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山崎との会話

山崎浩之は、自分の将来を語ります。裕一は、どう思うのか

「俺は、高校を卒業した後は、すぐ働く。本当は、何か資格や技能を

とって、働きたいんが、そうもいかないからな・・

裕一は、大学に入った後は、演奏家になるんだろうな」


山崎には、今の所は大学に行くお金はない。

生活保護では、そこまでの費用は出さないんだ。


「まず、大学に入る事が第一で、そこが難関なんだ。でも、それで終わりじゃない。

運よく、”生活費を稼げるほどの演奏家”になれたとしても、さっきのように

一生、練習さ。僕の母も去年は、練習のしすぎで、ノイローゼ寸前だった」


自称演奏家には、誰でもなれるけどね。

山崎のいう所の”資格や技能”を身に着けるほうが、現実的な選択だ。


「山崎は何かなりたいものとかある?」

山崎って、無口な奴で、世間話とかしないから、実は、あまり分かり合ってない。

僕とかかわった時には、妹の美里ちゃんを守るので精いっぱいだったし。


「俺は、高収入でなくても、身分が安定してれば、食べていくだけの収入があればいい

俺の兄貴、本州で自動車の工場で仕事をしてるんだ。でも、いわゆる

”派遣”ってやつでさ。契約の更新の時期になると、派遣仲間は皆、ガクブルさ。

契約更新できて、仕事が続けられるかどうかは、その時の景気しだいだし。

兄貴は自動車整備士の資格とか、いろいろもってるんだぜ。

それでも、派遣は、いらなくなれば切られる。もし俺が就職できなければ、

身分が安定しない派遣でも、俺はそこで働くつもりだけどな。」


・・・重い。僕に何ができるだろう・・今はこうやって話を聞く事くらいか。

(もちろん、聞いて僕にできることがあればする)ピアノなら弾ける。。


僕は、「悲愴」の第2楽章をゆっくり、弾きだした。

静かに、哀愁はあるけど、薄日がさすような明るさもある曲だ。

”山崎のこれからに、幸せと平穏があるように” 僕はそう願いながら弾いた。

ただの自己満足で、実際なんの役にも立たないけれど。


山崎は、じっと聴いていた。

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

釧路で行われた、陸上競技の新人戦は、脇坂を除いて、惨敗だった。

2年で出場したのは、脇坂と女子の武田さんだけだ。

1年生は、頑張ってくれたけど、リレーでは、バトンミスがあり、

彼らは落ち込んでいた。きっと緊張していたのだろう。

進路の事で忙しくなった林部長の代わり

顧問の曽我先生が指導していたんだけど、時間が短すぎた。


二日目は、残った他校の選手を見たり、脇坂の応援。

脇坂は5000mは決勝で3位だった。

本人は、”ペース配分を間違えました”なんていってる。

脇坂には、もっと距離の長い種目のほうが、あってるのかもしれない。


ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

家に戻ると、TVで、「アマデウス」を放送していた。

20数年前の映画で、モーツァルトの生涯をサリエリという宮廷音楽家の

目線で見た映画だ。

一度見たことがあり、その時も衝撃を受けたが、今みても、

やっぱりインパクトがすごすぎ。

だいたい、モーツァルトのあの鬘、

ほとんど、パンクとかロックの頭だ。

下品で女たらしで、でも音楽は天上の音楽のように調和に満ちてて。

やっぱり一種の”不思議ちゃん”だったのかも


ー・--・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

夕食後の練習は、ショパンのエチュード25-3の基礎練習から始まった。

右手2つ左手2つの、合計4つのリズムの違う音形を弾きこなすエチュード。

それぞれ、干渉されないよう、いろいろ組み合わせて練習。


次は、撃沈したモーツァルト。

2楽章のアダージオは、装飾音が多い。それに何度もポルタメントで

素早く弾く箇所がでてきて、ここを注意された。

3楽章は、休符を注意された。不思議だけど、この楽章は、休符がポイント。

フェルマーター(音を長くのばす)がついてるけど、僕は長すぎたようだ。

”気まぐれ”って印象を受ける曲だけど、それでも古典派だ。

3楽章は、注意された所は直したはずだけど、本当に直ったか?不安になる。


満足しないまま、僕はピアノの練習を終わりにした。

さすがに勉強もしないと。

でも、疲れていたのか、僕の部屋の机につっぷして、寝てしまったらしい。


今夜の夢は モーツァルトにあの、”あははは”って声で

笑われまくり、最後に頭をなでられた。なんなんだアイツは!!






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