フルーツ姫・共通① 美味っていいなさい
1お姫様は無愛想な彼がお好き?
「どう?我が国自慢の果物の味は」
果物の国フルーテアの姫・アレクサンドリナは、隣国で評判の高い、農家の男・レスタンスを呼びつけた。
「不味いな」
レスタンスは出された果物をひとかじりして、手を付けるのをやめた。
「なんですって!?」
「俺が作った野菜果実だ食ってみろ」
姫が癇癪を起こす前に、柔らかな苺を口にほおりこんだ。
「美味しい…アンタ何者!?」
「只の農人だ」
「なにそれ聞いたことない農民とどう違うの」
「自称だ。自分の一人為に食い物を育てているって意味でな」
「ふーん。きにいった!今日からあんたは私の専属農家ね」
「は?おいまさか…求婚か?」
「べつに旦那になれとか言ったんじゃないわよ!」
「だよな…」
◆◆◆◆◆◆
「アレクサンドリナ~!」
金髪の少年がこちらへ走ってくる。
「あらヴェイリー」
「今日はひまっ?」
この犬みたいな人なつっこいのは公爵の二番目の息子でイトコ。
「ええ、栽培中フルーツに水をやれているかマシンの状態を見てから過去のデータと比較して……その後ならね」
「え、あの……それ暇っていわないような」
彼は兄がいななって寂しいのだろう。
ヤサヌイでも人気のレスタンスをこちらで独占しているから、その対価としてこちらの公爵の息子でヴェイリーの兄ヴェイルビーを行かせた。
私は作業を手早く済ませ、ヴェイリーとお茶をすることにした。
「このフルーツさっきとれたのだけど、どう?」
「君の作ったものならなんでも美味しいよ」
なんてお決まりの台詞を言うヴェイリー。
もしかして今まで私は不味いものを人に食べさせていたのに相手が王女の私に本音を言えないから気がつかなかったのだろうか。
◆◆◆◆◆
「はあ……」
「どうしたんだい浮かない顔をして」
私が山を見ながら黄昏ていると、紫髪の青年が声をかけてきた。
彼は大臣の息子のレグドで、私が幼い頃からよく会っている。
先祖が富めるものしか住めないプルテノから追い出された一族だという。
紫の髪をしているのは純粋なプルテノ人だ。
「レグド……私フルーツを作るのやめようかしら」
「ならやめたらいいじゃないか」
「いや、なんでそうなるのよ」
「だって、やめたいんだろう?」
やめたいかと言われれば嘘になる。
「やめたくはないけど、農家にフルーツが不味いって言われたのよ」
「なら上手いものを作ればいいのでは?」
「……そうね!」
「ではまた」
「貴方ってのせ上手だわ」
◆◆◆◆◆◆
今度民の間でフルーツ大会が開かれるらしい。
「きめたわ、フルーツ大会で優勝しなかったらファームを廃業する!」
「ええええ!?」
私は身分を隠して果物を出品し、公平な審査のもとで優勝を狙う。