(11)魔王の珠(オーブ)伝達式 ・1
さあ、魔王の珠伝達式の日の朝です。
ギャァァーーっと、怪鳥の声で目を覚ましました。
凄い叫び声で、飛び起きてしまった。
そうだった。ここは魔界でした。
日本の朝の定番、鶏の鳴き声ではないのだったと。都会では、もう鶏ではありませんでしたが……
外の方を見ると空はうっすらと明け始めているようでした。
暁 ─── 夜明け、空が濃紺から薄紫や茜色に色が移る、不思議な色合い。
私の瞳の色であり、代々の魔王の瞳の色でもあります。
私は起きて、ガラス窓の近くへ行って、移りゆく暁の空を眺めた。
なぜ、私はこの世界に転生したのでしょうか?
そして、なぜ魔王なのでしょうか?
その意味が全くわからないのです。
自分の前世を朧気に思い出して、病気ばかりの、どこか諦めもあった人生の終わり。
辛い治療、動けない身体だったけど、私ってそんなに生に未練があったのでしょうか?
それよりも、またベッドの上で過ごさなければならない日々、記憶を思い出す前が辛かった。またなの?って思っていました。なぜその"また"って思う自分の感情に、戸惑っていたのも事実です。
前世の記憶と交わり馴染むかは、正直わかりません。
魔王だと知らされてからほんの数日しかたっていない。あっという間の魔王の珠伝達式と魔王就任の日になっていました。
慌ただしかった日々。
魔王崩御に伴う、魔王就任。
「魔王の珠が魔王を選ぶ。だけどお前は生まれながらに、魔王の珠に選ばれて、生まれてきたんだよ。しかし魔王であっても、私たちの大切な娘には代わりはない。これだけは忘れないでいておくれ。私たち家族は、どんな時でもオルテンシアの味方だと言うことを……。」
夕べ始めて、この魔王城で寝ることになった時、入浴中を終え、寝支度をしていると、お父様が部屋にきてくれました。その時そう話をしてくれて、心はアラサーでも今はまだまだ子供、泣くまいと思っていた涙腺は崩壊し、お父様に抱きついて泣いてしまった。
お父様以外いなかったはずなのに、なんと!カミーユさんに見られてしまい、恥ずかしかった。
泣き止んだらなぜか部屋にいて、気まずそうにしてましたが、頭をよしよしと撫でてくれました。
ぎこちない微笑み?を少し浮かべて
「今夜から専属侍従として、お世話いたします。何かありましたらお呼び下さい。」って言って出ていった。
……でも朝になってよく考えたら、どうやって呼ぶのかよくわからないのだけど?
後でカミーユさんに聞かねばならないかな。
「どうした、オルテンシア?」
オーブリーお兄様がいつの間にか後ろにいました。私の部屋は居間を中心に寝室、ムーンルーム(サンルーム的な食堂兼お茶室兼会議室)お客様をもてなす部屋、台所、バスルーム、衣装室、侍女部屋そして家族室がある。
とてもとても私の居住スペースは広くとられていて、寝室ではもちろんひとりぼっちで寝てる。
もともとひとりでしたが、すぐに侍女のルチアとニーナが来てくれて、熱で寝込んでいるときは、そばにいてくれました。
昨晩は寂しくないように、オーブリーお兄様が家族室に泊まってくれてました。もちろん、城内にはお父様とお母様も泊まってくれてました。
「…… オーブリーお兄様、起こしてしまいましたか?すいません。」
「いちいち謝るな、オルテンシア。」
「えっ、ごめんなさ、あっ。」っと言って口を押さえてみたが、気が緩むとつい謝ってしまう。
オーブリーお兄様は苦笑して、私の頭をポンポンと叩く。
「……まぁ、その謙虚さがオルテンシアのいいところだけど、魔王になればそれが侮られる原因となる。まだ幼いからいいが、これからは気をつけた方がいい。魔族に謙虚さなんてひとかけらもないからな。」
「…… それでも、私は感謝の気持ちを伝え、自分に非があれば謝るつもりです。」
「……そうか。」「はい!」
「── よし、こい!」お兄様がニコッと破顔し両手を広げる。私はお兄様の腕の中に飛びついて、抱っこしてもらう。
「─── 暁のオルテンシアか。本当お前の瞳は魔王の瞳なんだよなぁ。移りゆく夜明けの空の瞳だ。」そう言って私の瞳を覗きこむ。
顔と顔が近いけど、お兄様やお父様と話す時は、いつもこの距離感を好む。前世日本人の私にははじめは馴染めないものだったけど、思い出す前は自然にしていたんだもの。とはいっても照れますね~。お兄様もお父様も美男子、それは整ったお顔をしているのでっ!
「本当、お前は可愛いなぁ。」お兄様の顔がでれでれに崩れ始める。あっまずい状況だ。スリスリ、スリスリ…… そのうち私の顔が赤くなってしまう。照れてるからじゃありませんよ。お髭が擦れるのです。
「─── 若様、それくらいに。お嬢様のお顔がお髭で擦れて赤くなってしまうでありませんか。今日は晴れの日なのですからね、困ります。」ルチアもいつの間にか側にいる。
「おっと、悪い悪い。オルテンシアが可愛いからいけない。」魔法で擦れたところを直してくれます。ポァ~と温かくなったと思ったら、ヒリヒリしたところが良くなってました。
「さあさあ、お着替えして、朝食にいたしましょう?」
……今日もあのお衣装達なのかな?
「フフフ、大丈夫ですよ。お屋敷から持ってきましたから。今日はあのお気に入りのドレスですよ。」
……ヒラヒラ袖の黒字にピンクゼブラ柄のワンピースでした。
ゼブラ……お気に入りでしたっけ?
多分、明日はヒョウ柄だね!




