表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/210

東京でのレッスン

東京へレッスンに行った裕一。相変わらず、厳しく指導されてます

文化祭の準備がはじまる前の日、

僕は東京の西師匠の所にレッスンを受けに行った。


通いなれた西師匠の家は、普通の住宅街の一戸建て。周りの家より少しだけ

広めの庭と、音楽室がついている。

この音楽室は、小さなコンサートも開けるようになっている。


さっそく、レッスンが始まる。今回はベートーベンはなんとかなったけど、

モーツァルトは、いまだ、霧の中だ。


最初はショパンのエチュード25-3から。

”もっと裏拍の音に注意して、それが旋律になってるから”

”全体に重い、音のハネる感じがほしい”

”オクターブ上の音は、少し弱くなるけど、音はしっかり”


注意されたら、そこでストップ。先生の弾く音を聞いて

なんとか、そうなるよう弾き、OKがでたら先に行く。

ほとんどの注意は、なんとかなった。

ただ、音の重いのだけは、レッスンでは克服できなかった。

これは、速いテンポで軽く弾く 努力をしないと


モーツァルトのソナタは、弾いた後、先生にため息をつかれた。

「裕一君、この曲は、出来てる。けど音色がいまいちか。

練習してるベートーベンの影響かな。モーツァルとにしては、重い。

もっと軽く一音一音が粒のように聞こえてくるように。」


僕は、ペダルは最小限にしながら、レガートのないところでは、

切り気味に弾いてみた。

それで、やっと先生のOKがでたけど、〝花マル”ではなさそう。


ベートーベンのソナタは、細かい注意をもらった

弾き方で、テクニックというより、例えば”速いパッセージはこの音にむかってる”

とか、右と左のつながりとか。

主に、2,3楽章で注意を受けた。メヌエットとミノーレ。

速い左のパッセージに注意が行きがちだけど、旋律と和音は、

しっかり出すように、注意された

3楽章は、レガードと 左手の和音で速く動くところで、軽い和音でと

注意された。その都度、弾き直していくうち、曲の全体像がクリアになった。

最後に1楽章から通しが、マルはもらえなかった。

注意された所が、直ってない所が、時々、出るらしい。


注意・指導されて、一度で直るなら、先生も生徒も苦労しないよな・・


ショパンとベートーベン、今の曲の仕上げと、と新しい曲の譜読みが

課題に出された。ベートーベンソナタ2番。

モーツァルトはなかったので、ホっとした。

ショパンは、エチュード25-2。”羽のように軽く弾く”って解説にあったけど・・


帰り際に、先生から、”モーツァルトのソナタは、何度でも弾くように”と

言われた。それと、バッハの平均律曲集をやってるか?と聞かれ、

笑ってごまかそうとしたけど、無理だった。


先生、すみません。実は、八重子先生の所では、やったりやらなかったりで。

先生が、「バカだね。裕一君は。音大の受験曲によくあるじゃないか

次までに、最低、6曲、暗譜で弾けるようにして持ってくること」

課題曲が増えた。

ー・-・-・--・-・-・--・-・-・-・--・-・-・-・


東京の家に帰ると、明かりがついていた。

今日は、都築さんと祖父は出張でいないから、誰もいないと思ってた。


自室にもどり、夕食はコンビニで調達しようと思って外に出たら、

音楽室に明かりがついてる。まさか泥棒?

確かに、貴重品はおいてある。でも、グランドピアノなんか、盗めないだろう?

あ、でも、泥棒は明かりつけないか・・


僕は、家の中に戻り、本当に恐る恐る音楽室を少しだけ開けた


かあさん!アリサさん!もう、びっくりだよ。


「かあさん、どうしたの?すぐ海外で演奏会って、言ってじゃないか」

驚ろかされたので、プンっとした言い方になった。


「あら、裕一。そっか、今日は西師匠のレッスン日だったのね。

で、今回は、モーツァルトを攻略できた?」

う・・痛いところをついてくる・・

「ぎりぎり合格点。それよりかあさんは、東京にいて大丈夫なの?演奏会は?」

「心配しなくても 大丈夫よ。何か大きな災害が開催地であったらしく、向こう

から、キャンセルしてきたわ。」


そういえば、音楽室の中が少し変わってる。事務デスクと電話、PC&プリンター。

部屋の半分が事務所っぽくなってる。

「事務所は、東京に置くことで決まり?」

父は、ガッカリするだろうけど・・

「まだ、未定。お父様の会社の関係で、オフィスビルの部屋をすぐ出ることに

なったのね。で、ここが仮事務所。NYの雅之さんの事務所に入れてもらえるか

どうか、結果待ち。で、とりあえず、自分のスケジュールをアリサと見直し

してたの。」


おじいさまの会社、そんなにせっぱつまってるのかな。


その夜は、かあさんの行きつけの洋食屋で夕食。

一人分、2000円もかからなかったけど、

僕は、三度の食事がままならないといった時の

山崎浩之の顔が 浮かんだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ