(12)魔王の珠(オーブ)伝達式・2
今日はゼブラ柄のヒラヒラ袖のワンピースです。
お母様の好みなのはお分かり頂けましたでしょうか?
お気に入りというのはデザインというか、形というか、ワンピースの型紙が同じで何枚も生地違いで作ってあったものです。
いつの間にかゼブラ柄と、やはりあった、ヒョウ柄ワンピース。しかもピンクベース。色々バリエーションあり。
おーい、6歳にヒョウ柄とは、やり過ぎですよね?6歳でアニマル柄って、どこ攻めに行くの~
「せめて白黒のゼブラ柄で……。」
「お嬢様の瞳の色に合わせて紫とか、青とかは?」
「白黒で!」
これからこんな攻防が毎日続くのかな……。
「オルテンシアちゃーん、おはよー!」
「あっ、お母様おはようございます。今日もご機嫌ですね!」
狼族のお母様は、魔族でも朝に強い。お父様とお兄様はどちらかというと朝は弱い。
今朝は珍しくお兄様が早起きでした。お城に泊まったからですね、きっと。
お父様はまだ起きてないそうですが、もうじきに起きるでしょう、とのことです。
朝食を頂いている時に、侍従のカミーユさんとお兄様が部屋に顔を出した。お母様は「やだっ、まだお化粧してないのに~っ」て言って出て行ってしまいました。
「おはようございます、オルテンシア様。」
朝からカミーユさんに会うとは。
「……おはようございます。」
夕べ、泣いているところを見られてしまって、ちょっと気まずい。
でも、カミーユさんはいつもの無表情のままで、今日の予定をつらつらと読み上げる。
逆にそれで良かったのかな、なんか寂しいような?
うーん、なかなか上手く馴染めない感じ。私の専属侍従をしてくださるなら、カミーユさんと何とか上手くコミュニケーションがとれるようにしたいですね。
よし、決めた!私の『対カミーユさん年間目標』
なかなか達成が難しそうだから一年計画です。
問題点#1:カミーユさんの無表情が怖い為、上手くコミュニケーションがとれない。
1、カミーユさんと上手くコミュニケーションがとることが出来る。
2、カミーユさんを笑顔にさせることが出来る。
後で、具体策考えよう!
なんか、看護計画みたい、ふふふ。この人を笑顔にしたいっておかしいね。
「何を書いているのです?」
ふふふ…?あっ、見られた。カミーユさんに見られた。
「何語ですか、この文字。」私がノートに書いていた文字を指差す。カミーユさん相変わらずの無表情だったけど、少し瞳が揺れてる?
あっ、思わず日本語で書いていました。「私だけがわかる、言葉です。」
「…………。」無表情の顔が怖いよ~。
「そういえば、オルテンシアはなかなか言葉が話せなくてな。よく、聞いたことがない言葉を話していたな。ニホンゴって言うんだっけ?」
「…………。」余計なこと言わないでお兄様。
キッと私はお兄様を睨む。
私が睨んでも、お兄様はニヤニヤ笑っていて、私とカミーユさんの様子を見ている。
カミーユさんが、私が書いた日本語を凝視してるよ。
美男子って無表情だと、なんでこんなに怖いの?
今まで感情を面に出す人ばかりと、接してきた私には、感情の消えた表情はとても恐ろしく感じてしまう。
前世のせいかもしれません。
私は患者さんの看護をしてきて、突然の死の危機に面した患者さんやその家族に接してきました。
そして、私自身も死の危機を目の前にしました。
皆、私の前では明るく振る舞ってくれていた。でも時折悲しいような、哀れみを浮かべていることもある。
私はそうして相手の顔色を伺ってしまう癖がついていました。
感情を隠した無表情は相手を知ることができない。
「えっ、ええと、大したこと書いてありませんよ?私の覚書です。きょ、今日の予定が書いてあります。」私は紙を覗き混んで指差す。
「タイムスケジュールが?」
「そ、そうです。これが朝これから、世界球の間に行って、伝達式……。」
「………。」
ふーんといった感じで、私を見てるよ!
「私の名前は貴方の言語ではどう書くのですか?」
「── は?えっ?ああ、こう書きます。」なんで、突然?
私は紙の隅にカミーユと書く。
「フーン、そう書くのですか。ではここに書いてあるのは?カミーユとたくさん書いてあるのですが?」
あっ、私の対カミーユさん看護?いやコミュニケーション計画書だ。
沈黙、ここは黙秘を貫きたい。
言ってなるものか。
な………なるもの…か……
「ん?」カミーユさんが私をにらんでいる。いや無表情だから、見てるっていうのか。
「…………カミーユさんとコミュニケーション計画書です!」私は、沈黙に耐えかねて、とうとう白状させられた。
「コミュニケーション?何て書いてあるのです?」
「あ、あの。」言わないとダメなの~?
「まずコミュニケーションとはどういう意味でしょう?」えっとそれは言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションがあって、ん?あの、眼が笑ってないような?……ご、誤魔化せ、何とか誤魔化せっ!
カミーユさんがじと~ぅ、とまだ私を見ている。……うっ、無理っ!
「……カミーユさんとどうしたら上手くコミュニケーションがとれるか問題点と目標まで書いてあります。」
「ふむ、私の問題点、ですか。」
「 ───!!」
私がアウアウ言って焦ってあたふたと困っていると、ぶはっとお兄様が吹き出した。
「ぶはっ、その辺にしてやれよ、カミーユ。」前屈みになったお兄様の肩が激しく揺れてる。
そして、私は少しだけ、ほんのすこーしだけ笑ったカミーユさんを目の前で目撃することになった。
少しだけの笑顔だったにも関わらす、その破壊力の凄さは、メガトン級。
……そうか、カミーユさんの無表情の理由が何となくわかり、気の毒になった。
─── これでは、男も女もヤられる、と。
次はお兄様視点の予定です。




