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父、部活を見学

次の日は、また肌寒かった。8月も5日をすぎると、もう夏が終わっていく

気配がする。この地方が特にそうだ。


部活は今日も午前中だけだった。午後は、林部長と坂本副部長、顧問で

次年度の練習計画を作る予定だ。青野も参加するが、僕は辞退した。


1年は、男子は4人8石田、川崎、海野、二階堂)女子はマネージャーの千葉。

2年生は、脇坂(長距離)武田(長距離)山崎(短距離)の3人。

何も考えなかったけど、2年はリレーの練習すらやっていない。


林部長は、1年生4人でリレーのチームにしようと、前から顧問に提案している。

時間のある時は、その練習もみると。

それと、女子が実質いないのは、淋しい。女子マネの千葉さんに頼んで、1年女子の

勧誘をお願いしてるが。

部長・副部長も選びなおさないと。そろそろ3年生は引退の時期だ。

僕は内心、青野を部長に って思ってる。陸上を知っていて、思いやりと行動力ありで

それに、皆に慕われてるし。


午前中の練習は、基礎ドレーニング、とストレッチが終わったら、全員、軽い

ランニング。時間のある3年生が練習に参加してる。

怪しい人物を見つけたと、ランニング中、話がまわってきた。

なんでも、下はだらしなく着たジャージで、上はドテラをはおってる。頭はぼさぼさ

で、ボーとこちらを見てる・・・もしや・・・


いた。!父だ!僕は、全力疾走でかけよった。

ジャージはともかく、なんでドテラなんだよ。ジャンパーでも着ればいいのに。

後ろで、”あれヤマの父親だって””ちょっと変わってるっぽい?”って声が

聞こえる。去年はかあさん。今年は父か。どんだけ過保護なんだって思われる。

父は、本当にボンヤリと練習を見てるような見てないような雰囲気だった。


「父、学校に何か用?あと、そのドテラ、やめてほしいんだけど、恥ずかしい。」

僕の言葉に胸をはって父は

「息子の姿を見に来ただけだぞ。裕一はマネージャーだとか言ってたけど、柿沢のように

指示とかはしないんだな。下働きのようなものなのか?」

トホホ。そうです。まあ、下働きでも、それで皆の役に立つなら僕は嬉しい。


「うちの部員は、父と違って、練習メニューは各自が心得てるからね。

よっぽどでないかぎり指示なんかしないよ。顧問もいるしね。」

父は僕を見てニヤっとした。また、イヤな予感がする。

「よし、決めた!!」はぁ?何??

「裕一、お前は浪人しても、大学受からなかったら、ウチの事務所で働きなさい。

給料は払わないから安心していい。うん、それがいい。裕一そうしよう」

。。勘弁してよ父。


僕と父の会話を盗み聞きした部員が、

”ただで働けだって、ブラック事務所だわ””ってか、むしろ奴隷w”

「僕は、現役合格を目指してるし、浪人してもダメな時は、自立して働く。

父の所も東京の祖父の所でも働かない」

僕は、大声で父の”とんても提案”を 断固拒否した。

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

午後からは、ピアノの練習、「悲愴」の第3楽章だ。

少し、ロマン派の傾向が見えるこの曲だけど、思ったほどでもない。

心にながされず、カッチリ弾こう。


って考えてる時、父とかあさんが入ってきた。

かあさんは、僕のいない午前中に練習すると言っていたが、父は?

また僕の練習を見るのかな?

かあさんは、甘いココアを入れて持って来てくれた。

「大分、煮詰まってるようだから、脳にカロリーがいくように」

これからだ。僕が煮詰まるのは・・

第3楽章。自分なりに弾いてるが、まだまだ改善の余地がありそうだ。


僕が弾き始め、父はソファーにゴロ寝した。

いつもボーっとしてる父だけど、いつにもましてボーっとしてる。

一度弾き終わって、父を見た時に感じた。目もうるんでるし、寒そうだ。

もしかして風邪引いたのかな。

「父、体調、悪いなら布団で寝ればいいのに」

「ここで寝るから大丈夫。もう一度最初から弾け」


僕はもう一度弾くと、案の定、止められた

「そこ、スタッカートが強すぎる。もっとかわいらしく弾く」

かわいらしくってなんだ?って聞いても無言だった。

”そこ、crese 左手が雑になってる”

”そこ、短いけど休符を意識して”

”右も左もスタッカートがきれいでない。”

”そこのcreseは、長い、ffにもっていくんだから”

”4分音符のとこ、そこ。右の上の音を出しながら、右の下の動きにも注意”

”そこの右の3連符は、高い音が大事。それでcreseかけて”

”そこ、テンポおとさずに、最後は今までの感傷を断ち切るように力強く”


昨日の練習で馴れたので、僕は言われるたびに、弾きなおし、OKがでると

次に進みを繰り返した。

今日は2時間にならないうち、曲の途中で父が寝てしまった。

やっぱり体調、悪いんじゃん。

僕は練習を止め、父に毛布をかけて、音楽室を出た。


ばあちゃんに、父が風邪っぽくて、音楽室で寝てるというと、


「夏風邪ひくなんざ、やっぱり馬鹿なんだね。血統かね。

目が覚めたら、薬を飲まさないと」


父は、体調が悪いのに僕にレッスンしてくれた。

それとも、口を出さずにはいられないくらい、僕がひどい演奏をしたのか?


そして父は夕食の時間に、やっと起きてきた時は、

さっきよりかは、体調はよくなってたような感じだ。

回復力が強いのだな。指揮者の能力か?


夜は、父はスコア読みに没頭したいといったが、祖母とかあさんに、

強制的に止められ、風邪薬を飲まされてた。


僕は夜の練習で、父にいわれた注意点をきをつけながら、「悲愴」の

第2,3楽章を練習した








































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