ひだすら練習 ベートーヴェン
定期テストは、さんざんだった。英語、生物、国語、歴史はなんとか
なったけれど。数学はひどかった。
4人での合同勉強会で、以外に山崎が、数学が出来るのがわかったので、
いろいろ、僕は教えてもらった。教え方も上手い。いつも美里ちゃんに
勉強、教えてるからかな。
青野は、帯広畜産大学に行きたいと言い出してるが、今の点数では門前払い
だろうことは、僕にもわかった。
私立は、青野は、自分の家では無理だろうとで言っていた。
青野の目標は、”効率よく乳量をあげ、100㌫ 自分の所のエサで、
乳質を良くし、機械化をなるべくしない(お金をかけない)”
僕はわからないけど、周りからは、
”そんな都合のいいことできれば、誰でもやってる”と、突っ込みを受けてた。
青野に、僕はちょっとだけアドバイス。それは、
〝牛舎にモーツァルトの音楽をかけると、牛がリラックスして乳量がアップする”
というものだ。ニュースでやってた。
知らないようだったので、今度、モーツァルトのCDを貸すことにした。
定期テストが終わった後は、僕と脇坂と後藤さんは、実力テスト。
結果は、前回と偏差値は変わらずってとこだった。
後藤さんは、実力テストは初めてのようだったので、脇坂に偏差値と
大学の難易度の話をしてもらったのだけど、後藤さんは、ひどく落ち込んでいた。
正直な所、彼女じゃ1年の復習からかな。
ー・-・-・-・-・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-
テスト、定期テストは、自分のどのくらい怠けたかがでる。
でも、僕のピアノは、練習のわりに停滞を続けている。
今、練習中のベートーヴェン ピアノソナタ2番は、八重子先生の言った
注意点が克服できてない。
1楽章は、もう最初からひっかかってる。
主題提示で大事な部分だから、わかるけど、何度も繰り返しても、
今一つなのだ。八重子先生曰く”これは、ベートーヴェンのユーモラスな
部分が出てる曲だから、最初のスタッカート 次の32分音符の対比を
キッチリと。次のスタッカートは、もっと軽く”
もう、僕は、スタッカート軽く、右手オクターブで下がっていく所が、
緊張してるのか、腕が硬くなってるそうだ。
八重子先生の腕は、軽く ポンポンととんで楽しそうに次の音にむかってる。
”打鍵の瞬間までは、ユルユルしてて打鍵のほんの少し前だけ力をいれて”
・・わかないな・・
(楽しく楽しく ポンポンポンと唱えながら弾いてみたり)
次のひっかかってるのは、左手の伴奏の所。
3度の和音と単音の組み合わせの形は単純だけど、スラーがない。
書き忘れじゃなくて、ここは、ノンレガート。
テンポが速いので、普通に弾くとだめだ。
注意された所だから、注意してるけど、だんだん、集中がきれてくる。
リピードに近い箇所のスタッカートも、注意された所だ。
ボヤっと弾いてるって。
2楽章は、・・八重子先生の所で間に合わなかったんだ。
今度の修学旅行、日程を終えて、僕は一人残って、西師匠の所で
みてもらうんだった。きっとこのベートーヴェンだと、ボロクソにいわれるな。
貴重な教えと思い、覚悟を決めよう。。
ショパンのエチュード、25-2は、指使いさえ守れば、なんとかなった。
(と自分では、思ってる)
まるで、止まらないように、フィギア選手が、氷上でクルクル回ってるかんじだ。
最後は、ベートーヴェンのソナタ11番の仕上げ。
バッハの平均律。6曲。
どちらも、録音して確認してみる。ソナタは楽譜を見ていても、結構、細かい
所で間違ってるが、大筋では、曲想はつかんでる。
平均律も、自分ではできてるように聞こえるのだけど、西師匠の評価はどうだろう
練習の終わった時間くらいに、ばあちゃんが、コーヒーを持ってきてくれた。
何か僕に特別な話があるみたいだ。顔がこわばってる。
「修学旅行の事なんだけど・・」
きた・・なんだろう・・山崎浩之のことかな・・
「浩之の事?」
「いや、浩之の事は、裕一はペラペラ話たしりないし、心配してないよ。
問題は、裕一のほうだ。」
へ?僕が何??
「修学旅行の日程に、京都見物ってのがあるじゃないか?
京都ってのは、古い都だからね。見物は神社・寺が中心だろうけど、
くれぐれも、”へんなもの”拾ってくるんじゃないよ。
私じゃ対処できないからね」
へんなものって、やっぱ。人外のものとか、そっち系統か・・
拾った事ないと思うし、第一、見えないし。
「いいかい。”おかしいな?”って思ったら、目を合わせないで通りすぎるんだよ」
スルーね。はいはい。
僕は、ばあちゃんの話は、適当に聞き流したけど、後日、京都で少しだけ変なことに
巻き込まれた。
明後日、僕たち2年は、修学旅行に出かけた。




