くしている。
「俺だ、俺。有斗だ。柏木有斗。紫陽花俺のことなど忘れたか?」また、声をかけられて、熾天使様の方に顔を向けた。
──── ん!?あると、あると、ある、・・と!?かしわぎあると・・!!
覚えているような、聞いたことがあるような・・・
「はあぁぁ~~!?有斗ぉ~!?嘘でしょ!貴方なぜここにいるのよっ!?」突如、ハッと思い出した。
「お前だって!なんだって魔王になんか生まれ変わっているんだ?何、幼女って。何、そのロリータ衣装。コスプレ?」前世と口調が変わっていない。
「いっ、いいでしょ!まだ6歳なんだからっ。服はお母様の趣味。って貴方こそ、天使!?天使!?まじで~!?」
笑える~~!とヒーヒー笑っていたら、あっと叫ぶと同時に腰が引っ張られてカミーユさんに抱っこされていた。
目の前に超絶美貌 ─── あ、あれ?こわーい顔で笑ってる。
「オルテンシア様、どういうことか説明していただけますね?」
私はこっくんこっくんと頷くことしか出来なかった。
怖い~。
今、無表情より怖い笑顔になっています。でも、目は全く笑っていません。
そうです。私が前世の記憶があることを、言っていませんでした。




