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怠惰が生み出す不条理な世界  作者: ラタトゥーユ
第1章
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第2話 白と悪魔

 



 体に気持ち悪い浮遊感を覚え目を覚ます。


「どこだ、ここ?」


 目を開けると真っ白な世界が広がっていた。


 ほんと真っ白。

 牛乳の中にいるみたいで、自分が立ってるのか浮いてるのかわからない。


 牛乳ってあんま好きじゃないんだよね。

 なんか菌がいっぱいいるらしいじゃん?

 飲むと腹が痛くなるし。


 ……今はそれどころじゃない。


 どうでもいい思考を止めて自分に起きたことを確認する。


 俺はどうなったんだ?

 あの時確かにトラックに跳ねられたはずだ。

 でも普通に喋れるし、体は至って健康体。

 服も制服のまま。


 わからん。

 三途の川みたいなところなのか?

 だとしたら下手に動かないほうがいいのだろうか。

 うっかり川渡っちゃったらヤバいよな。

 でも川ないし。


 しばしグダグタ悩んでいたが


「迷った時は行動あるのみ!」


 結局意気込んで歩き始めた。




 ––––––––––





「ポ◯モン!ゲットだぜ!テレレレテレレレ〜♪」


 散策を開始して1時間くらいたったかな?

 時計がないからよくわからん。

 この歌よくきいてたんだよね。

 続きは、はねて、ほえて、ジャンプだっけ?

 懐かしいなーポケモ◯。

 ロケット団が凄い好きだった。

 最近のはよくわからん。


 なんで歌を歌っていたかというと暇だからである。

 だってずっと白いんだもん。

 いい加減飽きるわ。


 わかったのは延々と真っ白な空間が続いているということだけ。


 最初こそウキウキと歩いていたが10分くらいで飽きてそこからずっとダッシュしながら◯ケモンの主題歌メドレーを歌い続けていた。

 なのに汗もかかなければ息切れもしない。


 いつの間にこんな体力がついたんだ?


 自分の成長に驚きつつ最後の状況を思い出す。


 目の前に迫るトラック。


 変な方向に曲がった左腕。


 涙でくしゃくしゃになった瑠奈の顔。


「またあいつ泣かせちゃったな…」


 後悔とともにもしこうだったらという考えばかり出てくる。


 もし、瑠奈を拒絶しなかったら。


 もし、もっと早く瑠奈に謝れていたら。


 もし、俺が孫悟◯のようにトラックの衝突に耐えられるほど強かったら。


 ……最後のはちょっと違うか?

 確か◯空は少年の時点でトラックなんかへっちゃらだったはずだ。


「サイ◯人ぐらい強けりゃ便利だよな。空飛べるし」


 なんか独り言が多い。

 さみしいのかね?


 いやもとからか。



『おまえは強くなりたいのか』


 唐突に俺の独り言への返事が頭の中に直接聞こえてくる。


「……へ?」


 いきなりのことに間抜けな声が出てしまった。


『強くなりたいのかと聞いている』


 姿は見えない。

 しかし太い声と威圧的な喋り方で自然と背筋が伸びる。


「……そりゃなれるならなりたいな」

 

 正直に答える。

 ビビって声が震えてないか心配だ。


『そうか。どのように強くなりたい』

「どのように?えっとー……。急に言われても困るな。なんでそんなこと聞くんだ?」

『早く答えろ』

「えー」

『…………』



 ………早く答えないと声だけで殺されそうだ。



 強さとはなんだろう 。


 いつだったか常にそんなことを考えている時期があったような気がする。


 いつだったっけ?



 脳内メモリーに接続。………。


 接続完了。メモリーを検索。………。


 検索中です。しばらくお待ちください。


 ………。





 ………あ。



 非常に宜しくない検索結果が出てしまった。

 そのせいで封印したはずの記憶がふつふつと蘇って来る。



 中学2年時、無駄に髪をロン毛にし、1年間真面目にやって来た部活をサボり、手の平を太陽に向けビッ◯・バン・アタックの練習をしながら下校していた日々。


 俺は界族王になる!

 と、麦わら帽子を被った海賊みたいなことを言いながら、自分なりの最強像を模索し、インターネットでカッコいい(中二病感性)言葉を探して考え出した技に名前を付けたりしていた。


 聖十字剣(ぐらんどくろす)、とか。

 暗黒剣(ないとめあすらっしゅ)、とか。


 そもそも界族ってなんだよ。

 どっかの部族?

 しかも暗黒剣ならナイトメアじゃなくてダークだろ。


 その他諸々の痛い記憶が凄い勢いで押し寄せてくる。

 悪い思い出ほどよく覚えてるものらしい。



 あれ?

 なんだろう。

 死にたい。

 もう死んでるのかもしれないけど、死にたい。



 過去の過ちに苦しんでいると


『まだか。早くしろ。』


 無情にも催促のお達しが下された。

 太い声に怒気が含まれている。

 本当に言いたくないのだが拒否なんてしたらどうなるか……


 どうしても言わねばならんのか?

 醜態を晒さねばならんのか?


 俺の中で2つの心が戦っている。

 忘れたはずの中2心と今を生きる高2心。


 激しいバトルを繰り広げた結果、


 ……………よし。


 中2心の勝ちだ。


 言ってやる。

 言ってやるぞ。

 言うだけだ。

 言ってどうなるわけでもあるまい。

 言うならタダだよ!

 今ならオマケに恥晒しなんて称号も付いてくる!

 いやーお得だね!



「……だいぶ多いけど、いいか?」

『ふむ。いいだろう』



 ふふふ、後悔すんなよ?




「えー、まず太陽が落ちてきても平気な体だろ?素手で惑星が破壊できるほどの腕力だろ?光の速さで走れる脚力に、頭で思い浮かべた物を具現化する力。あ、羽とか無しで空飛べたらいいな。どんな傷や病でも治せる力も欲しいし、姿と気配が消せて半径3キロ圏内の気配を探れる力も欲しい。あといくらでも物が入る巾着が欲しいかも。それか・・・」

『ま、待て、一旦落ち着け』

「・・・え?あ、うん」



 ありゃまだ途中だったのに。



 うっ、途中で止められたことで俺の右腕が疼く!

 邪神め!

 封印を解こうと言うのか!





 ………あれ?

 なんだろう。

 死にたい。

 ただひたすらに、死にたい。




『うむ、少し多いがなんとかなりそうだ』

「……え?なにが?」


 放心して何を言われたか理解できなかった。

 なにがどうなるって?


『さて、そろそろ時間だ。また会うこともあるだろう。その時まで精進し自分を磨くといい。楽しみにしているぞ。……ふぅ』


 聞き返す暇もなく話を締められてしまった。

 なんの時間?と思って足を見るとつま先の方から徐々に光に包まれていく。

 おや、どうやらとうとう死ぬらしい。

 俺の人生17年と7カ月で終わりか、短かったな。

 未練といえば瑠奈のことだが逆に考えればそれだけだ。

 あ、家族のことも気になる。

 近所の猫にもエサあげなきゃ。

 あれ、結構あるな。

 ま、潔く成仏してやろうじゃないの。

 最後誰かわかんないけど自分の最強像話たからなんだかんだで満足だし。

 というかまた会うってなんだ?

 どこで会うの、天国?

 もう死ぬのに何を精進しろと?

 皮肉かこのやろう!



 まあいっか。




「えっと、話聞いてくれてありがとな。最後に心残りが1つなくなったよ」


 強制的に言わされたけど。


『ハハハ!!そんなものを語る程度で心残りが減るなんてな!やっぱ面白いわおまえ!』


 ……え?

 だれこいつ?

 さっきまでの真面目キャラはどこいった?


「………なんか喋り方違くないか?」

『あー、なんか制約みたいなもんがあんだよ。それがさっき解けたから普通に喋れるようになった』

「ほー、なるほど」


 それにしたって随分違うな。

 声すら変わって親しみやすい感じになった。


 体を見ると胸の辺りまで光になっていた。

 もう時間がないな。


「あんた何者なんだ?三途の川の河童か?」

『三途の川に河童なんているのか?』


 声はこほんと咳払いをして続ける


『オレはお前らが言うところの悪魔ってやつだな。んで此処はオレの世界だ。お前には前から目を付けてたんだが、死んじまったから魂だけこっちに引っ張ってきた』


 ……なんかとんでもないことを言いだしたぞ?


 あくま?

 あくまってどのあくま?

 灰汁ま?

 阿久ま?

 悪魔?

 あ、悪魔か。

 うん、悪魔ね悪魔。

 悪魔?



「はぁ?悪魔?悪魔なんているわけねーだろ。仮にいたとしてもなんで俺に目をつけるんだよ。俺人殺しとか盗みとかしたことないぞ?」


 俺は善人であると自信を持って言える。

 もし困ってる人がいれば迷わず助ける。

 ただその先を続けようとしないから誤解されがちだけど。


『別にお前が信じようが信じまいがどうでもいい。ちなみに悪魔イコール悪いって思われてるけどそれ間違いだからな?オレみたいに良い悪魔もたくさんいるんだよ。逆に悪い神だってたくさんいるし』


 あんたが良いか悪いかは知らん。


 しかし、こいつの話は信じがたいが筋は通っている。

 これは全部夢だって可能性もあるが、夢にしちゃだいぶリアルだし。


 うーん。

 もうこの際信じてみるか。


 となると俺は本当に悪魔に目を付けられてたのか?

 確かに悪魔が悪いって言うのは先入観かもしれない。

 けどなんかショックだな。

 だって悪魔だぜ?

 俺、極悪人みたいじゃん。

 あ、でもあのドSにも目を付けられてたな。

 そうか俺は悪魔に好まれる性分なのか。


 うん、全然嬉しくない。



「んで、その悪魔さんがなんの用ですかね?魂よこせとでも?」

『お前の魂なんかいらねーよ。それとオレの用はもう片付いてる』

「え?それってどういう……」


 何言ってんだこの悪魔?

 こいつなんかしたのか?

 てか魂いらないとかなんか傷ついたぞ。


『まぁまぁ。お、時間だな。じゃ楽しんでこい、宵暮空明』


 体は首から上を残して光に包まれていた。


「なんで名前知ってんだよ。そっちだけ名前知ってんのは不公平だぞ。」


 言ったと同時に視界が光に包まれる。

 その中でかすかに俺と同じぐらいの背丈の青年が見えた気がした。



『なるほど。では特別に教えてやろう。オレはベルフェゴールって呼ばれてる。司るのは怠惰だ。……ようこそ、我らの世界へ』



 その言葉が届くことはなく意識は遠のいていった。




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