(21)天界からの訪問者・2 ── by カミーユ・クリストフ・アイヴァン
やや短めですが、お読みいただければ、幸いです。
「確かに過去の記録では、確かに我々が請われて治癒に訪れたのは、近年になってからですね。」
智天使そう言われて、オーブリーが頷き返す。
「まぁ、我らも熱くらい出すさ。怪我を負えばね。でも次期に回復する。でも、オルテンシアは生まれたときから、身体が弱い。魔王の珠を得たら強くなれるのではないかと思ったが、そうも上手くはいかないらしい。今回のことは、父が何やら裏で手を回したようだが、兄としてまた魔王の臣下として、わざわざ御足労いただいて、感謝している。」
「別に礼には及びませんよ。昔の借りを返せるのでスッキリした気持ちで、今回は魔界に来れましたからね。先の戦いでは好戦的な一部のものが暴走したお陰で、ありがたくもない罰を受けて、実はこの派遣を受ければ、子孫誕生停止の罰を半分減らしてもらえるのですよ。」向こう500年も生命が誕生しなければ、種族存続の危機に陥る可能性がある。例え、長命であろうともだ。
でも、よく世界が許したものだ。よくいう均衡のためだろうか、ということはオルテンシア様の病は何の為なのだ?
「そうそう、いつまでも智天使と敬称で呼ばれるのもどうかと思うので、自己紹介させていただきたいのですが。」
「ああ、それは失礼した。」
「私は智天使の位を賜っています。セリムディアスと申します。セリムとお呼びください。こちらが大天使、護衛のテオドール、そして熾天使のアルトシオンです。彼は天界では医聖、天界一の癒し魔法の術者です。きっと、オルテンシア様の病の原因を導き出し、癒してくれるでしょう。」やはり、あの熾天使が天界一の癒し魔法の使い手か。
「私はオーブリー・ナバレ、因みにオルテンシアの兄だ、こちらはカミーユ・アイヴァン、後ろに控えているのが、シセロ・サヴィンだ。我々は皆、吸血鬼族だ。」
「ほう、5大爵家ナバレ、アイヴァン、サヴィン家のご子息が、魔王陛下のお側を御守りしているのですね。」
「あと宰相の息子も就いている。オルテンシアがまだ幼いからな。天界は争うつもりが無いということだが、竜族や他の種族はわからないからな。」
「はは、魔族の強さはわかっているつもりです。・・これを期に仲良くやっていきたいものですね。」
「そう願いたい。」
「さて、そろそろ診察が終わる頃でしょうか。」
そうセリム殿がいうとほぼ同時に、寝室のドアが開けられる。捲っていたらしい袖を下ろしながら、熾天使が出てくる。
「喉が渇いたろう?」「ああ、くれるか。」などといって応接間にやって来る。
「貴殿の見立てはどうだった?」とオーブリーが尋ねる。
「あれは多分、次期に良くなる。やはり魔力酔ではないかと思う。巨大な魔王の魔力を受け入れて、拒絶反応が過敏に出てしまったのではないか?魔王は少々自分の免疫的な機能を攻撃する体質と虚弱体質であるようだし、時間はかかるかもしれないが、次期に良くなる。癒し魔法をかけておいた。・・あの与えていた薬も、効果が出ているようだ。」熾天使はそういうと出された冷たい茶を一気に飲み干した。
そうか、良かった。とホッと息を吐く。少しは役にたてたことが、嬉しくもある。しかも医聖に言われたのだから。
「アルトシオン、あの薬は彼が調合したそうだよ。」
「ほう?よく出来ていたな。」魔界で治療薬やハーブに出会うとは思わなかった、という。怪しい薬や幻覚を誘う薬の使用は魔界では日常茶飯事だが、治療目的の薬はほとんど無い。
「彼は医聖でもあるから、薬の研究・製造方法に詳しいですよ。」とセリム殿が言う。
「・・人族の本を参考にしたのだか、いかんせん字が読めない。オルテンシア様なら読めそうなのだか。」と私がいい及ぶと熾天使が反応した。
「人族の本を読む?それは何語だ?」
「オルテンシアは"ニホンゴ"と呼ぶ。自分しかわからない文字といって難解な文字を書いている。それをカミーユはみたことがあって、人族の言葉ではないかと推測した。」オルテンシアはずっと意識無いから確認できていない、とオーブリーは言う。
「・・・ニホンゴ・・。魔王は読めるのか?」
「ああ、多分読み書き出来るはずだ。」
「そうか・・・」
「もしかして、熾天使殿も読めるのか?」自分の動悸がどこかで聴こえるような気がした。
「・・ああ、判る。」
「・・・・・。」また、ドクンとなる。
「・・そうか、オルテンシアはこちらでも紫陽花のことをいうのだろうか。」
「あじさい?オルテンシアならばそうだが。あの暁の瞳が移り色なので父がそう名付けた。」では、紫陽花なのだろうか、と熾天使が呟く。
「・・やっと会えた。」
何やら聞き捨てならない不穏な台詞に、何故か不安が募ったのは、気のせいではなかった。
少しずつ、オルテンシアの周りがザワザワし始めました。
とりあえず、カミーユ視点は終わりです。




