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僕の事情
東京での生活は、5月のGWはいつも一人だった。
祖父は、会社の会長ではあるけれど、いつも忙しくて留守ばかりだった。
祖母は多趣味な人で、お茶会やらサークルの旅行やらで、やはり留守がち。
こう思い出すとGWに限らず、年中、家では一人でいたきがする。
今年の春は違う。
父の祖父・山本幸男と祖母の栄子と3人でGWを過ごすことになる。
僕はちょっと憂鬱でだいぶ緊張している。
なぜなら、僕の引き起こした事件で、
東京の祖父母の家は、中学校卒業と同時に、追い出されたも
同然だったからだ。
父・上野雅之は有名な指揮者で海外を飛び回っているし、
バイオリン奏者の母・紀子もまた、海外にいることが多い。
家を出て行くよう言われた時、頭が真っ白になった。
その時は偶然、父が帰っていて、僕は父の祖父の住むこの北海道に住むことになったのだ。
4月から約1月、父の祖父母や優しい人達だったけど、やはり緊張した。
また、追い出されたら、どうしようと、考えてしまうから。