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オルテンシアの瞳  作者: 香葉
第1章 目覚めたら、魔王でした・・・
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(18)狂喜の瞳・3 ── by カミーユ・クリストフ・アイヴァン

 


 魔王の(オーブ)の伝達式が始まった。

 オルテンシア様が魔方陣のなかに足を足を踏み入れる。


 風が起こり、小さな(オーブ)達がオルテンシア様の周りに集まり、それは頭上で大きな塊ととなる。


 あれが暁色の(オーブ)───魔王の(オーブ)だ。


 オルテンシア様はその様子に純粋に歓喜している。


 予言者マハが呪文を詠唱し、魔法磁場が揺らぎ始めるのを感じた。今回私は、その魔法磁場を安定させる役目を担っている。


「うううーーーッ。」オルテンシア様は苦しんでいた。あの魔王の(オーブ)を受け入れるには、やはりまだ身体が小さすぎたのではないか?


 まだ魔法磁場の暴走はないが、慎重に進める。私の周りに風が起こりが光を放ち、魔法磁場の揺らぎを抑える。


 魔王の(オーブ)の伝達式というのは、魔王の(オーブ)という無限にも近い強力な魔力を、もとある魔力と混じりあわせ馴染ませる。身体に無理に押し込める行為だ。


 魔王の(オーブ)を取り込んだ時は流石に苦しんでいたが、元々の魔力が弱かった為か、拒絶はなく思っていたより融合はスムーズに進んだようだ。


 とにかくオルテンシア様への負荷が少なかったことに安堵した。魔法磁場の乱れもそうは強くなかった。




 今は、(オーブ)の光に包まれ、世界と交流しているのか、私たちには世界の声は聞こえない。オルテンシア様の姿はわからないが声だけが聞こえていた。


 魔法磁場の揺らぎも今は収まっている。

「魔王 ─── 暁のオルテンシアの誕生です。 世界の声を聞き、均衡を保つ努力をするように。」予言者マハが世界の意思を伝える。

「─── 承知いたしました。」答えるオルテンシア様を覆っていた光が少しずつ霧散して薄くなっていく。



「・・・ オルテンシアが成長した。」とナバレ侯爵が呟く声が耳に入る。


 そこには背や手足がすっと延び、だか丸みを帯びた、しなやかな女性が立っていた。髪は流れるような艶やかな長い黒髪、そして瞳は夜明けの空のような暁色・・


 その人は自分で身体を擦ったり、胸を・・揉んだりしていたが、私はその成長した姿に唖然とした。



 魔王 ─── 暁のオルテンシア



 美しさと強さ、まだ不安定ながらも、魔力の強さは他を圧倒していた。



 これがオルテンシア様の未来の姿なのか。


 魔王に相応しい神々しいまでの美しい姿と溢れる魔力のオーラは暁色 ・・・



「オルテンシア、自分の胸を皆の前で揉まないように。……そして他の者は即刻記憶を消せ。」傍らにいるナバレ侯爵の威圧感も半端ない。


「不可抗力だ!そ、それよりも、オルテンシア様はもうこのまま成長した姿のままなのか?」宰相の言い分はごもっともだ。


「いえ、次期に身体は戻りますよ。魔王の(オーブ)を受け入れる身体(うつわ)の成長を一時的に進めただけです。」予言者マハが冷静に答える。




 ─── そうか、まだ猶予はある。



 私は密かに息を吐いた。


「それにしてもこの魔族の国ペルラ王国に"暁のオルテンシア"と呼ぶのに相応しい、魔王を戴くことができて、大変喜ばしいことです。また後のお姿までも拝見できて大変嬉しゅうございます。」さっそく絵姿を描かせましょう、と皆新しい魔王をいただくことが待ちきれない様子だ。


 オルテンシア様は皆の喜びを見て安堵した表情をしていた。自分の魔力と成長した姿に驚いているのだろう。周りを覆う暁のオーラの揺らぎを感じる。その様子ににまだ誰も気付いていなかった。


 傾いだ身体を支える。女性にベタベタ触るわけにもいかないが、この場合仕方あるまい。

「大丈夫ですか?」流石に魔王の(オーブ)と融合したとはいえ、まだそれを身体に馴染ませるには、まだ時間が必要なようだ。・・・ しかし、ナバレ侯爵とオーブリーの威圧が半端ない。


「まだ無理はいけません。魔王の珠オーブはまだ馴染みきっていないようです。暫く馴染むまで苦しみを覚えるかもしれません。」この際、親兄弟の嫉妬などには構っていられない。私は魔王の侍従なのだ。


「・・そう・・みたいです、ね。」オルテンシア様は意識を保つのも限界に近い様子だ。

「オルテンシア様、お疲れさまでした。・・・暫くお休みになるといいでしょう。」私はオルテンシア様の瞼を手で臥せて、意識を手放そうとしているオルテンシア様を抱き上げる。羽のような軽さだが、身体はしなやかな成熟した女性の身体。


 うるさい外野など無視だ。オルテンシア様を護り支えるのが私の役目、側にいられる意義なのだ。オルテンシア様はこんな「魔眼」持ちの私にも純粋な暁の瞳を変わること無く向けてくれる。


「まだ、もう少し幼いままのお姿でいて欲しいと言うのは、無理な願いなのでしょうか・・・。」



 願わくはまだ幼いままで。



 成熟した女性になど、急いでならないでいてほしい。その優しい心と美しい純粋な瞳のままでいてほしいと願うことは無理なのか。




 ───あの時は本当にそう思っていた。愚かな自分を呪いたい。


 繰り返すことに怯えた自分の愚かさに、私はまた深く後悔する。


 でもその時、まさか自分がオルテンシア様にロリコンと思われていたなど知るわけもないのだから。










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